OECDによる2020年に向けての環境見通し
2001年5月14日
CSN #186
日欧米合計30カ国が加盟している経済協力開発機構(OECD)が、2001年4月5日に「OECD Environmental Outlook」という2020年に向けての環境の見通しに関する報告書を発表しました[1]。OECD加盟各国政府は、2020年までの間に環境に取り返しのつかないダメージを与えるのを事前に防止するために、多くの特定分野で直ちに政策を変更する必要があると述べています。
この報告書では、個々の環境問題に対して、現在までの状況から、環境への圧力、環境状態、社会的対応ごとに、青信号、黄信号、赤信号に分類しています。各信号の概要を以下に述べ、表1には各信号に対する個々の環境問題の分類を示します。
青信号
圧力が減少している、環境状態の条件について2020年までの見通しが明るい、社会的対応が問題の緩和に役立っているケース。
黄信号
環境問題に対する現在の理解が不十分であることから、不確実性や潜在的な問題を有するケース。さらに理解するために努力すべきであり、予防を必要とする。
赤信号
環境への圧力等の最近の傾向が悪化している、あるいは現在は落ち着いているが将来悪化すると予想されているケース。OECD加盟国による緊急の取り組みが必要である。
表1 OECD環境見通し報告書による諸問題の位置付け([1]をもとに作成)
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青信号 |
黄信号 |
赤信号 |
環境への圧力 |
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環境状態 |
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社会的対応 |
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またこの報告書では、OECD加盟各国が直面している最も重大な問題は、1)再生可能な天然資源の使用が持続不可能であること、2)生態系の分解、3)人間の生活を支える環境システムの崩壊であると述べています。そしてさらに最も緊急な課題(赤信号)については、次の項目をあげています。
OECDによる環境の見通しに関する緊急課題(赤信号)
そしてこの報告書では、これらの問題に取り組むための政策に関する3つの意見を示しています。
以上1)-3)の政策によって、2020年にOECD加盟国の二酸化炭素(CO2)排出量は、現在のシナリオに対して15%、硫黄酸化物排出量は9%、メタン排出量は3%、農業用水路からの窒素の流出は30%減少する可能性があるが、このような政策を実行しても、必要な経済コストはごくわずかであり、2020年のOECD加盟国のGDPは、現在のシナリオの1%未満レベル程度しか低下しないと予測しています。
今後、2001年5月16日にパリで各国の環境担当閣僚を集めた会合を開催し、これらの問題について討議を行い、この問題に取り組むための「21世紀初頭10年間のOECD環境戦略:OECD Environmental Strategy for the First Decade of the 21st Century」を採択する予定となっています[2]。
Author: Kenichi Azuma
<参考文献>
[1] OECD
Environment, “OECD Environmental Outlook”, ISBN: 92-64-18615-8, April 2001
http://www.oecd.org/env/
[2] OECD
Environment, “Meeting of the OECD Environment at Ministerial Level”, 16 May 2001 - OECD Headquarters, Paris
http://www.oecd.org/env/min/2001/index.htm