健全な室内塗装に関する実践パンフレット
2000年9月18日
CSN #153
アメリカ環境保護庁(USEPA)が2000年7月21日、「健全な室内塗装に関する実践パンフレット:HEALTHY INDOOR PAINTING PRACTICES BROCHURE AVAILABLE」[1]を公表しました。
塗料は、塗料成分(合成樹脂)を、希釈液を用いて希釈させています。そのため容易に塗ることが可能となっています。そして塗った後は、希釈液が揮発して、樹脂が付着します。このようにして塗装が施されます。
塗料の希釈液には、トルエンやキシレンなどの刺激臭をもつ有機溶剤、水があります。そのため塗料は、希釈剤の種類によって、大きく有機溶剤系塗料と水系塗料の2つに分けられます。自然素材を用いた塗料もありますが、コスト/性能の観点から、一般には普及しておりません。
塗装現場では、塗装を始めると、同時に希釈剤が揮発し始めます。そのため塗装作業者は、保護マスクや保護衣を着用していないと、揮発した希釈剤に曝露します。また、塗装作業者だけでなく、周囲の人々にも同じことがいえます。揮発した希釈剤が毒性の高い化学物質であるならば、曝露した人たちの健康影響が心配されます。ですから塗装作業を行う場合は、塗料の希釈剤の種類に十分気を付けなければなりません。塗料の取扱説明書や容器に表示しているラベルに簡単に記載されていますので、購入前や使用前にはよく確かめる必要があります。
アメリカ環境保護庁(USEPA)が公表した「健全な室内塗装に関する実践パンフレット」では、塗料の希釈剤について次の注意事項が掲載されています。
「塗装直後に塗料から揮発する有機溶剤に曝露した場合、眼や喉や肺の刺激、頭痛、目眩、視力低下など直接的な症状が生じる可能性があります。塗装業者など、長期間職場で高濃度の有機溶剤に曝露すると、神経、肝臓、腎臓障害が生じる可能性があります。その中には、動物実験で発がん性や生殖や発達障害を生じる可能性がある化学物質もあります。感受性が高い人や呼吸器系に疾患をもつ幼い子供たちは、これら揮発性有機溶剤への曝露は避けるべきです。また、これから産まれる赤ちゃんや妊婦への健康リスクを回避するために、特に有機溶剤系塗料を使用した場合、塗装現場をできるだけ避け、塗装したばかりの部屋に入る時間を制限すべきです。
塗料の選定に関しては、室内塗装に外装用塗料を使用しないこと。水系塗料は有機溶剤系塗料と比べてほとんど揮発性有機溶剤を発生させないため、塗料を選定するときは、塗料のラベルをよく読み、安全性を確認し、そして塗装業者や塗料メーカーに問い合わせること。」
そしてこの実践パンフレットでは、健全な室内塗装に関するガイドラインが示されています。表1にその内容を示します[1]。
表1 アメリカ環境保護庁による健全な室内塗装に関するガイドライン
健全な室内塗装に関するガイドライン |
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1 |
継続的に窓を開けて換気できる春や秋などの乾燥期に計画的に塗装すること |
2 |
塗料からの揮発性化学物質への曝露を避け、快適な室内空気質にするために、塗装後およそ2−3日は、天候がよければ窓を広く開けて換気すること。 |
3 |
塗装現場から発生する揮発性化学物質を排気するために、窓に換気扇を取り付けて塗装すること(塗装工事中だけ窓に一時的に設置する据え置きタイプの換気扇)。その際、換気扇が窓から外れないように設置すること。換気扇が設置できないのであれば、塗装工事を行う部屋が、十分に自然通気を持っていることを確認すること。 |
4 |
塗装現場の近所の人たちには、事前に通知すること。 |
5 |
頻繁に新鮮な空気を取り入れること。塗装したばかりの部屋へ入ることは、可能な限り2−3日間は避けること。呼吸器系に疾患をもつ幼い子供たちなど、塗装したばかりの部屋には入れないこと。目やに、頭痛、目眩、呼吸器系の異常を感じたならば、塗装現場から離れること。 |
安全予防のための特別事項 |
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1 |
取扱説明書やラベルに記載されている安全予防事項をよく読むこと。 |
2 |
塗装するところは、新鮮な空気が十分満たされるようにしなければならない。 |
3 |
塗装後も、新鮮な空気を取り入れ続けなければならない。 |
4 |
付着した塗料は、ブラシなどで安全に除去できる。水系塗料は一般的に、石鹸水で除去できる。決してガソリン(引火性が高い)を使用しないこと。 |
5 |
必要な量だけ購入し、余った塗料は保管するか廃棄すること。廃棄する際は、地元の自治体に相談すること。 |
パンフレット本体は英語ですが、図を用いて非常にわかりやすくまとめられています。必要な方は参考文献[1]に記載しているアドレス(pfdファイル形式)から入手するか、電話で問い合わせて下さい。
Author:東 賢一
<参考文献>
[1] “HEALTHY INDOOR
PAINTING PRACTICES BROCHURE AVAILABLE”,
July 21, 2000
To order copies of the brochure, individuals
may contact the TSCA
Assistance Information Service at 202-554-1404,
or see: http://www.epa.gov/opptintr/exposure/docs/inpaint5.pdf