広がる生分解性プラスチックの利用


 

Iida Kouji

 

 生分解性ポリマーが使われているもともとわずかな領域が拡大してきたため生分解性ポリマーの今後の見通しが良好になってきた。これは、生分解性プラスチックの生産をこれまでに行ってきたプラントの効率がよくなってきたためと、生分解性ポリマーの物性値が従来からあるPSPPのような樹脂と同等になりはじめたからである。生分解性ポリマーの初期のものは製造者責任訴訟や生分解が不十分であることがうまくいかず普及しなかった。ヨーロッパでは特に、生分解性の包装材が普及するよう立法化も盛んである。立法化の推進役の一つはEUの、埋め立て、堆肥化およびリサイクルの調整機関である。日本ではプラスチックの40%を生分解性にするという動きがあるが可決しそうにないと見られている。米国では造園業者が生分解性堆肥化袋を消費者向けに大量に出荷しようとしている。

 ヨーロッパにおける生分解性プラスチックに関する最近のレポートでは、生物生産プラスチックについて堆肥化の重要性をもっと強調するべきである。すなわち、生分解プラスチックは堆肥化されないなら、普通のごみのように集められ埋め立てられてしまい、高価な投資が無駄になってしまうためである。生分解性プラスチックの分離収集が行われて初めて投資は有効になるという。EUが、すぐに制定することが期待されており、実際に法律で禁止しようとしているのは、生分解性のものとそうでないものを一緒にすててしまうことや同じ場所に一緒に埋め立ててしまうことである。生分解性プラスチック用に分別する場所が必要であるという。 Menlo parkはポリ乳酸とAliphatic/aromaticコポリエステルの二種類が低価格にできそうで、今後5年で生分解性ポリエステルの年間製造量が70%まで期待できるという。

Bayerは新しい生分解性樹脂としてポリエステルアミドを発表している。この樹脂は準結晶状態で従来の装置で射出や押し出し成形ができる。ヘキサメチレンジアミン、ブタンジオール、およびアジピン酸からなり、フィルムではやや透明である。生分解は腐植土にふれたときからはじまり、ごみぶくろ、植物ポット、食品包装および使い捨ての台所用品などへの利用が検討されている。 Bayerの子会社であるWolff WalsrodeはポリエステルアミドベースのフィルムであるWalocomp LPN u 10200の商品開発にたずさわり、この樹脂はバクテリアやかびに60日以上置かれることによってバイオマスと水と二酸化炭素に分解されてしまうという。弾性率は220から300 MPaの間で引張伸び率は700-1000%である。園芸用包装材料や将来的には食品包装剤への利用が見込まれている。

Cargill Dow PolymersCargillDow chemicalとの出資比率が50/50のベンチャーで、PLAのリーダーでもある。予備生産プラントはMinneapolisで稼動しており、そして1998年の終わりには現在の2倍の生産である7200トンを行うという。PLAはとうもろこしや砂糖大根のような転換できる農作物をもとにしている。その樹脂は透明で、耐湿性があり堅く、つやがあるのに加えてPETのようににおいを遮断する能力にも優れている。拡大する用途はふきこみおよび二軸延伸フィルム、容器やコーティングである。

Eastman Chemical Co. KingsportEaster Bio COPEとして上市されているコポリエステル14766の製造を一年前から開始している。芝生や園芸用袋、食品包装や園芸用途が期待されている。堆肥化されたとには二酸化炭素と水とバイオマスに新聞紙と同様なスピードでこわれてしまうという。準結晶状態でやや透明のフィルムになり、PEよりは低い弾性率でPEにくらべてわずかに酸素バリア能が高い。

BASFは生分解性のあるCOPEEcoflexという低密度PEに類似した性質をもつ樹脂を製造している。Ecoflex filmは耐水性のあり、LDPEとは異なり、水蒸気透過性がある。

Duponは昨年からBiomax hydro/生分解性ポリエステルの出荷を表明している。同社によると改質PETに類似し、従来のPETとくらべるとわずかに高価である。Biomax200度に融点があり、50-500%延伸するという。強度はLDPEからDupontMylarポリエステルフィルムの強度の半分程度の間だという。米国とヨーロッパ向けに販売しているという。

Symphony Environmental Ltd.60日から5年の間で完全に分解できるように添加剤を加えたポリエチレンベースの生分解性プラスチックの出荷を開始した。 Novamont SpAでは4種のMater Biを出荷している。このMater Biは刺激性はなく、デン粉ベースのポリアセタールで、製品分野がニッチ領域からさらに幅広い分野で使われていくと期待されている。現在はゴルフティーや動物のおもちゃに利用されている。

 環境ポリマー団体(Enviromental Polymers Group, EPG)BTGのライセンシーで、温水または冷水で生分解性があるポリビニルアルコールの特別のグレードをさらに発展させている。これらは吹き込みフィルムの利用が予定されている。EPGは低旋断押し出し技術とポリビニルアルコールベースの生分解物の配合の2つの技術を持っている。EPGによれば製造されたフィルムはPVCまたはPE製のフィルムと物性面で同等かあるいはそれ以上である。BTGにより開発された押し出し技術は重要なブレークスルーである。なぜならキャスト法により作られたPVOHと同様にこの材質は等方性の強度をもつにもかかわらず経済的な溶融押出法を採用できるからである。他の生分解性プラスチックよりも低コストで、EVOHと同様の遮断能力があるという。 

Idroplast SpA, PVOHベースのHydroleneを生産している。水中の溶解度は水温に基づいているため、マテリアルは紙の中に保管され次にPEまたはPPシートに保管される。改造した押し出し機を用いてバブル押し出しされる。印刷はシルクプリンティング、オフセット、および前処理無しのリソグラフィが可能だという。農業用製品、種、および抗菌剤への利用が期待されている。 Metabolix Inc.では主に遺伝子技術を使用して生産するPHA(poly-hydroxyalkanoates) を研究している。この技術によってPHAが光合成から直接に、もしくは間接的に糖の発酵を経て得ることができるようになった。使い捨ての医療器具およびファーストフードの食器への利用が期待されている。PHBは高い結晶性熱可塑性プラスチックでPPと類似した融点、引っぱり強度、ガラス転移温度および結晶化度などの物性を持っている。

1991年に設立された生/環境分解性ポリマー協会の中には製造加工業者や大学の研究者や米国軍隊の職員のような様々なメンバーがいることからこれらのプラスチックが広く興味をもたれていることがわかる。そのうちの米国軍隊では生分解性プラスチックの利用に興味をもっており、Chaffの上のアルミコーティングを置き換えるといったことが検討されている。Chaffは追跡兵器のガイダンスシステムをかく乱するために飛行機によって撒かれる。Chaffは普通アルミニウムをかぶせたグラスファイバーのカートリッジに入れる。軍隊は生分解性ポリマーを利用してアルミニウムコーティングを置き換えることを検討している。これは金属コーティングに酸化膜を使用するもので、そのためポリマーは分解する。Advanced Technology Inc. が特許を取得している。 

Modern Plastics (1999) 29, 31-32


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