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銀行の営業を妨害し、住専債務者に不利益を強いた中坊公平社長
 

9月21日朝日新聞に住宅金融債権管理機構(中坊公平社長)が旧住専から債権を引き継いだ債権者として、高利の金利収入を確保するために、住専の住宅ローン債務者が金利の低い銀行の住宅ローンに借り換えるのを妨害していたことが報じられました。

 中坊社長はその理由として、「当社が赤字になれば、銀行が出資する基金から運営資金の補填を受けざるを得ず、それでは旧住専をめぐる関与者責任追及を思う存分できなくなる。収益基盤をしっかりする必要があった。ただ、借り換え希望者を無理に引き留めたことはない。当時銀行側が一般顧客に対して、借り換えをするように過度の勧誘をしていたため、その自粛を求めただけ」と言っています。
 妨害の目的が単に収益を上げることだけではなく、母体行の関与者責任を追及するという管理機構の目的外の政治目的があり、そのために銀行の正当な業務を妨害し、損害を与えるということは、銀行に対して不当な私的制裁を科したことになります。また、そのための負担を、住専の債務者に負わせたことになります。

 借り換え希望者を引き留めなかったと言っても、銀行が大蔵省の行政指導によって住専債務者に対する借り換え融資を中止すれば、債務者が住専に繰り上げ返済の申し込みなどできるわけがありません。「借り換え希望者を引き留めなかった」と言うより、「借り換えの申請」すらできない状態に追い込んだと言うべきです。監督官庁の大蔵省に頼んで何の法的根拠もないことを依頼し、銀行に圧力をかけて借り換えローンの実施と言う正当な営業活動を妨害して損害を与え、その顧客である住専債務者に不利益を強いたことは弁解の余地のない不法行為です。自分さえよければ、無関係の人が不利益を被っても意に介さないと言う、許し難い自己中心的な考えです。中坊社長が自らの行為を正当化する根拠として挙げている、銀行の過度の勧誘があったというなら、「過度」と言う根拠は何か、「過度」の基準は何か、明らかにする義務があります。

 大蔵省の不当な裁量行政の象徴である行政指導を要請し、金融機関に圧力をかけ自由な商取引を妨害したことは断じて許せません。銀行側は「行政指導と受け止め、借り換えには原則として応じないよう現場に指示してきた」と言っているのです。「自粛を求めただけ」など全く白々しい言い訳です。自粛を求める正当な理由も権限もありません。
 日頃「人権の擁護」を看板にしている弁護士がこのような不法行為によって銀行(株主と従業員を含む)と住専の住宅ローン債務者に多大な損害を与えたことは、彼らの看板が偽りであることを意味しています。中坊氏に住友銀行役員のモラルを非難する資格はありません。
 弁護士業界が人権の擁護を云々するのなら、住専債務者の被った被害の救済に取り組むべきです。

平成10年9月23日      ご意見・ご感想は   メールはこちらへ      トップへ戻る      B目次へ