B6
法曹三者は民主政治の障害

京都新聞が中村法相の少年法改正に対する積極的発言を「法制審解体を狙う」と言って批判しています(9月16日朝刊)。しかし、記事を読めば読むほど中村法相の言うことは正論で、もっともなことばかりです。一体中村法相の言っていることのどこがいけないのでしょうか。記者の言っていることこそ民主政治に反する主張です。

 法律の改廃を議論するのは政治家が国民から負託された使命であり、「立法は政治主導」、「政治家を蚊帳の外におく法制審の縮小、解体」と言う中村法相の主張は、いわば当たり前のことであり、健全な民主主義の実現のために歓迎すべきことです。法制審議会に限らず、審議会政治は国民の多数意見を反映しない官僚政治の元凶です。官僚が勝手に任命した委員が非公開の密室で法律案を作るなど言語道断です。

 法務省幹部は「基本法は国民が広く使う法律。国会には学者、法律実務家と各界の人が議論を尽くした法案を出す必要がある」と言っていますが、各界の人をどうやって選ぶかが問題です。行政府が審議会を設置し、自ら委員を指名してそこで法律案を作るという発想そのものが議会制民主主義にふさわしくないのです。法律案には国民の多数意見を反映させることが何より大事なことであり、関係業界の意向を反映する必要はないのです。業界関係者の意見はあくまで参考人の意見として聞き置く程度でいいのです。この意味で中村法相の「法曹三者が委員に入る必要があるのか」との疑問は、政治家としてもっともなものだと思います。法制審は105年の歴史があると強調していますが、主権在民でなかった時代の遺物は消えてなくなるべきです。徹底した議論をしたければ衆参両院の法務委員会で「法曹三者」を含めた参考人、証人を呼んで議論をすればよいのです。国民の代表でない彼らはあくまで参考人に過ぎません。議論の主体は国民の正当な代表である議員でなければなりません。

 国民の代表でもない、法務省の官僚に任命された委員によって構成される法制審議会が「最高裁、日弁連、法務・検察の法曹三者(業界関係者)」に牛耳られているのなら、そのような審議会は廃止すべきです。ある法曹関係者は「ある意味では、法曹三者が協議する場が法制審だ」と言ってその重要性を指摘したそうですが、とんでもない考えです。法曹三者が協議する場など必要ありません。業界関係者の談合は民主政治にとって有害です。民主主義の教科書に法曹三者の役割などは書いてありません。法曹三者にはいかなる政治的役割もありません。法制審議会を経なければ法律の制定ができないなどと言う実態があれば、それは国会の立法権の侵害です。

 「中村法相は『国会が唯一の立法機関』の思いが強い」と記事にありますが京都新聞はこの中村法相の思いに異論があるのでしょうか。法律を作るのは政治であり「法曹三者」の仕事ではありません。京都新聞は日弁連が反発しているとか、法務省幹部がこう言っているとか、法曹関係者がこう言っているとかでなく、国民がどう考えているかを報道すべきです。また、京都新聞は中村法相の言う「与党重視の法案作成」と「国民のための法制度」が両立するかと疑問を呈していますが、「法曹三者重視の法案作成」と「国民のための法制度」が両立するかどうかの方に疑問を持つべきです。

 京都新聞はなぜ、「法相の錦の御旗は・・・」、「説得力を持ち始めた」とか、「なぜ今頃」、「突然の出来事だった」、「驚きの声があがった」、「真のねらいが早くも顔を出していた」などという論旨に直接関係ない枝葉末節のことばかりを書くのでしょうか。中村法相を批判するなら具体的に問題点をはっきり指摘すべきです。

平成10年9月18日      ご意見・ご感想は    メールはこちらへ     トップへ戻る      B目次へ