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「特殊」で「複雑」な韓国人の対日感情(その2)

 朝日新聞連載「日本が来る!韓国文化事情」の連載1回目から3回目を読んでいるときは朝日新聞らしからぬ面白い企画と思って読んでいましたが、最後の5回目はやっぱり朝日新聞らしい内容でした。

 韓国人の池明観翰林大日本学研究所長に「日本で『自由主義史観』など、過去に背を向ける動きが活発になると韓国の反対論が刺激を受けて開放は遠のく」と言わせて、日本文化の「開放」問題にかこつけて、何の根拠も示さず「自由主義史観」を中傷しています。自由主義史観を唱えている人たちの誰が「過去に背を向けている」というのでしょうか。彼らは熱心に過去を見つめ、過去と取り組んでいる人たちです。「従軍慰安婦」について史実を調べて吉田清治という詐話師の嘘を告発し、また、アイリス・チャンの「レイプ・オブ・ナンキン」について詳細な調査の結果、掲載写真を始めその内容の大半がインチキであることを暴露しました。自分たちに都合の悪い過去を直視できないのは韓国人の方ではないですか。日本を悪人にしないと国が持たないのは韓国の方ではないですか。

 彼らは考え方の前提として、「日本人は韓国が日本文化を解禁してくれないと困る」とか、「解禁してほしいと願っている」と思いこんでいるようです。金大中大統領が日本文化の「解禁」を日本訪問の手土産と思いこんでいるのと同一線上にある考えです。確かに日本文化禁止は日本人にとって歓迎すべきことではありませんが、韓国が日本文化を禁止しても特段日本が困ることはないのです(著作権侵害は別問題)。むしろ韓国の方が本音と建て前の乖離に耐えられなくなってきているのではないでしょうか。

 申楽均文観部長官は「日本大衆文化を規制する(明文化した)法的根拠はない。過去の不幸な歴史のため、国民の間に受け入れられない情緒があった」と語っています。韓国人が日本人を批判するときに「本音」と「建前」の違いを指摘することがありますが、韓国政府が「法律上は日本文化を禁止していない」と言って、実際は国家権力の強制によって日本文化を排除している(日本の音楽CDを売った経営者がソウル地検に逮捕されたことが記事の中で報じられている)のは「本音と建て前の違い」の範囲を超えた欺瞞であると思います。

 「日本が過去に背を向ける(自由主義史観が多くの人の支持を集める)なら日本文化解禁を中止するぞ」と言われても、それは見当違いの「脅し」にしかならないと思います。そんなことで「自由主義史観」が影響を受けるはずがありません。「自由主義史観」がけしからんと思うのなら、もっと具体的、建設的な批判、論争をすべきです。

 「慰安婦問題などで過去の清算に消極的な日本の文化をなぜ『受け入れる』のか、と言う反対論が根強い」と記事は書いていますが、「解禁」は「受け入れろ」と言うことではありません。禁止するのが異常なのでそれをやめようと言うに過ぎません。解禁しても日本の映画、演劇を見たいという人がいなければそれはそれでしょうがないことです。見たい人がいるのにそれを禁止するのがおかしいと言うことです。この種の反対論(日本文化受け入れ論)には議論のすり替えがあります。

 次に日本文化の解禁に関して韓国の文化観光部の韓日文化交流政策諮問委員会は「フランスの自文化保護政策や第二次大戦後の独仏和解の過程を参考にしている」とのことですが一体何を、どのように参考にするのでしょうか。フランスはドイツ文化やアメリカ文化を排除するための検閲や改竄のたぐいはしていないと言うことを是非学んでほしいと思います。また盗作や剽窃、海賊版の横行もないことを見てきてほしいと思います。そしてそれはフランスだけでなく世界の先進国、文化国家と言われる国々の常識です。韓国のしてきたことは自国文化保護とは異質のアブノーマルな行為であることに気づいてほしいと思います。

 それから第二次大戦後の独仏和解と自国文化保護の問題は余り関係ないと思います。それにドイツとフランスは二度の大戦で銃火を交えた交戦国で、日本と韓国のような旧植民地と宗主国と言う関係ではありません。日本と韓国の参考にはならないと思います。韓国人は日本と韓国の関係が第二次大戦においても、それ以前においても、交戦当事国の関係ではなかったという重要なポイントが分かっていないと思います。戦後の両国の基本的関係が援助をする国と受ける国と言う関係であったことに対する認識も欠けています。韓国人がこういうことを言うのは日本と韓国の関係がドイツとフランスの関係のように対等に近い関係であってほしいと言う願望の現れだと思いますが、それは日韓関係の現実ではありません。

 最後にこの記事は「゙ 喜郁」と言う記者の名前が記されていますが、日本人にはあまりない名前です。もし、外国人であるならばこのような外交問題に関する記事の場合は国籍を明示し、外国人の立場で書かれていることをはっきりさせるべきです。

平成10年9月17日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      D目次へ