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言論の自由を蹂躙する支離滅裂の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ対策法)」


 “ヘイトスピーチ対策法”が成立・施行されてまもなく1年になりますが、改めて同法についていろいろ考えてみました。
 昨年の5月24日に成立した同法(下記)を見て、驚きを禁じ得ませんでした。さらに当時(法律が成立したことを報じる5月24日とその後)の新聞(朝日、読売、毎日、日経)を読み、そのいい加減な論説にあきれました。各紙とも基本的なところはほとんど同じなので、読売の記事を元に私の考えを書きます。参考までに朝日、日経、毎日の記事は添付しますのでご覧下さい。(朝日 日経 毎日 各2ページ)
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本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律
(平成二十八年六月三日法律第六十八号)

 前文
 第一章 総則(第一条―第四条)
 第二章 基本的施策(第五条―第七条)
 附則

  我が国においては、近年、
本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている。
 もとより、このような不当な差別的言動はあってはならず、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではない。
 ここに、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する。

   第一章 総則

(目的)

第一条  この法律は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、その解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とする。

(定義)

第二条  この法律において「
本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。

(基本理念)

第三条  国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する
理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない。

(国及び地方公共団体の責務)

第四条  国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施するとともに、地方公共団体が実施する本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有する。

2  地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。

   第二章 基本的施策

(相談体制の整備)

第五条  国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備するものとする。

2  地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する相談に的確に応ずるとともに、これに関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう、必要な体制を整備するよう努めるものとする。

(教育の充実等)

第六条  国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。

2  地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。

(啓発活動等)

第七条  国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、国民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。

2  地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、住民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。

   附 則

(施行期日)

1  この法律は、公布の日から施行する。

(不当な差別的言動に係る取組についての検討)

2  不当な差別的言動に係る取組については、この法律の施行後における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。
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ヘイトスピーチ対策法
2016・05.24 読売 東京夕刊 タ一面

 自民、公明両党が提出した議員立法の
ヘイトスピーチ(憎悪表現)対策法が、24日午後、衆院本会議で可決、成立した。過激な言葉で、特定の人種民族への差別をあおり立てるヘイトスピーチ解消を目指す法律が、初めて制定される。

 同法はヘイトスピーチを「(他国出身者を)
地域社会から排除することを煽動(せんどう)する不当な差別的言動」などと定義。「国民は、他国出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」との基本理念を明記した上で、国や地方自治体に相談体制の整備や教育、啓発の充実を求めている。施行後に「必要に応じ、検討が加えられるものとする」との見直しに関する付則を盛り込んだ。

 ヘイトスピーチを巡っては、近年、街頭などで在日韓国
朝鮮人らの排除を訴えるデモが頻繁に行われて社会問題化し、野党が昨年の通常国会に法案を提出。今年4月には与党が対案を提出し、修正協議の結果、与党案の一部修正と付帯決議などを条件に、合意に達した。

 法務省によると、ヘイトスピーチ2012年4月から15年9月までに1152件確認されている。日本政府は14年8月、国連の人種差別撤廃委員会から対策を強化するよう、勧告を受けていた。
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[社説]ヘイトスピーチ対策法を解消への足がかりに
2016.05.25  読売 東京朝刊 三面

 新たな法律を足がかりに、社会から差別的言動を排除していきたい。
ヘイトスピーチ(憎悪表現)対策法が、衆院本会議で可決、成立した。近く施行される。

 対策法は、特定の
民族人種を標的に差別をあおり立てる言動は許さないと宣言した。在日韓国・朝鮮人らへの差別的言動を念頭に置いている。国に対し、解消に向けた措置を講ずるよう求め、自治体にも努力義務を課した。

 近年、街頭で「朝鮮人を
日本からたたき出せ」などと連呼するデモが繰り返されている。成熟した民主主義国家として、残念な光景と言うほかない。
 悪質なヘイトスピーチに毅然(きぜん)として対処する姿勢を、法律で明確に示した意義は小さくない。

 対策法の特徴は、「規制」ではなく、「理念」を掲げることで、差別の抑止を目指した点だ。
 いかなる形にせよ、法律で言論を規制すると、公権力の判断いかんで、正当な表現活動にまで制限が及ぶ恐れがある。憲法が保障する「表現の自由」に配慮し、対策法に罰則や禁止規定が盛り込まれなかったのは、妥当である。

 民進党など野党は「法律に実効性がない」と批判し、明確な禁止規定を設けるよう求めた。その結果、「法施行後の実態を勘案して、必要に応じて検討を加える」ことが付則に追加された。
  将来の法規制に含みを持たせたとも解釈できよう。安易な改正は避けなければならない。
修正協議の結果、
ヘイトスピーチの定義が、さらにあいまいになったことも懸念される。
 「他国出身者の生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを、公然と告知するなどの不当な差別的言動」と記した条文に、野党の要求に応じて
「著しく侮蔑する」との文言が加えられた。

 確かに、他国出身であるだけの理由で、「ゴキブリ」などと誹誘(ひぼう)中傷する言葉を浴びせるのは許されまい。だが、具体的にどんな言葉が、著しく侮蔑するものなのかは分かりにくい。行政に
拡大解釈の余地を残したのではないか。

 今後、重要なのは、法の趣旨への理解を浸透させることだ。
 対策法は、ヘイトスピーチに関する相談体制の整備や、人権教育の充実を基本的施策に挙げた。中でも、学校の道徳の授業などを活用し、差別は許されないという意識を高めることが欠かせない。

 国民一人ひとりがヘイトスピーチに厳しく目を光らせる。それが根絶に向けた一歩となろう。
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 ポイント、問題点は大きく分けて次の5点になると思います。

1.マスコミは法律の名称や、条文を全く報じていないこと

2.法律では「本邦外出身者」が対象になっていて、人種、民族がないこと

3.差別の定義がないことは致命的欠陥

4.
“差別言動”を問題視しているにもかかわらず、対象者を“本邦外”に限定し、“本邦出身者”は対象外となる“逆差別”構造

5.人種、民族の問題でなければ、移民拒否・排斥の問題と同じで有り、政治問題で有り、政治的な発言・行動を取り締まるのは、言論の自由の否定であり許されない


1.
マスコミは法律の名称や、条文を全く報じていないこと

 まず最初に法律そのものを読んでみようとしましたが、肝心な法律名が分かりません。新聞記事では「ヘイトスピーチ対策法」とか、「対ヘイトスピーチ法」とか新聞によってまちまちで、本当の名称が分かりません。新聞4紙を見てもどこにも書いてないのです。インターネットで探してようやく、
“通名”でない“本名”本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」を探し当てました。

 そして、全7条の条文を読みましたが、どの
新聞記事にも法律の条文そのものは1行も書いてありません。わずか7条の短い法律ですから、書く気があれば全文を書くことも十分可能なのにです。
 記事のテーマである法律の、
名称条文そのものも全く書かない新聞記事というのが、あり得るのでしょうか。これは、本当のことを読者に知られたくないという卑劣な思惑から、隠したとしか考えられません。これがまっとうなマスコミのすることでしょうか。

 次に正式の法律名
「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」から、初めて法律の対象者の定義が、「本邦外出身者とその子孫」という聞き慣れない言葉になっていることを知りました。
 
在日韓国・朝鮮人を対象としたものである事は経緯から明かであるにもかかわらず、そうである事(コリアンだけの特別扱いである事)を隠す為の苦肉の小細工と思われます。
 しかし、いつからいつまでにという条件を明示しないと、
秦氏とか蘇我氏の子孫はみな対象者になってしまうのではないでしょうか。

2.法律では「本邦外出身者」が対象になっていて、人種、民族がない。新聞各紙はそれにもかかわらず、法律に書いていない“人種”、“民族”を前面に出した虚偽の報道をしていること。

 新聞記事は各紙ともすべて、
「人種、民族差別云々」を前面に掲げていますが、法律には「人種」「民族」という言葉は一言もありません。これも意外でした。新聞社は法律に一言も書いていないにもかかわらず、なぜ各紙とも申し合わせたように「人種、民族差別」とウソを書くのでしょうか。これはこの問題の本質に関わる部分です。

 
「本邦外出身者とその子孫」と言う言葉が使われ、「人種」、「民族」と言う言葉が全く使われなかったことにより、法律はこの問題が「人種差別」、「民族差別」でない事を明確にしたと言って良いと思います。

 そもそも在日コリアンに対する
“人種、民族差別”などは存在しないのです。あるのは(主として在日の)コリアンに対する嫌悪と憎悪なのです。憎悪=差別ではありません。世の中には憎んでも憎みきれない人間がいます。在日コリアンには在日特権他の、憎まれるべき理由があります。マスコミがそれを報じないだけです。それらの人間を憎悪することは当然で有り、差別ではありません。それを人種差別、民族差別であるかのように話をすり替えているのです。ウソと話のすり替えはコリアンがもっとも得意とするところであり、またそれが嫌悪・憎悪される一因です。憎悪されたくなければ、在日特権を返上しウソと話のすり替えを止めることが一番の近道です。

3.差別の定義がないことは致命的欠陥

 それにもかかわらず、この法律は「差別」という言葉を使いながら、
差別の定義を何も明らかにしていません。また“不当な差別”とありますが、正当な差別とはどのようなものを指すのでしょうか。法律の拡大解釈乱用を防止するためにも、正当と不当のボーダーラインを明示すべきです。
 この点について明確な認識がないのであれば、
法務省などの知的レベルは、何か自分が嫌悪されるとバカの一つ覚えで“差別、差別”と言い出す、コリアンと似たようなレベルと言わざるを得ません。

4.“差別的言動”を問題視しているにもかかわらず、対象者を“本邦外”に限定し、“本邦出身者”は対象外となる“逆差別”構造

 そもそもなぜ対象者が“本邦外”だけなのでしょうか。
公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は著しく侮蔑するなど」の行為を非行として咎めるのであれば、それは理由の如何を問わず、対象が誰であるかを問わず、咎められなければなりません。対象を“本邦外”に限定する理由はありません。対象者を“本邦外”に限定して特別法を制定すること自体が“逆差別に他なりません。
 それにもかかわらず敢えてこのような体裁をとったのは、この法律の実態が“韓国人保護特別法”だからではないのでしょうか。“本法外云々”はそれを覆い隠すカモフラージュに過ぎないのではないでしょうか。

 ところで、我々日本人は“本邦出身者”なのでしょうか。なんだか「先住民」と言われているような気がします。それは「日本人」に対する不快な表現ではないのでしょうか(NHKが横綱稀勢の里を“日本出身の横綱”と言っていたのを想起しました)。改めてこういう表現を平気でする法務省などの反日官庁体質を見る思いです。

 まだあります。法律は
“地域社会から排除”と表現していますが、在特会等の主張は日本からの排除であって、地域社会の問題ではないはずです。読売新聞の記事も「『朝鮮人を日本からたたき出せ』などと連呼するデモ」と書いています。法律の趣旨は、「日本から出て行け!」は差別にならないと理解する他はありません。

5.人種、民族の問題でなければ、「本邦外出身者」の問題は、「移民拒否・排斥」の問題と基本的に同じ政治問題で有り、政治的な発言・行動を取り締まるのは、言論の自由の否定で有り許されない

 人種、民族の問題でなければ、「本邦外出身者」の問題は、「移民拒否・排斥」の問題と基本的に同じ政治問題です。ヨーロッパでも移民に対する議論が激化しています。
移民排斥を主張するものは決して少数ではありません。中には過激な言葉を使うものもいると思いますが、それらのものが過激な発言故に発言を差し止められたという話は聞きません。
 移民反対は政治的発言
で有り、過激であるからと言って制約を科すことは許されず、不可侵の「言論の自由」の権利として保障されなければなりません。

平成29年5月13日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ

平成31年4月13日 (追記)

 この法律の第三条は下記の通りですが、これは憲法第十九条(思想及び良心の自由)に違反すると思います。

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憲  法 
第十九条(思想及び良心の自由)
   
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律
第三条(基本理念)
   
国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、
   本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の
実現に寄与するよう努めなければならない。
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 第三条の「理解を深める」「賛同する」と言う意味で、「寄与するように努める」「積極的に賛同する」という意味だと思います。しかし、国民に成立した法律を遵守する義務はありますが、賛成する義務はありません。反対意見を持ち続けることが法律違反になることはないはずです。しかるに「理解」「寄与」を法律で強制し、賛同を強制するのは、「思想及び良心の自由」の不可侵を保障する憲法に反します。

 仮にいわゆる“ヘイト・スピーチ”が差別思想であるとしても、差別
思想を法律で禁じたり、反差別思想を強要することは人権侵害になると思います。かつての中国が「毛沢東思想」を強要したのと同じです。「正しい思想」に国民を統一しようという発想が間違っているのです。
 こう考えてくると、そもそもこの法律が意図するところが思想統制
(嫌韓意識の禁止)であり、間違いであると思います。日本の法律が“韓国並み”にレベル・ダウンしたことを物語っています。

 日本のマスコミがこの法律が成立したことを報じるに当たって、
法律名も条文も全く報じなかったのは、とんでもない法律だと言うことを認識していたからかも知れません。

令和2年1月12日 (追記)

 法律にある、「
本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動が行われ」という部分は、話のすり替えです。

 “差別的言動”(嫌悪・憎悪)の対象になっているのは、
韓国・朝鮮人だけであって、それ以外の国・地域の出身者はその対象になっていません。
 彼らは
「韓国・朝鮮人である事を理由として」“差別的言動”(嫌悪・憎悪)の対象になっているのであって、「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として」、“差別的言動”(嫌悪・憎悪)の対象になっているのではありません。

 もし、
違法の嫌疑を掛けられたら、「域外地域の出身である事を理由とした差別はしていない。韓国・朝鮮人である事を理由として、(地域社会からではなく)日本国からの追放・排除の訴えをしている」と抗弁できるのではないでしょうか。