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韓国のGSOMIAの破棄取り消し 法治国家の体を為していない韓国と、それに合わせている安倍政権と日本のマスコミ

 11月23日の読売新聞は、「韓国、GSOMIA失効をギリギリで回避…輸出管理で対話再開へ」という見出しで次のように報じていました。
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韓国、GSOMIA失効をギリギリで回避…輸出管理で対話再開へ
2019/11/23 08:46  読売

 韓国政府は22日、破棄を決定していた日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)について、23日午前0時の期限を目前に、
失効を回避することを決めた。輸出管理を巡る日韓の政策対話の再開と引き換えに方針を転換した。日韓両政府の調整で、さらなる関係悪化はひとまず避けられた。

 【ソウル=建石剛】韓国大統領府は22日、文在寅ムンジェイン大統領も出席して国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、GSOMIA
破棄決定を見直し、日本の対韓輸出管理厳格化の措置に関する日韓協議が行われている間という条件付きでGSOMIAを維持することを決めた。決定は、韓国政府から日本政府に伝達された。

 金有根キムユグン国家安保室第1次長は記者会見で、「韓国は
いつでもGSOMIAを終了できるという前提で、(破棄決定の)効力を停止し、日本政府も理解を示した。輸出管理政策の対話が正常的に進行される間、日本を提訴した世界貿易機関(WTO)の手続きを停止する」と述べた。

    ◇

 安倍首相は、GSOMIAを当面継続させるという韓国政府の方針について、「北朝鮮への対応のために日韓、日米韓の連携・協力は極めて重要だ。韓国もそうした戦略的観点から判断したのだろう」と評価した。首相官邸で記者団に語った。

 日本政府は韓国側の
発表に合わせ、日本による対韓輸出管理厳格化措置などを協議する日韓貿易当局の局長級の政策対話を行うことを発表した。

 韓国政府はこれまで、GSOMIA継続の
条件として、日本が輸出管理厳格化の措置を撤回することを求めていた。日本政府はこれに対し、「輸出管理厳格化の撤回とGSOMIAは全く次元の異なる問題だ」(菅官房長官)として、受け入れない姿勢を示してきた。

 輸出管理に関する政策対話の実施は、韓国への輸出管理厳格化を堅持しつつ、対話には応じることで韓国の立場に配慮し、GSOMIA失効で日米韓の安全保障協力に支障が生じる事態を避ける狙いがあったとみられる。韓国側は要求していた厳格化措置の
「撤回」ではないものの、輸出管理で日本から前向きな動きを引き出したとして、GSOMIA継続妥協したとみられる。

 日韓のGSOMIAの
有効期間は1年で、どちらかが破棄しない限り自動的に延長される。終了する場合、期限の90日前までに相手国に書面で意思を伝えることが必要で、韓国側が8月下旬に日本に通告していた。

(以下略)
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 GSOMIAは日韓の間の協定
(国際法)です。2国間で締結・批准された協定の効力、更新、破棄という観点から見ると、今回の事態は異常だらけと言えます。記事では両国の動きを「回避」、「引き替えに」、「見直し」、「条件付き」、「維持」、「伝達」、「前提で」、「効力を停止」、「理解を示した」・・・などと、およそ法律用語とは言えず、明確さを欠く言葉が連続しています。

 これらの言葉は通常、国際法の効力という問題で使われる用語ではありません。例えば
「失効を回避する」とは、具体的に誰に対してどういう手続きを取るのか、それは「協定」のどの条項に基づくものなのかどうか、と言う視点が不可欠です。その為にはまず条文の確認・言及が不可欠ですが、記事にはそれがありません。

 協定の条文は下記の通りです。
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秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定
日本国政府及び大韓民国政府(以下「両締約国政府」といい、個別に「締約国政府」という。)は、両締約国政府の間で交換される秘密軍事情報の相互保護を確保することを希望して、次のとおり協定した。

(中略)

第二十一条効力発生、改正、有効期間及び終了
1 この協定は、それぞれの締約国政府がこの協定の効力発生のために必要なそれぞれの国内法上の要件が満たされたことを確認する書面による通告を外交上の経路を通じて行った日のうち、いずれか遅い方の日に効力を生ずる。
2 この協定は、両締約国政府の
書面による同意によりいつでも改正することができる。
3 この協定は、
一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される。

(以下略)
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 この条文に照らして考えれば、韓国は8月23日に日本政府に対して二一条に定める「終了通告文書」を送付し、90日直前にそれを
取り消したのですから、その取り消しが有効と判断されたのであれば、終了通告は無かったことになり協定は「自動的に延長された」と解釈する他はないと思われます。

 そうであれば、「引き替えに」、「見直し」、「条件付き」、などは協定の
「改正」にあたり、両国政府の「書面による同意」が必要となり、それが無ければ改正はならず、「延長」されたに過ぎず、その期間は「一年」と判断・解釈する他はありません。

 韓国政府は日本政府に何時、どのような方法で、どのような内容の通知をしたのかを明らかにしなければならないし、当然、日本政府も韓国政府から
何時、どのような方法で、どのような内容の「通知」を受けたのか、明確にしたうえで、韓国政府の主張の当否を判断しなければなりません。

 しかるに両国政府ともこれを
明らかにせず読売新聞も報じることなく議論だけが先走っているのは、まさに韓国スタイルの韓国ペースと言うほかは無く、韓国は近代的な法治国家の体を為していないと言うべきです。

 この点について11月25日の韓国の新聞
「中央日報(日本語版)」アメリカと韓国の認識に違いがある事を明確にして、次のように報じています。
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韓国はGSOMIA
終了猶予したが…米国「更新決定を歓迎」
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2019.11.25 07:41

ポンペオ米国務長官(左)とビーガン国務省副長官指名者。写真は6月30日の韓米首脳会談同席のために訪れた青瓦台で対話する姿。[青瓦台写真記者団]

 ポンペオ米国務長官(左)とビーガン国務省副長官指名者。写真は6月30日の韓米首脳会談同席のために訪れた青瓦台で対話する姿。[青瓦台写真記者団]
韓国の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)
終了猶予決定を米国は即時歓迎した。ところが国務省は22日の論評で、「GSOMIAを更新(renew)するという韓国の決定を歓迎する」として韓国の発表と異なる表現を使った。これに先立ち青瓦台(チョンワデ、大統領府)国家安保室の金有根(キム・ユグン)第1次長は22日、「いつでもGSOMIAの効力を終了させることができるという前提終了通知の効力を停止させることにした」と明らかにした。外信はこれを猶予(suspend)や条件付き(conditional)延長と伝えた。

 GSOMIAは
1年単位延長するか終了するかの2つのうちひとつだ。国務省があえて更新と表現したのは、韓国政府の説明と違い、1年、即ち2020年11月23日午前0時までGSOMIAを正常に延長したと既定事実化しようとしているのではないかとの分析が出ている。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のスミ・テリー専任研究員は「米国は韓国がまた
考えを変えにくくするよう釘を刺したかったのだろう」と明らかにした。実際に国務省は同じ論評で「米国は韓日関係の他の領域から国防と安保事案が分離し続けていなければならないと強力に信じる」とした。韓日対立が解決されず今後韓国がまたGSOMIAを終了すると言い出すことがあってはならないという話だ。

 だが韓国政府は8月23日に外交文書を日本に伝達しただけにGSOMIA
終了の法的要件はすでに満たされており、したがって韓国政府が終了することにすればすぐ再び効力が発生するという立場だ。これと関連し国防部当局者は「11月23日という日が近づかないよう凍結したもの」と説明した。外交部当局者はこれを「日本が(輸出当局間協議で)時間引き延ばしに出るならばいつでもGSOMIAを終了できるという『保護装置』」と説明した。だがこれが可能な話なのかに対しては議論がある。米国が放っておくわけがないということだ。

(以下略)

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 「いつでもGSOMIAの効力を終了させることが出来るという前提で終了通知の効力を停止させることにした」とありますが、そういう既存の条文にない“前提”を付け加えることは改正に当たります。その前提を日韓両国は書面で同意したのでしょうか。そうでなければ“前提”は効力が無く、終了通知の無効化と同時に協定は一年更新されたと考えるほかはないはずです。


 韓国は
「徴用工判決」で、国際法「日韓請求権協定」を踏みにじり、日韓の対立を招き、それが韓国の“ホワイト剥奪”、韓国のGSOMIA離脱へと繫がり、更にそれがアメリカの強い反発を招いて、韓国は身動き出来なくなりました。

 韓国政府はアメリカの圧力の前にGSOMIA失効直前に、失効通知の取り消しを宣言して失効の事態を回避しましたが、その前後の
動きは法治国家のそれではありません。

 更に韓国政府は
“徴用工判決”に対する弥縫策として、立法府である韓国議会の議長を前面に押し出し、譲歩案を提出して韓国政府が関与しない解決を模索するに至りました。
 ことここに至っては、もはや韓国は、「法治国家」とは呼べません。
両国間の協定を悉く無視する韓国政府を相手に正常な2国間関係は維持できません。

 こういう認識に至らない
日本政府もお粗末極まります。読売新聞を初めとするマスコミ学界も同罪です。こんな体たらくだから、アメリカ、韓国に舐められるのです。

令和元年12月7日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ