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過去の清算も、歴史認識の共有もない金大統領の訪中

 (「現代コリア」98年11月号掲載)

 韓国の金大中大統領が中国を訪問しました。今回は両国関係を「善隣友好」から「パートナーの関係」にグレードアップするのが目標であると報じられています。中韓関係の友好関係の強化を目指しているようですが、先月の日本訪問の時のように、「過去」や「歴史認識」が全く話題にならないのはなぜでしょう。両国は朝鮮戦争で銃火を交えた間柄で、3年にわたる戦争の結果、朝鮮全土が焼け野原になり、韓国は軍人の戦死者41万5千人、負傷・行方不明42万5千人、民間人の死者24万5千人、行方不明者30万3千人と言う犠牲を出しました。

 それにもかかわらず国交正常化の時にこの問題には何の決着もつけずに今日の「パートナーの関係」に至っています。過去にけじめをつけていないと言えば、これほどけじめのない関係も珍しいと思います。韓国は国交正常化の時に朝鮮戦争に対する認識の問題を口に出そうとしましたが、中国政府に一蹴され、それ以後は全く口にしなくなりました。一方で日韓関係は基本条約、諸協定で明確に決着が着いているにもかかわらず、韓国の大統領は日本訪問の度に、過去の清算は不十分であると言っています。韓国人は「恨」とか言って訳の分からない解説をしていますが、そういう問題ではないと思います。韓国人だって現実的というか、打算的なのです。建前を重視しているように見えるのは相手が日本の時だけです。強いて言えば日本に対してだけ執着が強いのです。その原因の一つは韓国人が過去に執着することを求めている日本人がいるからです。韓国人が中国に対しては現実的な対応をしているのは、中国には韓国人が過去に執着するのを歓迎するような「反中中国人」はいないからです。

平成10年11月15日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ