D25
在日外国人に公民権(地方参政権)はない

 8月22日の読売新聞に、「論陣 論客 『定住外国人の地方参政権』」と言う企画記事があり、その中で一橋大学の田中宏教授が「『共生社会』へ必要に」と題して、外国人地方参政権必要論、賛成論を述べていました。
 田中教授は、「現代のような都市型社会では、地方の行政機関が生活の様々な場面に関わりを持つ。水道にガス、ゴミなど起きてから寝るまで行政と密接に関連している。なのに外国人だからといって水道料金がどうなるかについて意見を言えないとなるとおかしな事になる。・・・」といっています。

 教授は水道料金について意見が言えないのはおかしいと言っていますが、もし、水道事業が国営で、「建設省水道局」の直営だったら、在日外国人にも国政参政権が必要と言うことになるのでしょうか。それとも、その場合は意見が言えなくてもやむを得ないと言うことになるのでしょうか。単に水道だけの問題ではないと思います。水道料金について意見を言えないのがおかしいのなら、電気、ガス料金について意見が言えないのもおかしいと言うことになります。電気、ガスは地方行政の問題ではありません。通産省の所管ですから、電気料金、ガス料金について意見を言うためには、やはり、国政参政権が必要と言うことになります。

 公共料金の問題に止まりません。日本に住んでいれば、日本の安全保障問題や、経済政策にも直接利害がかかわってくると言えます。日本が戦争状態になれば在日外国人も損害を受けるだろうし、景気が悪くなれば日本人と同様、失業することだってあります。教授の理屈に従えば、「在日外国人が安全保障問題や、経済政策の問題に意見を言えないとなるとおかしな事になる」のでしょうか。私は教授の言っていることの方が、よほどおかしいと思います。

 そもそも、地方参政権と国政参政権に何か本質的な違いがあるのでしょうか。私はどちらも同じ公民権だと思います。教授は「地方参政権は居住と結びつき、国政参政権は国籍によって保障されていると分けて考えるべきだ」と主張していますが、別個の権利ではないと思います。地方参政権(公民権)の一つである知事や市町村長の被選挙権は「居住」と結びついてはいません。日本国民であれば住民でない人も、知事や市町村長になることができます。「居住」と結びつくと言っても、それはあくまで日本国民であることが前提であると思います。地方政治とは国政の一部を委任したものに過ぎず、公民権としては一つのものだと思います。

 「居住」を根拠にして権利を認め、地域に居住しているから外国人にも地方参政権があるという理屈が成り立つなら、日本国に居住しているから、国政参政権があると言うことになると思います。国政参政権は「国籍」を理由に否認し、地方参政権は「国籍」を問わないと言うのは根拠が薄弱だと思います。地方参政権と、国政参政権を区別することがナンセンスだと思います。

 在日外国人になぜ、公民権(参政権)がないのかと問われれば、その答えとしては、「彼らが日本人でないから」の一言に尽きると思います。公民権とはたとえばゴルフクラブの会員権のようなものだと思います。ゴルフ場ではビジターも料金を払ってプレイすることができます。しかし、ビジターが毎日のようにプレイして、シングルの腕前であっても、会員でなければ、ゴルフ場の経営や運営に参加することはできません。なぜ、参加できないのかと問われれば、答えは「会員でないから」という答えしかないでしょうし、それで十分だと思います。

 教授は「『共生社会』へ必要に」といっていますが、日本の社会は、彼らに水道の供給を拒んでいるわけでもなく、割高な料金を取っている訳でもありません。参政権がないと生活できないわけではありません。いくら「共生」と言っても、日本国における日本人と外国人の法的な地位は決して平等でも、対等でもありません。

 また、教授は外国の例として、オランダと欧州連合(EU)を引き合いに出していますが、外国人の地方参政権を認めている国ばかりで、認めていない国の例に全く触れないのは偏った紹介です。それに、EUは加盟各国の国家統合を目指しているのであり、地方参政権の対象となるのは域内各国の国民だけです。域外国の国民に地方参政権を与えるものではありません。日本政府も韓国政府も日韓併合を復活しようとは考えてはいませんから、EUの例は日本人の参考になる例ではありません。

 さらに教授は、在日韓国・朝鮮人の国籍について、「・・・サンフランシスコ講和条約発効を機に、本人たちの意志に関わりなく、日本の政策で一方的に日本国籍を失ったという経緯を忘れてはならない。・・・」と言っていますが、在日韓国・朝鮮人が韓国籍・朝鮮籍を回復(日本国籍を失ったとは彼らは言いませんでした)したのは、韓国政府、在日韓国人、朝鮮人の全員一致の総意であったと言えます。1949年10月7日、駐日韓国代表部大使はマッカーサー連合軍司令官に対し、在日韓国人の法的地位に関し、「1948年大韓民国政府の樹立と同時に当然の事ながら在日大韓国民は母国の国籍を創設的ではなく、宣言的に回復し、国連からの承認も国際公法上確認され、日本国籍は解放と同時に完全に離脱されたのである」と言う見解を伝えています。彼らは、韓国独立後も在日韓国・朝鮮人に日本国籍があると言う日本政府の見解に、強硬に反対していました。このことは佐藤勝巳著「在日韓国・朝鮮人に問う」(亜紀書房)、西岡 力著「コリア・タブーを解く」(同)に詳しく書かれています。

 読売新聞は平成10年4月23日、5月22日の解説記事でも同じ様なことを書いていたので、誤りを指摘しましたが(身勝手なのは韓国人)、また、同じ事を書いています。

平成11年8月26日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ