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少年事件 実名報道に対する損害賠償訴訟について

 今年1月大阪府堺市で19歳の少年が幼稚園児を刺し殺し、その母親と女子高生を刺して重傷を負わせた事件で、犯人の少年が事件を実名と顔写真入りで報道した「新潮45」に対して、「名誉、プライバシーが侵害され、精神的苦痛を受けた」として、2200万円の損害賠償請求をした裁判のニュースが報じられました。

 この損害賠償請求では当初より少年側が、勝訴した場合容認された金額を薬物依存症支援などに役立てると言っており、訴訟の目的が精神的苦痛を金銭によって償うという目的でなく、弁護士主導の新潮社に対する攻撃にあることを窺わせます。文芸春秋や、新潮社の一連の報道が、少年法の時代錯誤ぶりを暴露し、少年法改正の気運を盛り上げる牽引車の役割を果たしたことに対する、弁護士グループの逆恨み的な嫌がらせ、言論の自由の封殺であると思います。このような嫌がらせ訴訟を封じるためにもこの裁判の首謀者が誰なのかを明らかにする必要があると思います。

 それにしても2200万円という金額はどこにその根拠があるのでしょうか。仮に新潮社に損害賠償責任があり、妥当な賠償金額が2200万円であるとしたら、5歳の女の子の命を奪い、その母親と15歳の女子高校生に重傷を負わせたことに対して、どれだけの損害賠償をする用意があるのか、少年とその両親、弁護士は応える義務があると思います。新潮社に損害賠償請求をする前に、被害者に償いをする義務があると思います。それとこれとは別問題では逃げられません。あまりに身勝手です。

 新潮社の弁護士は大変だと思います。この「新潮45」の報道に対しては既に日弁連が会長声明により、少年法第61条違反と断定して非難しており、彼らは自らが所属し、全国の弁護士が全員強制的に加入する独占的組織を敵に回しての、苦しい戦いを余儀なくされているからです。日弁連の介入は公正な裁判を受ける権利を侵害する違法な行為であると思います。

平成10年7月11日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      J目次へ