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動機の解明はそんなに大事か

 6月5日の夕刊各紙に、西鉄バス乗っ取り事件の少年が広島家裁に送致されたことが報じられていました(その後佐賀家裁に移送)。

 朝日新聞は、「動機特定せず」という見出しで、「・・・事件の背景や動機の解明は今後、家裁での調査、審判にゆだねられる」とあり、産経新聞では、「動機解明が課題」という見出しで、「・・・具体的な動機がはっきりせず、背景の解明が今後の課題となろう」とあり、読売新聞では、「17歳少年“心の闇”解けず」と言う見出しで、「・・・深い闇〈見えない心〉の解明は、家裁での審判に場所を移す」と書かれていました。

 はたして動機の解明は司法にとってそれほど大事なことなのでしょうか。犯罪となる事実関係が明らかにさえなれば、動機の解明などは二義的なことではないでしょうか。せいぜい、金目当てか、恨みか、それ以外による犯行か程度のことが分かれば、司法にとって十分ではないのでしょうか。あとは被害者にも責められるべき点があるか、共犯者がいるか程度のことが明らかになれば、それで判決は下せるはずです。それ以上のことは犯人を刑務所(少年院)に入れてから、じっくりと犯罪心理学者や精神科医が研究するなり、カウンセリングをすればいいのだと思います。それは本来医師や学者の仕事であって司法の仕事ではありません。

 神戸の少年事件以来、この種の犯罪報道では、少年の動機や心理状態の報道が目立ちますが、そのような報道は犯罪から国民の視線をそらし、凶悪な少年犯罪激増と言う問題の本質を見失わせるものだと思います。

平成12年6月7日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ