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民営化の成果を台無しにする政治的圧力

 旧国鉄職員の不採用問題をめぐる訴訟で、JR各社が全面勝訴しました。それを伝える5月28日の夕刊に、「強まる政治決着を求める声」という見出しと、記事がありますが、これは非常におかしいと思います。一体この声はどこから出ているのでしょう。JR側からそのような声が出るはずがありません。原告の労働組合側に決まっています。それを明示しないであたかも両者から、あるいは一般社会からそのような声が出ているかのような報道は誤解のもとです。

 裁判で争われている民事の問題で、一方に政治的圧力をかけるのは法治国家にふさわしくありません。過日、旧国鉄の膨大な債務処理について、運輸省がJR各社に追加負担をさせようとしましたが、国鉄改革で株式会社になり、株式も公開した一民間企業に負担を強いるのは、財産権の侵害であり、何のための民営化だったのかと批判の声が上がりました。今またJRの雇用問題で政治が介入すれば、民営化の成果は台無しになってしまうおそれがあります。国鉄改革、雇用問題で会社に協力的だった旧動労、旧鉄労などの立場を危うくするおそれがあります。国鉄の破局の理由は一つではありませんが、労組の過激な行動が一因であったことは否定できません。国鉄再生のために、再雇用の基準として勤務成績や態度が考慮されたことは当然のことだと思います。変に妥協して労組の要求を通して再雇用に応じれば、公務員の雇用が終身保証であり、神聖不可侵であるという神話が是認されたと誤解させる結果になりかねません。今後、役所の生産性を向上させるうえで悪い前例となるおそれがあります。

 このように裁判所に全面否定されるような救済命令を連発した、中労委に問題はなかったのでしょうか。委員を任命したのは労働大臣だと思いますが、これは労働行政が否定されたことを意味していると思います。

平成10年5月28日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      Z目次へ