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「商工ローン」、問題の本質を外れている新聞報道
 

商工ローンの強引な取り立てが問題になっています。
新聞報道を見ると、

「日栄元社員を逮捕」、「執よう取り立てにメス」、「・・・電話口では『あんたのじん臓、肝臓、目ん玉も全部売れ』・・・などと脅していた」(10月31日読売新聞)、

「新婚旅行に行けるなら支払え」、「保証人にいやがらせ」(11月5日産経新聞)、

「商工ファンド“違法手引き書”」、「税務署・市職員装う」、「日栄社長、超ワンマン」、「成績悪い社員に土下座強要」(11月5日読売新聞)

などと報じられています。

 しかし、商工ローンの問題は取り立て方法の問題ではありません。この問題の本質は、高金利、暴利にあります。商工ローンの大半が利息制限法の上限(15〜20%)を越え、出資法の上限(40.004%)に近い35%前後の高金利です。定期預金の金利が1%以下の低金利の時代にとんでもない高金利で、まともな金融ではありません。こんな高利の融資を受けて、経営が成り立つはずがありません。破綻は目に見えています。取り立て方法が悪いのではなく、高金利の金融が悪なのです。

 同じ高利貸し業の「消費者金融」は、宣伝で、「ご利用は計画的に」と言っていますが、計画的に高利のお金を借りる人はいません。そんなバカなことをする人はいるはずがありません。計画があるとすれば、それは破産計画でしかありません。高利の金融はそれ自体が悪なのです。計画的に利用すれば、有用、有益という問題ではないのです。

 高利の金融とは賭博と同じで人間の弱さにつけ込んだ営業です。後のことを考えず、目先のお金につい手を出してしまう人間の弱さにつけ込むものです。あるいは、後のことを考える余裕もない苦しい人を食い物にする営業です。高利の融資は苦し紛れの一時しのぎにしかなりません。一時しのぎの後には必ず破綻が待っています。高利貸しは正業ではないのです。社会にとって有害無益な存在なのです。

 「高利貸し」「サラリーマン金融」と呼び、「消費者金融」と呼び、「商工ローン」と呼び、存在を容認している社会が間違っているのです。高利貸しが駅前の一等地に店舗を構え、新聞、テレビに広告を出し、堂々と営業しているのが異常なのです。

 同じ11月5日の朝日新聞を見ると、「消費者金融」の大手4社の中間決算が発表されていました。各社とも過去最高の増収、増益で、中でもトップの武富士は経常利益が、26.4%増の950億円で、通期では2,007億円が見込まれています。この額は東証一部上場企業の中でもトップクラスで、東京電力の2,079億円、日本電信電話の2,373億円、松下電器産業グループの2,023億円と肩を並べるものとなっています。2位以下のアコムが、679億円、プロミス、500億円、アイフル402億円と続いています。不況で企業が苦しみ、勤労者が失業、賃金カットにおびえる中で、高利貸しが史上空前の利益を上げる社会は不健全な社会だと思います。

 この不健全な社会をもたらしたものは、利息制限法を骨抜きにし、高利貸しの公然営業に道を開いた、「貸金業の規制等に関する法律」の制定であると思います。

平成11年11月7日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ