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「全国一律」の愚 見えてきた郵政民営化の争点

 2月5日の産経新聞は、「郵政民営化で自民に政府回答『窓口会社』と代理店契約…一律サービス維持という見出しで、次のように報じていました。
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 政府は、自民党との協議の焦点となっている貯金、保険の二事業の全国一律サービス化について、窓口会社への業務委託は法律では義務づけないとするこれまでの方針を堅持。
 ただし、自民党側の意見に配慮し、移行期間中は二事業に全国一律サービスを提供させる枠組みとして、十年間の代理店契約を免許取得の条件にする。
 これにより、窓口会社が貯金・保険会社から金融商品の販売を受託する契約によって、最低でも民営化後、十年間は郵便とあわせた三事業の全国一律サービスが担保される。
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 郵政民営化に反対する人たちは、「なぜ民営化しなければいけないのか、国民の理解が得られていない」と言って反対していましたが、それ以上に、反対派の人たちがなぜ民営化に反対するのか理由がはっきりしていませんでした。そして、最近になって、議論が大詰めを迎えるようになって、反対派の人たちはようやく本音を露骨に示し始めました。彼らは「全国一律」のサービスの保証を求めているのです。

 なぜ、郵便・貯金・保険の三事業のサービスは全国一律でなければならないのでしょうか。セブンイレブンや、ローソンに全国一律のサービスを義務づける必要があると言う人はいないと思いますが、郵便・貯金・保険だって同じことです。郵政三事業のサービスだけが特別扱いされなければならない理由はありません。
 我が国では長年、金融・保険業を特別扱いし、許認可行政・護送船団行政が行われてきましたが、その弊害が指摘されて今日の自由化時代を迎えたのです。郵政三事業のサービスはその地域に見合った形態で提供されればいいと思います。全国一律である必要はありません。

 我が国ではかつて鉄道において、「全国一律思想」のもとで、全国一律運賃で採算を無視して新線が敷設され、また、採算が悪化しても各地の国有の赤字路線の廃止ができず、その結果日本国有鉄道は莫大な負債を抱えて破綻してしまいました。その後、その反省を生かすどころか同じように全国一律思想による「料金プール制」のもとで、全国に赤字高速道路が建設され、国鉄と同じように日本道路公団も破綻しました。今また性懲りもなく、各地で新幹線の建設が進められています。「全国一律思想」と言う悪平等思想の元で我々は膨大な国富を失いました。

 かつて我が国が農業国であったときは、人口が全国に均一に散らばっていたので、「全国一律」はそれなりの合理性がありましたが、現在の日本は農業立国ではありません。人口は都市に集中しています。そして、我が国は工業立国から、さらに情報・サービス立国へと変わっていかなければなりません。人口が全国に均一に散らばる時代ではないのです。人口過密地域と過疎地域のサービスが「全国一律」である必要は全くありません。むしろそれは不合理と言うべきです。

平成17年2月6日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ