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人権を蹂躙する「人権擁護法」

 3月5日の産経新聞は、「人権擁護法案 国会提出へ『メディア規制』凍結を条件」という見出しで、次のように報じていました。
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 政府は、三年前に国会に提出し、「メディア規制法」と批判され廃案になった人権擁護法案を十五日に閣議決定し、今国会に再提出する方針を固めた。だが、言論界などから「法案は運用しだいでは『表現の自由』を保障した憲法に違反する」との強い反発も上がっており、成立は微妙だ。・・・

 法務省の外局として新設される人権委員会は、全国の地方法務局に事務所を置く巨大組織となる。さらに各地方で、人権侵害の相談や調査、情報収集を行う人権擁護委員(二万人以内)を委嘱する。
 また、人権委員会は、人権侵害の「特別救済手続き」として、関係者への出頭要請と事情聴取、関係資料などの「留め置き」、関連個所への立ち入り検査といった権限をもつ。令状は必要なく、拒否すれば罰則規定も定められている。委員会が人権侵害と認めた場合は、勧告・公表、提訴などの権限もある。
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 この法案では、「令状は必要なく」となっていますが、司法官憲の発する令状なしに、「出頭を求め(逮捕)」、関係資料を「留め置き(押収)」、「立ち入り検査(捜索)」し、拒否するものを処罰して強制するのは、司法手続きによらないこれらの行為を禁じた、憲法の人権擁護規定を蹂躙するものだと思います。

 また、記事は続けて次のように報じています。
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 法案は、すべての人権侵害を禁じるが、その定義はあいまいだ。条文には「人権侵害とは不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為」とある。それでは「人権侵害とは人権を侵害する行為である」と言っているのに等しい。法務省担当者も「人権は人権という言葉を使わず定義することが難しい。中身自体が拡大していく概念だ」と説明し、結局、人権委員会の「良識」に委ねられることになることを認めている。

 また、法案では、人権侵害の対象として直接的な差別や虐待だけでなく「差別を助長、誘発する行為」も禁じており、「批判と侮辱はどこで線を引くのか。拡大解釈の余地があまりに多い」(民主党衆院議員)との声も上がる。
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 そもそも、「人権」などと言う言葉は、「正義」などと同様、きわめて抽象的であり、法律には不適切と言うべきです。いくら正義を守ることが必要であっても、「正義」に反する行為を取り締まる法律がナンセンスであるのと同様です。
 人権の中身が「人権委員会の良識」に委ねられるなどと言うことは、彼らに白紙委任状を与えているのに等しく、民主主義国家、法治国家ではあってはならないことです。「人権擁護法」はばかげているとしか言いようがありません。ひとたびこのような法律ができれば、「人権」が脱線、暴走し、多くの人々の人権を侵害することは火を見るよりも明らかです。

 マスコミの多くはこの問題を、自分たちの営業に直接絡む、「言論、報道の自由」という視点からのみ批判していますが、この法案の問題点はそれにとどまりません。近来まれに見る悪法であると思います。このような法案を平気で作っている法務省は正気とは思えません。

平成17年3月5日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ