Z22
市場原理を無視した統制が医師不足の原因

 5月27日の産経新聞の社説は、「産婦人科医不足 赤ひげ先生育てる教育を」と言う見出しで、次のように論じていました。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
 医師の数に地域的な格差があり、産婦人科医と小児科医の不足が、少子化対策ともからんで深刻な問題となっている。医師不足は地域住民の健康や命にかかわるだけに根本的な解決策が求められる。・・・

 医師不足は離島や僻地(へきち)ほど顕著だ。例えば、人口一万七千人の隠岐の島(島根県)では、四月十五日から産婦人科医がいなくなり、地元で出産ができなくなってしまった。・・・

 どうしたら医師の偏在を解消できるのか。・・・

 僻地や離島で勤務することは大変だろう。だが、医師の使命感に燃え、自らが必要とされる土地で人の命を救う「赤ひげ先生」になってほしい。特に若い医師に期待したい。そうした先生を支える環境整備は必要だ。そんな医師が育つには、医学生時代からの教育のありようも問われる。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------

 僻地で医師が不足しているのは、市場原理を無視した統制経済が原因です。
 その第一は、現在の医療制度の下では、医療費は国家による公定価格制で、需給関係により変動することがありません。価格の変動による供給の増加がありません。
 第二は、医師の供給源である大学の医学部の定員の人為的な削減です。医学部の定員は、昭和61年厚生省により、将来の医師過剰を理由に全国一律10%削減されました。医師の希望者が減って、定員割れが生じた訳でもないのに、国家により供給が人為的に削減されたのです。これは医師会などの業界の意を受けたものではないかと思います。

 市場経済の原理に従えば、僻地で産婦人科医が不足すれば、医療費は値上がりするはずです。また、医療費が値上がりすれば産婦人科医の希望者は増えるはずです。需給のバランスはとれるはずです。
 ところが医療費は国家の公定価格で医師が自由に値上げすることができません。医学部を設置したり医学部の定員を増員して、医師の供給を増やすのも国の許可制で自由にできません。だから、医師が不足するのです。

 医療はサービス業です。国民の健康、命に関わると言ってもサービス業であることに変わりはありません。サービス業であるにもかかわらず、経済原理を無視した統制を行うから僻地で医師が不足するのです。

 個人の「使命感」に期待を寄せる産経新聞の社説は、ピントはずれという他はありません。

平成18年5月27日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ