Z24
日本農政の課題(何の意味もないコシヒカリの輸出)

 7月26日の読売新聞は、「日本のコメ、中国で売れ 価格20倍、富裕層に狙い 北京や上海で販売開始」と言う見出しで、次のように報じていました。
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 中国の北京、上海で26日、輸出が解禁された日本産コメが2003年以来4年ぶりに発売された。価格は現地産より大幅に高いが、日本側は味と安全性を売り物に、中国の富裕層を中心に売り込んでいきたい考えだ。政府は世界的な日本食ブームも追い風に、2013年までに農林水産物の輸出額を現在の約2・6倍の1兆円規模とする「攻めの農政」を進めており、中国へのコメ輸出再開に、大きな期待がかかっている。・・・

 政府は、対中コメ輸出の再開を弾みに、農林水産物の輸出拡大に力を入れる考えだ。安倍首相は「農林水産物や食品は国内向けという固定観念を打ち破る」として、輸出額を06年の約3700億円から13年に1兆円に増やす目標を掲げている。・・・
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 日本のコメが中国で高値で売れているというニュースは、新聞・テレビで大きく報じられていました。しかし、これは日本の農政(農業)にとって、本当に重要で歓迎すべきニュースなのでしょうか。

 平成18年度の「農業白書」はその巻頭で、食料自給率の低下に警鐘を鳴らし、その向上の必要性を訴えています。食料自給率の低下(昭和40年の73%から現在の40%に低下)は今に始まったことではありませんが、自給率の向上がわが国の農業にとって最重要課題であることは言うまでもないことだと思います。

 日本の農業問題が
低い自給率の問題であって、国際収支の赤字問題でない以上、いくら高級品、嗜好品の輸出で外貨を稼いでも、それ自体が自給率の向上に結びつく訳ではないのですから、何の意味もありません。日本の農家が高級品の輸出志向を強めることは、自給率を低下させることはあっても向上させることにはならないと思います。また、外貨獲得の手段として考えてみても、多額の補助金という名の税金を投下していることを考えれば、コメの輸出は効率的な手段であるとは思えません。

 そのような観点に立って考えると、今回の高級米の高値輸出は日本の農業にとってはどうでもいいような出来事であって、これは、単に米作り農家にとっての関心事であるに過ぎません。日本の全人口のわずか数%の米作り農家の問題を、あたかも国民全体の問題であるかのように報じるマスコミの視点は、日本の農業問題の本質を誤解させるものだと思います。
 また、これに力を入れる農水省は日本国民のためと言うよりも、農家のための農政を行っていると言わざるを得ないと思います。

平成19年8月26日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ