Z26
選挙の定数不均衡違憲判決 大山鳴動して、またもや一時しのぎの「0増5減」


 5月18日の読売新聞は、「『0増5減』法案 月内にも成立へ」という見出しで、次のように報じていました。
----------------------------------------------------------------------------------
 民主党は、衆院小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法案(公選法改正案)に関し、月内にも参院審議に応じる方針を固めた。区割り法案を早期に処理した上で、通常国会の会期末までに定数削減の実現を与党側に迫るべきだと判断した。参院で否決後、衆院で再可決し、月内にも成立する見通しだ。
--------------------------------------------------------------------------------------

 戦後何回となく、定数不均衡による国政選挙の違憲判決が出されましたが、その都度抜本改革がなされることなく、
最も極端に不均衡な選挙区の定数のみを増減して、裁判所の指摘した不均衡倍率をクリアーするという、小手先の一時しのぎが繰り返されてきました。
 不均衡を生む構造的な問題を放置し、是正から
数年の後には再び別の選挙区で違憲状態が出現するという愚を繰り返して来ました。

 今回も裁判所が今まで以上に強い表現で違憲を指摘したにもかかわらず、抜本的な改革はなされず、小手先の一時しのぎが繰り返されました。これでは数年の後に再び違憲状態が出現することは必至です。残念ながら新聞記事を見てもそれに対する厳しい批判は見当たりません。

 不均衡を生む構造的な問題とは産業構造の変化に伴う人口の大都市集中と、それによって出現する過疎地域の人々の問題です。
人口が減少すれば議員の定数が減るのは当然ですが、過疎地域の人たちはそれに抵抗します。そして、マスコミはその抵抗を支持します。決して少数のエゴとは批判しません。

 そしてこの問題を論じていると、必ず地方の振興が必要であるという意見が提示されますが、意見は意見として聞き置くとしても、「地方の振興」は法の下の平等を定めた憲法を超越した
「国是」ではありません。

 地方の振興が必要であるかどうか、また振興が必要であるとすれば、どのように振興するべきかは、正当に選挙された全国民の代表による多数決によって決せられなければなりません。地方の振興に有利なようにあらかじめ仕組まれた選挙(
地方の議員定数が手厚い選挙)によって選ばれた議員の多数決による決定は、民主主義の多数決原理基づく公正な決定とは言えません。

 地方の振興が必要であったとしても、それは、当該地方に居住する住民のためだけでなく、変化に対応した国土の均衡ある発展という観点が必要です。そのためには当然
大都市の有権者の意見も重みを持って受け入れられなければなりません。地方のことは地方の住民だけで決定するわけにはいかないのです。

 この問題は簡単に言えば
地方のエゴの問題です。そしてそのエゴを支持する既得権者が水面下で抵抗し、マスコミがそれを支援しているために違憲状態がいつまで経ってもなくならないのです。

平成25年5月25日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ