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成長戦略に必要なこと−(農業、医療、弁護士の株式会社化が必要)−


 6月6日の読売新聞は、「東証=6月5日 午後に入り下げ幅拡大」という見出しで、次のように報じていました。
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 【東証第1部】日経平均株価は大幅反落、下げ幅は今年3番目の大きさだった。
 4日の米株安を受け、売りが優勢、外国為替市場での円高基調も下落要因となった。午後に入り、安倍首相が発表した成長戦略第3弾の中身が新味に乏しいとの見方から、下げ幅を拡大した。日経平均の下げ幅は518円となり、1万3014円で取引を終了。東証株価指数(TOPIX)も35・44ポイント低い1090・03と反落した。
 【東証第2部】続落。
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 安倍総理が発表した「成長戦略」は期待外れとの評価がもっぱらで、失望から株価が大幅に下落しました。

 私は成長戦略としては、下記のような規制緩和が重要で有益だと思います。

 
○ 農業(農協、JAを含む)、医療(開業医、私立病院)、
   弁護士(法律事務所)の株式会社化

 
○ 新聞・マスコミ業界、弁護士業界、医療業界に独占禁止法の厳格適用
   による市場活性化


   上記の株式会社化、市場の公正化は経済成長に寄与するところが
   大であると思います。

 先般、安倍総理はTPPに関連しての発言だったと思いますが、
農民を守るため、高級農産物の輸出に力を入れると言っていましたが、これはあまり意味のないことです。
 日本にとって必要なことは
農業を守ること(一定の食糧自給率を維持すること)であり、全就業者人口のうちわずかな割合に過ぎない現在の農民を守ることではありません。

 例えば1トン10万円でアメリカ産のコメを輸入しても、その10倍の価格100キロ10万円で高級なコメを第三国(例えば中国の富裕層)に輸出できれば、米作農家としては農業を維持することができる事になるかもしれませんが、コメの自給率は維持できなくなります。これでは農業を守ったことになりません。現在の農民を守る必要があるのなら、農民が失業したら他の職業に転職できればそれでいいのです。

 問題は、
農地の所有・売買が市場経済にふさわしい柔軟性・流通性を持っていないため、農業・農民という職業が硬直的で職業というより特定の身分のようになってしまっていて、農民の転職(農地を手放しての離農)、他の職業から農業への参入(農地を購入しての参入、法人の新規参入)がほとんど不可能であると言う事です。これは、実質的に職業選択の自由が制限されているのと同じです。

 この事態には、地方の公務員や政治家の利権が関わっていて、安倍総理にはそれに挑戦する意思も能力もないのが実態だと思います。

 このようないびつな状況が、日本の高齢農民による
中国人農業“研修生”採用などという違法すれすれの外国人労働力調達の事態を招いているのであり、弊害は計り知れません。
 日本の農業がいくら保護政策で保護しても離農が後を絶たず、衰退の一途をたどるのは、
既存の農民が過保護により特権階級化して職業選択の自由が実質的に制限されているからです。

 新規に農業を希望する若者がローンで離農者の農地を購入したり、あるいは食品企業が新規に事業として農地を買収し、従業員を雇用して農業を経営すると言うことが実現すれば、農業の振興に寄与するところが大で、自給率の向上・品質の向上が大いに期待できると思います。
 また、あわせて
農協、その上部組織のJA(全国農業協同組合連合会)なども民営化、株式会社化して流通も整備することが必要です。

 次に
医療もサービス業の一種であり、医師は高額の収入を得ているにもかかわらず、医師、医院、病院は“聖域”視されて、新規参入、営業の自由が制約されて競争原理が働かず、消費者の利益を損なっています。株式会社化により、自由競争原理が働くような市場環境になれば、市場全体が拡大することは間違いないと思います。

 弁護士業界も株式会社化により大きく拡大、発展の余地があります。司法改革により弁護士が急速に数が増えたにもかかわらず、仕事にありつけない弁護士が増えたのは、
弁護士業務がサービス業であるにもかかわらず、株式会社化が禁止され、広告その他の営業活動が大きく制約され、需要と供給がマッチしていないことが原因です。
 また近年、弁護士に
不祥事が続発しているのは、弁護士業界が旧態依然の零細個人経営で、規模を拡大しての近代的なビジネスとしてのマネジメントができていない事が原因です。

 全国各地の
弁護士会の活動に独占禁止法を厳格に適用し、弁護士会の活動を厳しく制限し、弁護士の営業に関与、介入することを厳禁し、市場を活性化して消費者の利便性を向上させることが急務であると思います。

 日刊新聞業界は旧態依然で進歩がなく、
寡占下にあるため新規参入もなく、記者クラブによる情報独占のため、新聞はどれも似たような内容です。役所の情報独占にあぐらをかいているため、独自取材の記事が少なく、消費者に必要な情報をもれなく提供するという使命を果たしていません。読者が日刊新聞を選択する幅はきわめて限られています。

 このような中で、マスコミ業界に独占禁止法を厳格に適用し、記者クラブを廃止し、再販制度・特殊指定制度を廃止し、
新聞メーカーによる販売店の不当な拘束を禁止すれば、販売店間の競争から統廃合・経営基盤の強化が進みます。そして、販売店が新聞メーカーの支配を脱し、正常な販売競争(価格競争を含む)が始まれば、“売れる新聞”を目指してメーカー間の健全な競争が期待できます。
 新聞市場を活性化させることは、消費者のためにも、マスコミ業界にとっても必要・不可欠であると思います。

 以上にあげたような
農業、医療、弁護士の各分野の規制緩和による株式会社化と、独占禁止法の適用によるマスコミ、弁護士、医療市場の活性化は成長戦略として有効であり、経済成長に寄与するものと思います。

 安倍総理の提案はスローガン(標語)ばかりで中身が伴わず、中身があってもいかにも小さな事ばかりで、株式市場が失望するのも当然だと思います。

平成25年6月10日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ