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総会屋に対する不正な利益提供事件

 銀行や証券会社が総会屋に金を脅し取られていたことが、「不正な利益提供事件」として摘発され、総会屋だけでなく企業の役員も同じ犯罪者として逮捕されてしまいました。被害者と加害者が同じ罪名で逮捕されるとは、何とも奇異なことです。不正に利益を提供する犯罪などというものが本来ありえるのでしょうか。他人に利益を提供するということは自分の不利益になることです。不正に利益を得るのが犯罪であって、気違いでもなければ不正に利益を提供するなどということはありえないことです。あるとすればそれは脅迫されているからに他なりません。脅迫されていたならば被害者です。

 たとえば零細企業の社長の娘が誘拐されて、身代金を脅し取られたとき、支払ったお金が会社の売上金だったとしたら、その社長は横領として逮捕されることになるのでしょうか。今回の事件では不正に利益を提供する動機として株主総会を円滑に終わらせるためと言われますが、これは総会屋が、金を払わなければ総会を妨害すると言っていることの裏返しではないでしょうか。

 警察は捕まえるべきものを捕まえられずに、捕まえやすいものを捕まえているのだと思います。長年にわたり総会屋の被害がでていることを知りながら捕まえることができず、企業に信頼されていないため被害届も出されない現状に逆上し、遂に発想を転換して被害者を犯罪者にし、真の犯罪者をその共犯として逮捕するという暴挙に及んだのです。これが一番手っ取り早い方法だったのです。総会屋の犯罪が株主の地位を利用しての恐喝であることに注目して、商法の取締役の義務違反(株主への利益供与)という形式的な違法を突いて、別件逮捕まがいのやり方で被害者を逮捕したのです。

 企業はなぜ総会屋の脅しに屈しなければならなかったのでしようか。それは弱みを握られていたからです。昔から日本のたかり、ゆすりの手口は決まっています。それは決して企業だけに非があることを意味しません。誰だってミスはあるものです。新聞などは、誤報、虚報は日常茶飯事です。警察だって捜査ミスはしょっちゅうです。ところが大企業性悪説に凝り固まっているマスコミや警察はそうは考えません。企業のミスを見つけると鬼の首でも取ったように大きく取り上げます。それで企業は萎縮してしまいます。小さなミスでもマスコミに大きく書かれる事を恐れます。少しの金で済むならという気になってしまいます。それが彼ら総会屋のつけ目です。それが日本の企業を取り巻く風土なのです。

平成10年3月20日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ