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紅白の視聴率低下は、“ジェンダー”とは関係ない -原因はネットの普及が作詞・作曲家の権利を侵害し、音楽産業が不振となったことにある-

 1月19日の読売新聞は、「視聴率 史上最低…多様性『紅白』曲がり角」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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視聴率 史上最低…多様性「紅白」曲がり角
20220119 0500  読売

 年末恒例のテレビ番組
「NHK紅白歌合戦」曲がり角を迎えている。ビデオリサーチの調べによると、2021年の第72回は午後9時からの第2部の世帯視聴率が34.3%(関東地区)で、2部制となった1989年以降最低だった。時代に合った紅白の形を目指し、新機軸を打ち出したが、視聴者にはもうひとつ届かなかった。(文化部 川床弥生)


第72回NHK紅白歌合戦    (NHK提供)

 紅白歌合戦は1951年、ラジオで始まった。
53年からテレビでも放送され、その歩みとともに人気を広げた。日本にテレビが普及する契機となった東京五輪の前年の63年に視聴率81.4%を記録。2部制となった89年以降も第2部は、20世紀の間までほぼ50%台を保ったが、現在は低落傾向にある。

 今回の放送で、NHKは多くの
変革を打ち出した。まず、社会的・文化的に作られる性差を意味するジェンダー意識の高まりを受け、「組司会」「組司会」の名称をやめ、「司会」に統一した。「カラフル」をテーマに掲げ、近年関心が高まるSDGs(持続可能な開発目標)を含め、多様性をアピールした。


第72回NHK紅白歌合戦(NHK提供)

 また、例年のように、大泉洋さんと川口春奈さんら
男女の司会者による「舌戦」も展開されず、男女の競い合いの要素を薄めた。

 若者に人気のまふまふさんや藤井風さんらが初出場するなど、
若い視聴者を取り込む工夫もされていた。だが、NHKホールが改修中のため東京国際フォーラムをメイン会場としたこともあり、人気グループNiziUをはじめ、スタジオなど別会場からの演奏も多かった。華やかだったが、生放送らしさに少し欠けていた。

 
紅白の魅力は、かつて「3S」と言われた。〈1〉男女でチームを分ける「セックス」〈2〉紅白で勝負を競う「スポーツ」〈3〉何が起きるか分からない「サスペンス」――の三つだ。今回は、この要素を乗り越えようとした。だが第2部の世帯視聴率は前年比6.0ポイント減。午後7時30分からの第1部も、同2.7ポイント減の31.5%だった。NHKの前田晃伸会長も13日の定例記者会見で、「生放送は何が起こるか分からずハプニングもある。生の良さを生かす番組にしないといけないのではないか」と述べた。

 現在の紅白は、BS4Kや8Kでの放送や受信契約者向けの動画サービス「NHKプラス」の同時配信もあり、従来の地上波の視聴率だけで評価できない面もある。

 メディアが多様化し、大勢がみなで楽しむ番組が少ない時代だ。放送評論家で同志社女子大の
影山貴彦教授は「紅白はテレビを通し、お茶の間で多くの人が歌を分かち合う心の古里。老若男女に見てもらう意識を持ち続け、テレビの存在感を示してほしい」と話す。
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 上記のグラフの推移を見れば分かるとおり、紅白歌合戦の視聴率下落は
20年以上前から始まっています。今時“曲がり角”とは、適切な指摘ではありません。曲がり角はとうの昔に通過しているのです。
 紅白だけで無く、類似のテレビ番組
「日本レコード大賞」も、下記の様に1977年の最高視聴率50.8%に対して、2021年は12.0%と大幅に落ち込んでいます。


「レコード大賞2021の視聴率!過去の推移や最高は50.8%だった!」より抜粋
https://www.tokyo-minpo.jp/recordaward-audience/

 「紅白」、「レコード大賞」
衰退の原因は、ネットの普及により、作詞・作曲家の権利が侵害されて儲からなくなり、作詞・作曲家の創作意欲が低下し、新曲・ヒット曲が少なくなり、音楽・流行歌が産業として成り立たなくなったことです。

 “
ジェンダー云々”では、「レコード大賞」下落の説明はつかず、全くの的外れ・見当違いの主張・指摘と言うほかはありません。音楽番組以外もテレビの視聴率は下降・低下が顕著で、“テレビの存在感”低下の一方なのです。その為か、最近では“視聴率”という言葉そのものが聞かれることが無くなりました。

 今年の「紅白」に当たって、NHKは鳴り物入りで
司会者の呼び名を変更しましたが、それがマイナスに作用した可能性をなぜ取り上げないのでしょうか。

 
男女別の構成や“紅白”の呼び名等の基本を変えずに、司会者の呼び名だけを変えることに何の意味があるのでしょうか。中途半端に“ジェンダー”を云々するのは意味が無く、それは「紅・白」の否定に繫がり、番組の趣旨と矛盾する結果となりかねません。

 この変更は、少なくとも
視聴率に対してプラスに働くことは無く、影響があるとすればマイナスでしか無いと思われます。
 番組制作者の
場違い独善的な意図が裏目に出た可能性は十分あると思います。

 
「紅白」「レコード大賞」衰退の事実は、単に紅白だけの問題では無く、日本の音楽、流行歌そのものが不振の一途をたどっていることを雄弁に物語っていると思います。
 ヒット曲、ミリオンセラーなどの言葉は、死語になりつつあり、レコード・CDの売り上げ枚数が話題になることはありません。人気のある曲、
ヒット曲そのものが社会から、市場から消えてしまったのです。

令和4年1月23日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ