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銀行への公的資金の投入と高給批判

 読売新聞(4月2日付朝刊)が都市銀行役員の退職金が高すぎると言って「公的資金の投入」を絡めて批判しています。公的資金の投入と言っても、住専の場合のように、農協が住専に貸し付け、回収不能になった損失を税金を使って補填してやった場合と異なり、銀行に対するものは劣後ローンの供与、劣後債の購入といわれています。住専の場合と明らかに異なります。「公的資金の投入」と十把一絡げに言うのは、大きな誤りであると思います。国は単なる一債権者となったに過ぎません。

 一般論として、債権者は債務者である銀行の経営に干渉する権限はないはずです。それにも関わらず、大蔵省も銀行員の給与について干渉する発言をしています。大蔵省は民間企業の経営に干渉すべきではありません。特に今回の大蔵省の接待汚職の原因が、民間企業に対する過度の干渉、許認可行政であることを考えると、「公的資金の投入」を口実とした銀行員の高給批判は、事件や不祥事が起きる度に権限を肥大させていく、大蔵省の焼け太り体質の一つと考えざるを得ません。

 給与や退職金が高いか低いかは、何と比較するかによります。賃金は労働の対価ですから、高いと批判するならそういう観点から批判すべきです。根拠の明確でない感情論は有害無益です。

 ところで、新聞社は独占禁止法が禁じている再販制度を例外的に認められている業界です。商品を自分の決めた価格で売ることを小売店に強制できる特権があります。国民すべてが職業によらず平等であるとする憲法の建前からすると非常におかしな話しだと思います。しかし、もし新聞業界がその公共性(公共性とは何なのか考える必要があります)の故に、再販価格の維持がやむを得ないと主張するのであれば、銀行業界の高給を批判する前に自らの給与、退職金の水準を公表すべきであると思います。独占禁止法の適用除外を受けて不当な利益を得ていないことを証明する義務があります。

平成10年4月4日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      Z目次へ