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東急百貨店の責任は誰が問うのか

 山一証券の簿外債務の問題で、山一が東急百貨店との間で、10%の違法な利回り保証契約を結んでいたことが明らかになりました。バブル崩壊後、契約を履行できなくなった山一に対して、東急が文書で契約の履行を迫り、これに窮した山一が大蔵省証券局長に相談し「海外飛ばし」を始めた経緯が報道されています。
 東急百貨店には当然違法行為の認識はあったと思います。東急の刑事上、民事上、道義上の責任はないのでしょうか。不正な利益を強要することは犯罪にならないのでしょうか。山一証券の役員だけが罪に問われるのは理不尽だと思います。不正な利益を要求した総会屋は罪に問われました。
 違法な利回り保証契約は無効ではないのでしょうか。山一証券、及びその株主は東急百貨店に対して、損害賠償請求はできなかったのでしょうか。 刑事上、民事上の責任追及が無理だとしても、道義上の責任は追及すべきです。彼らを匿名で保護する必要はありません。東急だけではありません。違法な利回り保証を求めた多くの事業法人、非営利法人、特殊法人の名が明らかにされるべきであると思います。

 今回の証券会社の「飛ばし」、「簿外債務」の不祥事は決して証券業界がすべての責任を負わされる不祥事ではないと思います。証券投資がリスクを伴うものであること、特にハイリターンのものはハイリスクであることを理解できない、理解しようとしない人々を相手に、安全で高利回りという矛盾を抱えて営業せざるを得ない土壌の中で、バブルの崩壊が引き金になってが起きたものと言うことができます。
 ヤクルトが投機性の高いデリバティブ取引によって1000億円もの損失を出し出したことが報じられました。東急百貨店も本来はそうした損失を自ら負担すべきであったにもかかわらず、違法な契約によりそれを転嫁したことになります。そして山一がその負担を余儀なくされ企業消滅に至ったのです。

 山一証券の役員の責任は重大ですが、違法な利回り保証契約を結び、その履行を迫った「顧客」達の責任も追及すべきであると思います。

平成10年3月21日      ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る      Z目次へ