最近、生理用タンポンがダイオキシンを含むという事実に注目が集まっています。タンポンを塩素漂白するときにダイオキシンが副生成物として発生するのです。 1992年のこと、ダイオキシンが人々に与える健康リスクについて連邦議会の委員会が調べていたとき、それまで公開されていなかったFDA(食品医薬品局)の報告に行き当たりました。その中に、商業生産されているタンポンに微量のダイオキシンが検出されたとありました。少なくとも1989年にさかのぼるメモも見つかり、タンポンに含まれるダイオキシンのリスクは高く、そのレベルを調べる研究が必要であるとFDAの研究者たちが考えていたことが分かったのです。FDAはこの問題を追求しませんでした。代わりにアメリカ国内のタンポン・メーカーが出したデータに頼ってしまいました。そのためタンポンにはダイオキシンの健康リスクが存在しないという結論になっていたのです。
1996年7月、下院議員キャロライン・マロニーさんが「女性の健康とダイオキシンに関する法律」を議会に出しました。この法案は、生理用品にダイオキシンが含まれているかどうか、使っている女性の健康にはっきりした影響があるかどうか、調査するよう求めています。いまのところタンポンの生産は、あるともいえないような規制をFDAから受けている(生理用品は医療用具の扱いなので、FDAの規制を受けます)だけです。
これまでタンポン業界とFDAは、女性の健康被害を守れずに来たのです。1980年、 38人の女性がタンポンの関係する中毒ショック症で亡くなりました。 プレイテックスとタンパックスという二つのタンポン製造会社を相手取って、集団代表訴訟が起こされました。その十年以上前から、たいていのタンポンには吸収効率の非常に高いレーヨン繊維が使われていて、これに中毒ショック症を引き起こす危険性があるのをメーカーが知っていた。それが告訴の理由でした。
女性健康問題の多くが取るに足りない事柄として扱われてきたのと同じように、生理用品が女性に与えるリスクを見落とし軽視してきた経過を見ると、 この種の製品に含まれるダイオキシンの健康影響を客観的に分析する必要があると考えるのが妥当でしょう。また、女性の健康をもっとしっかり守るよう、タンポン工業を規制する方法やガイドラインを見直すことも必要でしょう。
【毒性】(中略)
ダイオキシンの影響は色々な実験動物で研究されてきましたが、結果は動物の種類によって大きく違います。高濃度のTCDDを取り込むと、どの動物も死ぬ可能性があります。またどの動物でも生殖に悪い影響を受けるようです。ラットがTCDDを子宮に取り込み続けると、妊娠回数が非常に少なくなりました。発育初期にダイオキシンを取り込んだ場合には、ドーパミン(ドーパミンは神経伝達機能の指標とされる)の調節機能が影響を受けました。マウスの場合には(毒性が現れない量とされている)低濃度でも奇形を生じます。観察された一番わかりやすい例は、口蓋破裂です。ダイオキシンがこの障害を起こすメカニズムとして、 上皮細胞の分化と増殖に変化が生じるのではないかと考えられています。いくつかの動物では胸腺や脾臓・腎臓に影響が見られました。タンポン使用時にダイオキシンを取り込んで生じる健康リスクについて考えるとき、興味深いのは、ダイオキシンの取り込みと子宮内膜症の間にアカゲザルで相関が認められることです。投与量と出てきた結果との間に明確な関係も示されています。(中略)
子宮内膜症は、子宮以外の卵巣や膀胱・腸・腹膜で子宮の内膜細胞が成長・増殖する病気です。この細胞は卵巣ホルモンに反応し、生理周期に合わせて変化し、周期的に出血します。この病気に関する研究は始まったばかりです。細胞が転移する原因は分かっていません。ある仮説は経血が逆流するからではないかとしています。この病気には軽症と重症の場合があって、症状として急性の痛みや不妊症が見られます。多くの女性が生理痛を経験しますし、子宮内膜症は腹腔鏡でしか正確に診断できません。それで一般の人々にどれだけ実例があるのか分かっていませんが、生殖年齢にある女性の一割程度であろうと考えられています。 ダイオキシンは内分泌系に影響があるようなので、女性に与える影響を研究することがますます重要だと思われます。
【EPAによるダイオキシンの毒性再評価】略
【結論】
ダイオキシンが人体にあたえる毒性の影響とメカニズムは、どういうものか。これは決して簡単に答えられる問題ではありません。ダイオキシンを地上最強の毒物と考えるのは極端だが、環境と健康とに重大な影響がある――
これが現在までの研究から出てくる結論です。(中略)
子宮内膜症の原因は分かりませんが、発病率は上昇しています。ダイオキシンとヒトの子宮内膜症の関係には間接的な証拠があるだけですが、アカゲザルではダイオキシンのレベルと症状の重さの間に強い相関があることを考えてみると、ヒトでも両者の間に結びつきがあると結論するのが妥当でしょう。 タンポンを使ってダイオキシンを取り込むのは不必要なことであるばかりでなく、回避できるリスクです。ダイオキシンを生殖系に直接取り込むのは、たいへん愚かしい行為だと思います。とくに女性の健康にダイオキシンがどれだけ影響しているか研究されていない現状では、そうとしか言いようがありません。
女性が自分自身を教育し、健康を守っていくよう積極的な役割を果たすことが必要ですね。女性の健康問題は、立法機関・監督機関で軽視されることが多いので、 行政・産業などの色々なレベルで変化が起こってくることが望まれます。マロニー下院議員が出した法案は、塩素漂白によってタンポン中にどれだけのダイオキシンが含まれるのか、また女性の健康にどんな影響をあたえるのか、これについて独立機関の研究を要求しています。法案はさい先のよいスタートを切りましたが、この法案だけでなく、生理用品を規制する今の基準を変え、きちっと安全性を評価せずに新製品を出せる今のやり方を変えていくことが必要です。消費者として安全な製品を要求していくことも必要です。
私がこの問題に気付いたのは、健康に関する<ミズ>誌の小さな記事でした。カナダの小さな会社が、オール・コットンで塩素漂白していない生理用品を作っていて、その社長さんを紹介していたのです。こういう製品を買うようにすること、漂白タンポンを売っているメーカーをボイコットすることが大切ですね。毒物ショック症の過去の経験から、タンポン業界の自己規制にまかせておいたら危険だからです。それから、他の人にも危険性を知らせること、公開の場所で生殖と女性の健康問題について話し合うことが特に必要です。
【文献】略