[ソニー・ファイル 3]
緑の人々を食べる巨人たち
ソニーなどエレクトロニクス界の巨人が やっかいな環境戦士にネットで反撃している
英・オブザーバー紙
バーハン・ワジル 2000年10月1日(日)
[原文]
ソニーの製品は大量消費の時代精神から生まれた。ウォークマン、ディスクマン、ラップトップ、最近ではネット接続用携帯電話は、かつてのロック世代を対象にした商品だ。経営規模は さしたるものではないのに、ソニーを現在の地位まで押し上げ、世界企業というファンキーな顔を持つようにしたのは、これらの商品群である。
もちろん、ぴかぴかの企業イメージにも、少々きずの入ることはあった。有名なところでは、ソニーの告発でジョージ・マイケルが創作活動さしとめのイジメにあったとき、そのことが広く報道され、ソニーとのレコーディング契約がうまく解除になったことがある。しかし、ソニーに対するロック世代の好みにかげりが出ることは これまでほとんどなかった。たとえば先週プラハで開かれた会議で、環境戦士たちはソニーのウォークマンを踏みつけにしなかった。資本制経済に反対する活動家たちはマクドナルド非難のプラカードを手にもっていたが、ソニーを攻撃することは避けていた。
しかし、ここにきて情況が一変しそうである。人間工学に従ったこぎれいな外形をもつソニー製品を批判する環境グループにたいし、娯楽と技術の巨人ソニーがスパイ活動をするよう主唱したからだ。
これはSFの逆ユートピアにでも登場しそうな話だ。しかし事実である。今年の初夏、ブリュッセルの欧州情報通信技術産業協会(European Information and Communications Technology Industry Association)で、ソニー・インターナショナル(ヨーロッパ)の企画責任者であるアンドルー・ベインズ氏が、環境活動団体にたいするソニーの戦略を示した。問題としているのは、環境に関心を寄せる人たちが 「ソニーの製品は有毒物質を含んでいる。だから捨てるのが難しい」 と考えていることだ。環境団体がもっと強力な規制を望んでいるのにたいし、ソニーはそれを回避したいと考えている。
その戦略文書は今、ネット上で環境に関心を持っている人たちの間で回し読みされている。「NGO戦略」 というタイトルを持つこの文書には、エドガー・フーバー・ジュニアの 「Gメン」 に出てくる冷戦そのものの演出がされている。ソニーに脅威を与える主な環境グループ、つまり 「持続的発展のための北半球連盟」、「グリーンピース」、「欧州環境ビューロー」、「シリコンバレー有毒物質連合」、「地球の友」 の名前・連絡先・アドレスがあがっている。
これらの環境団体は、製品を廃棄したときに環境と健康に有害な物質をだす責任をメーカーにとらせようとしているが、ソニーも含めエレクトロニクス業界は、これに対処することを迫られてきた。これがEUでは電気・電子機器廃棄物に関する欧州委員会指令(WEEE)として結実しつつある。これが採択されると、ソニーのようなメーカーは製品の寿命があるかぎり、廃棄にいたるまでその費用負担の責任を負うことになる。強制的な回収義務が生じる目標年は2006年で、これ以降、回収した製品の重量にして7割から9割はリサイクルまたは再使用しなければならなくなる。この指令は、エレクトロニクス業界で普通につかっている水銀・鉛・カドミウム・その他の有毒化学物質の使用を2008年から段階的に廃止することも提案することになっている。
エレクトロニクス業界の費用は天文学的数字になる可能性もある。数年前にEUの立法措置が浮上してから、アメリカ電子工業会(この傘下には3000以上の企業があり、IBM・マイクロソフト・モトローラ・インテルも入っている)は、拡大生産者責任(EPR)に対する表立った攻撃を始めている。
ソニーがおこなったプレゼンテーションの中味は、冷静に読んでみる必要がある。昨年、地球規模のデモが三つ行われたが、それだけでNGOを危険な工作員とみなすべきなのだろうか? 「NGOの活動を監視すること!」 と5ページに書いてあり、地球の友とグリーンピースがオンラインで公表した文書へのリンクが上がっている。これらの環境団体が 「高度に活動的」 で 「よく組織されて」 いて、「地球規模になって」 いるとされている。
「待ったなしだ!」 とソニーは職員にはっぱをかける。ソニーが勧めているのは、迅速に反応できる行動班として会社に報道官を雇うことだ。あれやこれや矛盾する情報がでてくるのは報道にありがちなことだから、これを防ぐために、業界全体で一斉に対策がとれるよう準備をしておくこと。
ここまでだったら読者は、近いうちに製品の生産者責任を負うはめになるかもしれない巨大企業の反応としては、ソニーのやることも当然だと考えるかもしれない。だが本当の急所はこの先にある。プレゼンテーションでは、やっかいなウェブ上の批判にたいする解決法として、エレクトロニクス産業が 「ウェブ調査機関」 を雇うことを提案している。ロンドンを本拠とするインフォニック社がソニーの勧めているウェブ上のスパイ機関である。
シアトルやワシントン、最近ではプラハで上がっている抗議の高まりに続いて、ウェブ上で活動家たちに攻め立てられる優良企業にたいして、インフォニックのウェブサイトは武装するようそそのかしている。「先頭を切る批判の声が企業の声より突然ずっと大きくなった。これまでの調子で対話を続けるのがだんだん難しくなったと感じている大企業について、活動家・顧客・ジャーナリスト・労働者が以前とはまったく違ったやりかたで互いに話を始めた」 とインフォニックのサイトが書いている。
ウェブ探偵たちが自慢にしているのは、請け負った依頼をモラルと関係なく遂行することだ。インフォニック社は95年にシェル・インターナショナルに雇われてから、頭角を現してきた。インフォニックに依頼している企業としては、英国航空、リーバイ・ストラウス社、ユニリーバが挙げられる。
NGOをしっかり監視するのに、インフォニックのようなネット諜報機関を利用する例が商業分野で先行している。インターネットに慣れた活動家を監視する動きが、最近では驚くべき勢いで増えてきた。電脳空間で得ている評判をつかむため、世界の大企業800社以上がアメリカのネット諜報機関 「E:ウォッチ」 を利用している。企業批判をする人たちのおかしな動きを注意深く観察し続けることが重要というわけだ。「E:ウォッチ」 の顧客としては、H.J.ハインツ社やノースウェスト航空がある。「うわさが広まる前にそれをキャッチできます」 と、そのウェブサイトは保証する。「長続きする確実な情報ではなくて、取るに足りない情報や不正確な情報の第一発見者のひとりになれます」 というわけだ。
第一発見者になれるのは、批判者のウェブサイトを監視してまわるネット探偵をつかう企業だというのだろうか? これは情報戦争が驚くほど進歩してきたということであるように思われる。これまで伝統的に政府機関が抗議グループの活動を監視して来た。この5月にパリに本拠をおく 「諜報ニューズレター」 紙が報じたところによると、米軍諜報機関の予備部隊が4月14日から16日にワシントンで開かれたIMF・世銀の会議に対する抗議行動を監視するために配備された。「国防総省は諜報部と警備部の部隊を700人ばかりバージニア州フォートベルブアに送って、4月17日、ワシントン警察の警護応援に当たらせた。これには人間の監視と情報の監視の両方の専門家が含まれていた」 とニューズレターが書いている。
このニューズレターによると、活動家のファイルが地域情報共有システムを通じて回された。これはネットワーク化したデータベースで、ネットワークには5300の法的強制力をもつ合衆国機関、FBI、薬物捜査機関、税務調査官、シークレットサービス、アルコール・たばこ・火器監督局が含まれている。RISSが無政府主義者グループの活動を詳しく調べた資料には、グリーンピース、全米インディアン運動、ザパティスタ国家解放戦線のものが含まれている。
ソニーがインフォニックを名指しで支持しているのは、結局はグリーンピースや地球の友に似た活動をしている団体にたいする嫌がらせのキャンペーンをしたいという以外のなにものでもないだろう。しかし活動を続けるのに資金がいる環境組織は、確証のないうわさのまえに力をもぎ取られていく可能性がある。「資金を提供している団体に属している人々はエスタブリッシュメントの一員なんですよ」 と 「持続的発展のための北半球連盟」 の報道担当者イザ・クジュシェウスカがいう。「大企業はNGOに資金提供するについて、大きな発言権をもっています」 というのが実情だ。
ソニーの報告に盛られた表現を特徴付けているのは、神経質な恐怖感である。名前の登場する環境組織では、これを見て、おだやかながら困惑の表情を浮かべる。カリフォルニアのシリコンバレー有毒物質連合はサンホセの事務所にたった14人のスタッフを置くだけだ。「ウェブ諜報機関なんか必要ないですよ」 と連合代表のテッド・スミス氏は笑う。「私たちはとてもとてもフォーチュン誌の500企業に入ることなんかできません。そんなに何でも知りたければ、ソニーはわれわれのウェブサイトをみるだけでいいんです」。
[原文]
記事に対するソニーの見解
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