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フランスが鍵を握る
www.kcn.ne.jp/~gauss/jsf/ciraq.html

2003年2月7日


この先 しばらくはアメリカの出方を抜きにして他の問題を論じることができなくなる ほど、今は重要な瞬間にさしかかっています。世界の経済と政治のシステムが 今後どう変化していくかが、すべての問題にかかわってくる。幸か不幸か、そ ういう時代に私たちは直面しているように感じられます。あらゆる環境問題も、 このことから逃れられない。

たとえば、ごみ問題。経済紙や業界紙には環境技術が日々満載されていて、い かにも問題が次第に解決しつつあるような錯覚を覚えさせられますが、実は何 も解決していないことは、ごみの量を見れば明らかです。駆け込みの処理があ ったからだとか、リサイクル量は増えているとか、いろいろな論説が行われて いるが、年末に出てすっかり有名になった『産廃コネクション』(石渡正佳、 WAVE出版)という本を読めば、いかほども進展していないことは一目瞭然 でしょう。政治と経済のシステムが変わらなければ、ごみは変わらない。他の 環境問題も同じことです。

そうした情勢の中で読者数が多くないものの、これからの世界がどうなってい くのか、的確な情勢分析で際立っているのが、世界システム論の泰斗イマニュ エル・ウォーラーステインが毎月2度ずつ発表している「コメンタリー」と題 する世界評論です。翻訳を安濃一樹さんと共同作業で行い、『週刊金曜日』に 不定期で発表しつづけています。今回、2月1日にウォーラーステインが書い ているのは、「フランスが鍵だ」という評論です。全文はいずれ翻訳したいと 思っていますが、とりあえず要点をまとめておきたい気持ちにさせられました。
▼原文 http://fbc.binghamton.edu/commentr.htm

──フランスは第二次大戦後、自国の政治的立場をアメリカが尊重し、世界戦 略の中にとりいれるよう主張してきた。これはド・ゴールの時から、現在のシ ラクまで続いている。とくに最近のアメリカの「ユニラテラリズム」(単独覇 権主義、一国中心主義)には我慢ならない思いを抱いてきた。一方、米はなん とかフランスを説得しようとしてきたが、うまく行っていない。

そこへ最近、ラムズフェルドが「古臭いヨーロッパ」などと発言した。彼の脳 裏にあったのは、フランスだった。これまでドイツにフランスを説得してもら って来た米は、今回ドイツが協力しないので、裏切られたと感じている。米が イラクに侵攻するかどうかは、フランスが鍵を握っている。もしフランスがO Kといえば、世界中がなんとなく従うことになるだろう。フランスが拒否すれ ば、ドイツ・ロシア・中国・カナダ・メキシコもそちらの側につくだろう。日 本は「世界世論」次第だから、安保理の判断があれば従うという立場だ。

英のブレアもフランスをあてにしている。労働党の内部で四面楚歌になってい るので、なんとかフランスに助け出してもらいたいと思っている。インデペン デント紙には、世界を動かすのはホワイトハウスでもダウニング・ストリート 10番地(ブレアの公邸)でもなく、シラクのいるエリゼー宮だという記事が 登場した。

フランスも実のところは分け前がほしい。アメリカの制裁を受けたくない。し かし国内は圧倒的に戦争反対だから、簡単に戦争に賛成することはできない。 一方アメリカは、安保理の証拠が決定的でないのはわかっている。しかしこれ がフランスに口実を提供するかもしれないと期待している。単独覇権主義の戦 争はアメリカ自身にもダメージを与えるから、国際的な合意がほしいというの がアメリカの本音である。

ジオポリティクス(地政学)の上でアメリカの戦略に影響力を持っているのは 英でも露、中でもなく、フランスである。これは、フランスの力が強いからで はなく、単独覇権主義と対立する多元的な世界(multipolar world)のあり方 を追求し続け、影響力があるからだ。フランスがどういうカードを引くかは、 まもなく明らかになるだろう──