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テッド・ロール
戦争の雄叫び
先制攻撃による政権交代について

訳/安濃一樹・別処珠樹、02/09/25
www.kcn.ne.jp/~gauss/jsf/rall.html


二〇〇二年九月**日、ニューヨーク発

昨日、ブリュッセルで開かれた国連臨時総会において、イランのモハマド・ハタミ大統領は米国への介入を求め、米国が保有する大量破壊兵器を廃棄しないかぎり、国連による軍事行動は「避けられない」と述べた。

ハタミ氏の演説は、各国が期待していたとおり、米大統領ジョージ・W・ブッシュを糾弾するものだった。ブッシュ大統領が国連決議を無視しつづけていることを厳しく批判した。裕福な悪友たちの懐をさらに潤すために同大統領が国家の富を利用する一方で、アメリカ市民は基本的な社会施策である国民健康保険さえ持たない、とハタミ氏は指摘する。

「不法なクーデターによって、この堕落した凶悪な独裁者が現れ、史上最も長くつづく代議制民主主義を踏みにじった。世界がこの事件を目撃したのは二年ほど前だった」とハタミ氏は言う。

「以来ブッシュ政権は、国内では少数派の民族や宗教を組織的に弾圧し、国外では世界の平和と安全保障を脅かしてきた。数千人もの政治活動家や一般市民が証拠もなく曖昧な嫌疑だけで逮捕拘禁された。基本的人権が奪われた。国際社会が法や経済・環境問題にとりくもうとする努力を、このならず者国家は踏みにじる。捕虜の処遇に関するジュネーブ条約さえも無視している。中央アジア全体を不安定にしたアフガニスタン侵略は国際法に違反する戦争だ。アメリカはこの戦争を戦争だと認めない。よって捕虜は存在しないと言いつづける」

米国は世界最大の核保有国であるばかりでなく、「核兵器の開発に成功したわずか数ヶ月後には核攻撃を行い、五〇万人にもおよぶ無実の一般市民を殺害した。核による大虐殺を犯した国家に大量破壊兵器の保有を許してはならない」とハタミ氏は主張する。

「ブッシュはアフガニスタンを侵略し、いまイラクを脅迫している。危機が高まるなか、何もせずに佇んでいるわけにはいかない。この暴君の先制攻撃を許すな。この悪人から世界を守るために、彼に先んじて行動を起こそう。それが我々に課せられた義務である」とハタミ氏は訴える。

ハタミ氏の言葉に各国代表の拍手が送られ、その喝采に応えるように彼は演説をつづけた。世界で最も危険なテロリストを多く組織し、資金援助をしてきたのはアメリカの数ある情報機関であり、アルカイダやそれを匿うタリバン政権を育てたのもアメリカだ、とハタミ氏は断じた。

「二〇〇一年九月一一日、イスラム教徒の過激派がアメリカ市民を攻撃した。そのテロリストたちを作り出したのはアメリカ自身である」。そして「皮肉なことに、非合法なブッシュ軍事政権はあのテロ事件を巧妙に利用して、政治的に繋がりのある企業に甘い汁を吸わせ、一九世紀の植民地主義を復活させた」とハタミ氏は言い切る。

追放されているアル・ゴア大統領を復権させるために、期限を切ってブッシュに辞任を迫るよう、ハタミ氏は国連に要請した。本来ならアル・ゴア氏は二〇〇〇年の選挙で当選していたはずだが、いたるところで違反や脅迫が行われたため、逆の投票結果となっている。「我々が望むものは政権交代ではない。事態をあるべき姿にもどし自由を確立することである」とハタミ氏は主張する。それに加え、アメリカは大量破壊兵器を廃棄すべきであり、すべての市民に基本的人権を保障するとともに、国際法を守るべきであり、さもないと「重大な結果を招くだろう」と警告した。

「重大な結果」にはアメリカの主要都市と軍事施設にたいする長期の爆撃作戦と、それに続くヨーロッパ軍の地上展開が含まれるだろうと、大方の関係者は認めている。あるフランスの軍事アナリストは「非戦闘員の犠牲者がかなり出る」と予測しながらも、「アメリカ市民は専制政治から開放されなければならない」と述べた。

ハタミ氏の演説で明かされた事実は、フランスのジャック・シラク大統領が作成した文書でも詳しく解説されている。ハタミ氏の告発についてアメリカ独裁政権の代表は、「でっちあげだ。ハタミ大統領は石油や天然ガスなどの天然資源による支配を目指している。その欲望が勝手な思い込みを生み、真実を歪めた」と退けた。コンドリーサ・ライス国家安全保障担当補佐官は、アメリカが大量破壊兵器を保持していることを否定し、国連の査察団がワシントンに入って「アメリカの武器が平和維持だけを目的とすることを確認してもらいたい。もちろん査察はアメリカの統治権を完全に尊重するものでなければならない」とのべた。

国連は、武器査察に関するどのような制限や条件も拒否するものと見られている。

アメリカ合衆国を開放するには、ヨーロッパなど国際編成の大規模な地上軍の投入が必要であり、その再建計画には数十億ユーロにおよぶ資金を要すると、専門家たちは考えている。

「ブッシュが登場する以前から、アメリカの政治制度は混乱を極めていた」とマドリード大学のサルバトーレ・デルーナ教授は話す。

「一党独裁の金権政治を廃し、真の議会制民主主義を確立しなければならない。またアメリカの経済を立て直す必要がある。現在、連邦予算の三分の一が軍事費に回され、税金の大部分を労働者階級が払っている。この軍事独裁型の経済から、教育や貧困問題の解決など基本的な必要性を満たす経済に変えなければならない。インフラが悲惨な状況にあり、全米を結ぶ旅客列車システムさえない。こういう大規模な混乱を収拾していくのに長い年月を必要とするだろう」と述べている。

(アフガン戦争についてテッド・ロールが書いた最近の報道記事を、写真とともに旅行記としてまとめた『アフガニスタンからの帰還』は、第二版が出ている。注文、評言については www.nbmpub.com を見られたい)