環境と学びの広場・全体目次へ

ごみ固形燃料にどんな問題があるか

RDF 目次へ    
 RDF を捨てている

 生産→消費→廃棄→収集→焼却→埋め立て
というのは見ても分かるとおり、一方通行でしかない。実はこの一方通行ということ自体に大きな意義があった。端的にいうと、この経路を一方通行のままに抑えることが近代ごみ処理に与えられた役割であった。製品が廃棄されてからのこととは無関係に生産量が維持されることこそ、近代産業構造が廃棄物処理回路に要求していたことであった。
溝入茂『ごみの百年史』(一九八八年)(1)
 一○年後のいまも、この要求は変わらない。ごみ固形燃料の技術は「近代ごみ処理」の枠組み内部でそれなりに完成した姿さえ見せはじめている。厚生省の「ダイオキシン・ガイドライン」(2)が発生源対策を欠き、枠組みを大胆にうち破る姿勢がないからだ。

RDFとはどんな技術か?

長期的な稼働実績も少ないため技術的な信頼性が実証されていない。(3)

 手もとにあるごみ固形燃料の見本は、直径一・五センチ、長さ七センチ、暗褐色のクレヨン状。英語でレフュース・デライブド・フュエル(RDF)。何でも燃やそう、その上でダイオキシンの発生を抑えようという考え方に立つ。いわば「こてこて」の技術でダイオキシンを封じ込めるもので、軽やかな新しい発想はここにない。「従来からある技術の寄せ集め。特許もほとんどない」(焼却炉技術者)という。
 八○年代からあるこの技術が最近復活してきたのは、ダイオキシン問題とからんで、ごみ処理施設の更新が大量に見込めるからだ。しかし、そううまくゆくかどうか。
 熱収支の計算例(図1=作成中)を示す。二キロのごみから一キロのRDFができる。得られる熱量から投入する熱量を引いた正味が一八○キロカロリー。これは厳しい。
 主な加工方式二つを見ておこう。
@「RMJ方式」。川崎製鉄・伊藤忠商事などが出資するRDF業界最大手・日本リサイクルマネジメント社(以下、「RMJ」と略)の方式で、金属などを除いたあと、ごみを砕き、六○○度で乾燥させ圧縮固形化するもの。
A「J―カトレル方式」。スイスのカトレル社から技術導入したもので、砕いたごみに生石灰を添加して水と反応させ、この時の熱を利用するもの。乾燥工程は最後に来る。この方式は三菱商事・フジタ・石川島播磨重工業・荏原製作所の四社がグループで運営している。
 表1にRDF工場の一覧をあげておく。国庫補助率は基本的に二五%。

RDF製造プラントは熱分解工場か?

塩素などの有害成分の混入は現状では避け難く、燃焼炉の耐久性に影響を及ぼしている。(4)

 昨年三月に操業をはじめた滋賀県湖東町の「リバースセンター」(以下「湖東」)は、それまで分別していたプラスチックを「燃えるごみ」として出すよう呼びかけた。一方、栃木県企業庁の議事録では、ごみ発電計画の過程で「細かな分別収集は都合が悪い」と発言していた(5)ことが住民の開示請求でわかった。プラスチックが減るとRDFの発熱量が減って「都合が悪い」。大量のプラスチック廃棄物が出ることでRDFが成り立つ。まさに「近代ごみ処理」の完成した姿である。
 「湖東」は排気を天井横から排出する。昨秋の集会でこのことにふれた阪大理学部の植村振作さんは、「隣の裏山で異様な化学物質臭を感じた。燃やさなくてもダイオキシンなどができるほか、塩ビ可塑剤のフタル酸エステルも出ている可能性がある」と話した。
 加工時に出るダイオキシンのデータはないが、規制値が○・一ナノグラム―TEQ/N立方メートル(以下「ナノグラム」)程度になると「これを越える可能性は大きいと考えられる。現在、調査検討中」(6)だそうだ。乾燥工程の空気だけでなく配管類も高温になっているから、フライパンでプラスチックを炒めている状態だ。にもかかわらず、その他の可塑剤や熱分解生成物についてのデータはなく(7)、調査しているという話もない(本当はやっているのだという説もある)。
 フタル酸エステルは、ダイオキシンと同様に環境ホルモン(内分泌攪乱物質)として問題になっている物質。昨年十一月、ヒトの精子減少率がヨーロッパで年率三・一%という海外報道(8)があった。減少の原因は解明されていないが、環境ホルモンの与える影響は底知れないものがあるように思える。
 アメリカは九六年八月に「食品品質保護法」と「飲料水安全法」を改正して、この問題にいち早く対応しはじめた。日本では九二年にフタル酸エステルの一種であるDEHP(フタル酸ジエチルヘキシル)が水道水の監視項目に入っている。昨年七月には、環境庁の内分泌攪乱物質研究班が中間報告(9)を出した。しかし今のところ対策はなにもない。

RDFはごみか燃料か?

現状の法規制では有価物として売却できない可能性が高く(国庫補助金によりRDF製造施設を建設した場合)、その場合は無価物の一般廃棄物としての扱いを受ける。(10)

 RDFは廃棄物か燃料か。廃棄物処理法には規定がない。引き渡しが有償なら燃料(有価物)、無償・逆有償なら廃棄物(無価物)と一応は解釈されているようだ。
 「RDF=廃棄物」とすると難点がある。廃棄物なら廃棄物処理法の適用を受け、資格のある処理業者しかRDFを利用できない。昨年十二月施行の基準(表2) が排ガスに適用され、焼却灰の処理に行政の監視義務がある。また域外の移動に色々制約がある。これでは、どこの企業も二の足を踏む。事実RDFの推進者も「廃棄物であると解釈される限り、利用の促進はほとんど絶望的である」(11)と書いている。
 「RDF=燃料」としてみる。安定した燃料ではなく、ダイオキシンが発生するから、高価な設備が必要になる。そこまでして引き取る企業はない。引き取ってみても排ガス対策などしていたら採算がとれない。今RDFを使っているところは、まがりなりにも排ガス対策をしているのだろうか。
 もちろん有償で引き取るといっても、価格はトン当たり一○○○円が相場。自治体が企業に委託している場合、トン当たりの委託料は奈良県榛原町=四万円足らず、東京都多摩市=五〜六万円(輸送料込み)だ。採算割れはやむをえないが、血税ををつぎ込んだ結果が一キロ一円とは泣かせる。
 燃料であるとしてもないとしても、うまくいかない。法改正してRDFを特例にせよという声もあるが、厚生省は「基本的にRDFは推奨するが、廃棄物行政の信頼性の面から、RDFだけ例外を認めるわけに行かない」(12)という。法改正した場合、燃焼灰が産業廃棄物とみなされて、特別管理一般廃棄物の産業廃棄物化が生じる可能性があるからではないか。公害のまき散らしになる懸念が大きい。それだけは認められないとするのは、厚生省の見識というべきだ。  

引き取り手がないとどうなる?

固形燃料が町内(奈良県上牧町)に放置されていたので、ゴミの会と町会議員で確認にいった。・・ゴミ処理は市町村の固有義務になっているが、責任は一体どうなるのだろうか。(13)

   RDFの引き取り先は、現状ではセメント工場と製紙工場が大部分だ。これはアルカリを多用するためダイオキシンが発生しにくいという理由によるらしい。
 ところが、工場名をたずねても回答がない。RMJの榛原事業所(奈良県、以下「榛原」)の場合、「泉南市の製紙工場」というのみ。「湖東」は愛知県の某製紙工場。また兵庫県宍粟郡の計画は「大阪のセメント工場」と説明する。奈良県広陵町の計画では引き取り先が決まらず、装置メーカーが世話してくれると町はいうが、セメントと製紙だけでは買い手探しがいずれ行き詰まる。RDF製造装置の開発にかかった各メーカーは、勢い込んで開発してみたもののRDFの買い手がつかなくて悩んでいる。
 表1 に「減容目的」とあるところでは、売れなくて埋め立てている。三重県四日市市のように操業を停止したところもある。福島県双葉郡大熊町の株式会社サカタ福島支店では、始末に困ったRDFの焼却灰を工場敷地などに埋め立て、住民から廃棄物処理法違反で告発を受けている(14)
 大分県津久見市にある「ドリームフューエルセンター」のRDFを引き受けている秩父小野田セメントは「燃料としての価値はない」(15)と明快だ。おつきあいで引き受けているだけ。塩素の混入したセメントは鉄筋に使えず、「エコセメント」としてテトラポッドなどを作るしかない。脱塩素も研究されているが、余計なエネルギーが必要だ。「こてこて技術」でごみ問題を解決しようとしてもうまくいかない。
 企業の引き取り手がないとすると、今後はRDFを自治体の大型焼却炉やごみ発電所で燃やそうとする傾向が強くなるだろう。しかし簡単にごみ発電所が造れると思うのがどうかしている。よそから毎日大量に運び込んでくるプラスチックごみを歓迎する住民がどこにいるだろうか。三重県の計画は難航しているし、福島県いわき市や栃木県宇都宮市では市民が猛反発している。  

燃やすとどうなる?

製造したRDFは・・既存の焼却炉に投入すると、ますます黒い煙がモクモク状態であったので、ほとんど燃やさなかった。(16)

 RDFの中身はごみだから、燃やすとダイオキシン類その他の有害物質が発生するのは通常のごみ焼却と同じ。RDFを燃やしてダイオキシン濃度を測定したデータが二○近くあるが、きっちり対策を施して平均が○・四ナノグラムを超える。新設炉の基準○・一をクリア出来ていない。最近RMJはRDF燃焼用の小型炉を開発し、富山県の「南砺リサイクルセンター」近くの福祉施設・中学校で使っている。これは新設炉の基準を満たすとしているが、正確なデータがない。しかし濃度の問題は、低温バグフィルターも出現していることだし、「こてこて技術」が解決するかもしれない。
 またRDF工場の乾燥用熱源にRDFを使わず、灯油などを使っている理由については歯切れの悪い説明しかない。排気の問題があるためにRDFを使うなという指示が雲の上からあったという印象を私は持っている。RDFは資源循環型の技術になりえないのだ。
 それでは排気について慎重なのかと思えば、そうでもない。「榛原」では「バーベキューにも使えます」と説明していた。冗談を言ってはいけない。煙モクモクでどうして食べられる? それだけでなく町内のビニールハウスに使っているとも新聞報道されたので、町にたずねたところ、「希望する農家があるので少量渡している。排気や灰の処理については知らない」という。
 かりにダイオキシン濃度が一定の数値をクリアしたとしても、灰をどう管理するかという問題が残る。灰処理について、静岡県企業局が県内市町村にやってくれるかと尋ねたところ、答えは「ノー」(17)。最終処分場の確保にはどこも頭を痛めているから、広域化で灰の量がまとまれば県がやってくれないと困るわけだ。コストもばかにならない。事実、灰の量はRDFでもあまり減らず、実績データでRDFの一二%が灰になる。RDF発電所の計画では日量六○トン。
 セメント固化・溶融固化など、これまた膨大なエネルギーを投入して有害物を管理できるとして、その費用は税でまかなうのか。じわじわ環境中に拡散する可能性はないと言い切れるのか。「エネルギー多消費型の技術の普及を図る方針は恥ずかしい」(18)と批判されても反論の余地がない。

自治体はなぜ頭を抱えているのか?

国がごみを増やすような製品を許しているのがおかしい。公害の出ないものを作るよう企業を指導してほしい。(19)

 一七県と六四市町村・一部事務組合で構成する「RDF全国自治体会議」が三重県知事を会長として昨年六月に発足し、七月に国に対して要望書(20)を提出した。その項目は自治体が抱いている不満を率直に表したものになっている。
 たとえばRDF焼却用の小型炉が必要で、補助制度や炉の開発をお願いしたいと言っているのは、裏返せば小型炉が使えないということ。焼却炉の補助金は九八年から日量一〇〇トン以上の炉に限ることになり、小型炉の建設が事実上できなくなったからだ。北海道の留辺蘂(るべしべ)町のように炉の建設を断念した(21)ところもある。
 ごみ処理のRDF化は広域化とセットになっている。将来は都道府県または地域単位で大型焼却炉・発電施設を作り、各市町村でRDF工場を持つという発想である。
厚生省は小型炉に対する補助金を廃止し、RDF製造施設に対する補助金制度を設けた。これでいくと自治体にとって「大型炉かRDFか」という選択肢しかなくなる。厚生省は自治体の手足を縛っておいて「技術的な信頼性が実証されていない」ものを押しつけたことになる。ごみ行政は地方自治の根幹にある問題ではなかったか。選択肢を奪ってしまうのは、地方自治に対する重大な侵害である。
 当然、多くの自治体から反発が出た。厚生省が出したごみ処理の広域化計画策定の通知に対して、九七年度内に策定できると答えたのは一七道県にとどまった。たとえば、奈良県は「大和平野に人口の九割が集中し、他の地域では大型炉に集約するのは困難」、長崎県は「小規模な自治体が多く調整が困難。百トンや三百トンの大型炉設置は都市部の発想で、郡部に当てはめるのは無理」(22)という。 また、建設中の小型炉が三一都道府県にあるが、いずれも中止しない方針だ。
 これを受けて昨年十二月十九日、自治省が大型でない焼却炉にも交付税・地方債で支援する方針を打ち出した。○・一ナノグラムを満たすという条件付きだが、厚生省の新しいごみ政策が初動段階から破綻したことを物語っている。しかも尻拭いを自治省にやらせている。RDFではうまくいかないことを政府がしぶしぶ認めたということだ。
 RDFに切り替えるとしても現状では燃やせる炉が限られている。ごみ発電の大型炉は簡単には造れない。受け入れ先がなければRDFに切り替えることもできない。八方ふさがりだ。小さな自治体のごみ担当課長たちが頭を抱えている姿が、厚生省の課長さん、見えますか。

RDF化、もうひとつの目的

ダイオキシン問題を利用して広域収集の大義名分を持ち出し、ゴミを田舎で燃やし、都会のダイオキシン排出量を削減するのがRDFの目的らしい。(23)

 昨年九月、千葉県幕張の「ウエステック97」廃棄物見本市を見た化学メーカー技術者は、次のようにいう。
「RDFの開発担当者が各社とも説明にでていた。製造コストが高くて現状では商品価値がなく、RDFは実用化できないと断言した担当者がいた。なぜゴミを加工するのかと質問したら、移動させやすいからという答え。ゴミのままでは持ち込まれる郊外の住民が納得しないが、RDFなら説得しやすくなるということ」。(23)
 実例はすでにある。「多摩市のプラスチックごみを千葉県市川市の業者に固形燃料化と輸送を委託して北海道夕張市に運び、地域冷暖房の熱源として使っている」(多摩市民からの便り)のだ。
「ある政党のしかるべき役職にある人物が十勝にRDF工場を作ろうと動いています。もう数年来の『執念』です。首都圏の建築廃材などの産廃を専用コンテナに梱包して、フェリーで運び、十勝で燃やすそうです」(北海道のジャーナリスト)という話もある。
 行き所がなくなったRDFはやがて「原発」化する。つまり建設しやすい地方を狙ってごみ発電所を造ることになる。能登半島にRDF専焼炉が計画されているのはその先駆けではないだろうか。

「近代ごみ処理」からの脱出

焼却は、周りをごみだらけにしながら生産している産業界に責任逃れの機会を与えるだけのことだ。大量の空気を使って企業がごみの毒性を薄め、環境中にまき散らすためのものである。(24)

 私の住む奈良県に、地元の人が「昭和新山」と呼ぶ数十メートルのごみの山がある。文字通り山のようなごみを排出し続ける生産システムの象徴だ。RDFもその延長上にあることを忘れてはならない。ダイオキシンを問題にするときに、厚生省は「近代ごみ処理」のシステム(枠組み)そのものを問題にすべきだったのだ。
 兵庫県宍粟郡など各地の動きをみると、事態はごり押しでRDF施設を造る方向に動いている。全国にRDF施設が出来てしまえば、もとに戻すのは非常に難しい。今からでもよい。厚生省とRDF関係者に「近代ごみ処理」から脱出する勇気ある第一歩を望みたい。        

月刊誌 『技術と人間』 98年3月号に発表。 別処珠樹

(1)溝入茂『ごみの百年史 処理技術の移りかわり』八八年、学芸書林、四六一頁
(2)厚生省「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」九七年一月
(3)(財)エンジニアリング振興協会『平成八年度 ごみ固形燃料(RDF)化エネルギー利用社会システムの総合評価に関する調査研究報告書』(『平成八年度報告書』と略、『平成七年度報告書』もある)九七年、一五五頁
(4)『平成八年度報告書』一五四頁
(5)ゴミ発電・ゴミ問題を考える会、ホームページ より
(6)『環境の計画』第七巻四号、九七年十月、二二頁
(7)『てんとう虫情報』第七○号、九七年十一月
(8)ロイター、九七年十一月二十四日付
(9)環境庁『外因性内分泌攪乱物質問題に関する研究班中間報告書』九七年七月
(10)『平成八年度報告書』一五四頁
(11)『月刊地球環境』九七年五月号
(12)日本経済新聞、九七年九月一日付
(13)上牧町ゴミ問題を考える会「ゴミニュース9号」九四年
(14)共同通信、九七年六月十六日付
(15)日本経済新聞、九七年九月一日付
(16)『環境の計画』第七巻四号、九七年十月、三九頁
(17)『平成七年度報告書』九六年、資料編七○頁
(18)朝日新聞、九七年十月六日付、中西準子発言
(19)奈良県内ごみ処理施設職員の発言
(20)RDF全国自治体会議「環境負荷軽減と資源循環社会をめざして RDF化及びRDF利用の推進について――国家予算要望――」九七年七月
(21)朝日新聞、九七年六月二十三日付
(22)日本経済新聞、九七年十月二十日付
(23)化学メーカー技術者の筆者宛私信
(24)ベルギーの焼却問題ホームページ より


このページのURLは http://www.kcn.ne.jp/~gauss/rdf/faq.html
更新 98/03/12