98年11月3日 ローマ発 ENS スザンナ・ヤコナ・サラフィア
この研究は、ヨーロッパのごみ埋め立て処分場21か所の近隣住民を対象としている。調査地域は、アントワープ(ベルギー)、リヨン(フランス)、フュン県(デンマーク)、トスカーナ地方(イタリア)、それからイギリスではロンドンのノーステムズ地区西部、北イングランド、スコットランドのグラスゴー。最も多発しているのは心臓隔壁に異常がある心中隔欠損症で248人。
これまでにも米国で二つの研究が行われ、染色体由来でない先天障害の危険性が高まるという、同様の結論を出しているが、この研究はそれを裏付けることになった。米国の研究は、ナイアガラ瀑布のラブカナル(運河)で起きた有名な汚染事故の後、1984年と85年に行われた。42年から、フッカー・ケミカル社は使用されなくなっていたラブカナルに2万2000トンの化学物質を投棄した。都市ごみもここに廃棄された。53年、投棄地点を土で覆い芝を敷いた。しかし、70年代までに、近隣住民の間に流産や出産異常、神経系の異常などがあいついだ。
米国の研究では、埋め立て処分場の近くに住む母親から生まれた子供には先天障害のリスクが高まるという見解が示されたが、リスク・パターンははっきりしたものではなかった。
それから14年以上たって行われたヨーロッパの研究が米国の研究結果を裏付ける形となった。ただし、有害物質の廃棄と先天障害の因果関係は、科学的にではなく統計学的に証明されたにすぎない。
「われわれの研究結果は、埋め立て処分場がもたらす環境リスクや健康リスクについてさらに調査を進め、もっと体系的な環境・健康調査システムをヨーロッパ全体で確立する必要があることを示している」と、プロジェクトリーダーのヘレン・ドルク Helen Dolk 博士は述べている。
ユーロハズコンの研究者たちは、埋め立て処分場が存在する地域の出生記録で先天障害を調査した。それによると、87年から93年までに処分場の半径7キロ以内に住む母親から1089人の先天障害を持つ子供が生まれている。さらに、3キロ以内に居住する場合と、3キロから7キロの間に居住する場合を比較すると、前者のリスクは33%高いことが分かった。
「われわれの研究では、処分場周辺の住民は、神経管の異常、心中隔欠損症、大動脈・大静脈の異常などの健康リスクがかなり高かった」。ドルク博士や彼女の共同研究者たちはこう記している。
ユーロハズコンの報告書によれは、廃棄物最終処分場は健康に害をもたらす可能性がある。「ごみ埋め立て処分場の近くに住む人は、空気や水、土壌中に出てきた化学物質にさらされるおそれがある。排出ガスやほこり、ほこりに付着した化学物質が処分場から拡散して大気を汚染することもある。特に処分場の操業中に汚染が起きる。その地域の表流水・地下水が汚染され、それらが飲料水やレクリエーション用の水を汚染する可能性もある。化学物質で汚染された空気や水、土壌は、その地域で生産・消費する食物を汚染することにもなる。こうして、処分場が地域住民や子孫の健康に害を及ぼす危険がある」 。
ユーロハズコンの研究者たちは、「将来、埋め立て処分場の設計、場所の選定、操業をおこなう時、健康リスクの可能性に関する情報を生かすべきだ」と勧めている。
ユーロハズコンが選んだヨーロッパの7地域で、先天障害の内訳は、イギリス北部の436人、ロンドン・ノーステムズ地区西部の60人、グラスゴーの168人、トスカーナ地方の227人、アントワープの108人、リヨンの35人、フュン県の47人となっている。
研究班のメンバーは、ヘレン・ドルク、マーチン・ブイヘイド、 ベン・アームストロング、レオノール・アブラムスキー、ファブリツィオ・ビアンキ、エスター・ガーネ、 ベラ・ネレン、エリザベス・ロベール、ジョン・スコット、デイビッド・ストーン、ロマーノ・テンコーニ。