3回生の系統講義を受け持って  
昨年に引き続き、2014年6月4日、大阪医科大学の3回生に、「科学的に考える」という題で、2時間の講演させていただく機会をいただきました。後半の1時間は、最初の講義内容を含めて、スモールグループでの討論を企画しました。下記が講演のハンドアウトです。

http://www.kcn.ne.jp/~igakan/2014/OMC2014.pdf

大阪医科大学では昨年から国家試験の成績がわるかったため、今年から講義に出席を義務つけています。私は、大学側に、「学生の出席義務なくして自由参加にして欲しい」 と話しましたが、不可とのことでした。講義する私としては、学生に出席を強要することは自分の講義に魅力がないと宣言しているのと同じであり、とっても情けないことです。過去に行った比較的大人数を相手での大学などでの講義では、「出席したことにするから、私語したり寝たりするなら、一生懸命やっている学生の迷惑になるの出ていってほしい」ということをいつもいっていましたが、今回も旨を話しました。

昨年は50名くらいの参加だったのに、出席義務となったためか、今回は教室いっぱいで90人くらいの学生が出席していました。

今回の講義では、いかに論理的に物事を考えるか、考えて学ぶことは楽しい ということを気づいて欲しく思って行いました。講義の形式は、双方向性でしたが、質問に対する学生の返答にはもうひとつ物足りなさを感じました。

講義後半の1時間で、「新しい試薬の感度・特異度を求める方法」、「間違った薬剤の服用で低血糖をおこした例から、どのような危機管理をするか」の2つのテーマについて6人ずつのスモールグループで議論して、発表してもらいました。90名の教室で、順番に私が質問すると、きちんと答えられない(人前で自分の意見をいうような訓練がない?)学生が多かったでしたが、スモールグループにおいての私の質問には、比較的論理的に答えることができていました。人の前で自分の意見を言えるということに関して、改善の余地があるように思いました。

この教室では、講義のスライドが席でみられるように、各席にPCが備わっています。そのPCからネット閲覧が可能なためか、スモールグループでの討論の時、複数の人間がネットでゴルフゲームしながら討論に参加しているのがわかりました。学生に対する講義においては、学生と講義者のお互いがお互いを尊重しなければいけないと思っています。ネットゲームしながら講義を受けるということほど講義者に失礼なことはありません(と私は思います)。今回の講義では、それができていなかったのが判明し、非常に残念でした。彼らにとっては、出席することが優先順位として高かったという表れでしょうか?大学から強制的にネット禁止にしてもこの状況は改善しないように思います。この事実の背景因子を分析、改善しなければいけないと思います。

その一つとして、大学側と学生側の信頼関係が薄らいできているのではと思いました。成績が悪いので出席を強要、出席さえすればOK。という関係です。学ぶ、新しいことを知ることの楽しさを理解させる必要性を痛感しました。単に記憶するではなく、講義の目標は何なのか、どうやっていつまでに習得するのか、現時点で到達目標にどれくらい達しているのか、残りのものは何で、どうやって目標の100%にするのか、ということを常に考える習慣をつけることです。

私なら、このような系統講義はなしにして、スモールグループでお互いが考えられるような議論をおこない、お互いの立場の違いを尊重なることがまず重要であると思いました。(系統講義がいまだに大阪医大で残っている理由が人員不足なら、それを補うような解決策が必要です)ひとクラス30人くらいに限定で、講義の目標などをきちんとレジメをあらかじめ発表し、学生に選ばせたらどうだろうか?(家庭医療学会の年次勉強会のようなイメージです)。

教育の充実は、長期的には大学のためであり、日本の医療をよくするということでは最重要です。今回、私の話を聞いていただいた学生さんがすこしでも、科学的に思考できるようになり、物事を深く考えられるようになればとってもうれしいです。

講演する機会を与えていただいてありがとうございました。 2014.6.8