循環器疾患QA

血圧が安定しないときの精神安定剤の使い方と、なかなか血圧が下がらないときの薬剤選択のポイント

高血圧の治療の目的は、平均血圧を長期間下降させることにより、心筋梗塞、脳卒中といった生活習慣病の発生率を低下させることです。高血圧症患者に対する医師の仕事は、どの降圧剤を投与するかということではなく、治療が必要である患者を選択して治療目的をその患者に納得させることです。長期的にみれば効果があっても、短期的な効果は期待できないので、治療不可能な癌を有する中等度の高血圧患者に対しての治療は不要とも考えられます。

治療は減塩、体重の減量、運動に加えて薬物療法から成り立ちます。前の3つを患者に説明しないで、いきなり薬物療法のみというのはいただけません。

血圧は1日の内で変動するのが通常ですので、1回のみの高血圧は治療の対象とはなりません。高血圧は諸症状の原因とされやすい病態です。たとえば、吐き気やめまいに対する正常な反応として、血圧が上昇している例も多々あります。このような血圧上昇に対して治療することは問題であると思います。同様に、痛みや興奮のために、一時的に180-200mmHgになっても、原因があるので一時的な降圧剤の服用というのは意味をなしません。

家で、頻回に血圧を測定し、低いと安心し、高いとパニックになる人がいますが、元来、血圧測定の意義はなんでしょうか。それは、医師の診察までにいろいろな部署を通り、待ち時間が多い病院では高かった血圧が、リラックスできる家で測定するとそれほど高くないというということを確認するためです。病院では緊張するために200mmHgくらいあった人が、家では130mmHg位のこともあり、そのような患者に強い降圧剤を投与されれば立ちくらみの原因にもなります。家の血圧が180mmHgになったからといって、すぐ降圧剤が必要なのではないのです。

血圧上昇の原因として、精神的ストレスが多いと考えたときに安定剤を使用することもあります。安定剤のみで血圧がコントロールできればその旨を患者に説明し、無治療で問題がないことを説明し、納得させます。精神的緊張がつよい例で外来診察時に頻脈傾向であれば、β-遮断薬と安定剤の組合せはかなりの効果が期待できます。

プライマリケア医は、高血圧の治療目的を患者に説明でき、2−3種類の降圧剤に熟知していることで十分です。それゆえ、多剤併用してもなかなか血圧が、特に拡張期血圧が下降しない例に対しては、循環器専門医に紹介すべきであると思います。

 

 

2001-8