ニトロ剤の上手な使い方と専門医への紹介のタイミング

ニトロ剤は、末梢血管(静脈と動脈)を拡張させることにより、左室容量を減少、血圧を低下させ、その結果として、左室壁応力を低下させます。加えて、冠血管拡張作用により冠血流量を増加させて、両者あいまって心筋虚血に対して効果があります。

ニトロ剤が効果があるような例に対しては、超高齢であったり、併存する疾患が重篤でない限り、基本的には冠状動脈造影を行いうる施設に紹介することが望ましいと考えます。我々が、ニトロ剤の頓用処方のみで経過観察している場合は、1)狭心症の可能性は少ないが完全には否定できない例、2)異型狭心症が疑われるが、発作の頻度がきわめて少ないという例、に限定されます。一定の運動で狭心症が生じて、ニトロ剤を時々服用していた例が、より少ない運動量や安静時、断続して症状が出現すれば、できるだけ早く専門病院を受診するように説明します。なぜなら、これは安定狭心症から不安定狭心症の状態に変化したものであり、急性心筋梗塞を生じないための濃厚治療が必要となります。

ニトロ剤が原則禁忌である肥大型心筋症や大動脈弁狭窄症においても、狭心症と同様の症状を呈することがあるので、診断をつけないで他人のニトロ剤を軽々しく使うことは好ましくありません。

初めての服用時では、特に高齢者では血圧低下を考慮して、横になってから舌下するように指導しています。狭心症の患者で発作が減少・消失すれば、ニトロ剤に対する耐性が生じないように、一時的に薬を中止します。

また症状が出現すれば、再度薬を増量しますが、そのような場合にもまず冠状動脈造影検査をすすめます。プライマリケア医は、カテーテル等を含む治療の選択がきわめて広くなった虚血性心疾患に対して、生涯研修の一環として「2001年における冠状動脈造影の適応」についてある程度の知識は必要です。