私は昭和53年に大阪医大を卒業し、大学病院での2年間の初期研修後に、広く内科一般を実践できる医師を目指して、3年間の天理よろづ相談所病院の内科ローテートコースに応募し、終了しました。その後、同病院に循環器内科医として勤務し、同時に研修医教育を長年担当していました。循環器の分野では、PTCAも施行していましたが、特に心エコーに力を注いできました。詳しくはホームページに記載してあります(http://www.kcn.ne.jp/~igakan/)。

2001年4月にFellowship of American College of Physician(アメリカ内科学会上級メンバー)に選ばれたことを機会に、私が生まれ育った地である西宮で父親のクリニックを継承することになり、標榜を内科・循環器科としました。

開業医に望まれることは、診察や薬投与の待ち時間が短いということが絶対的に必要な条件です。そのため、クリニックでは、心電図、レントゲン装置、ホルター心電図、カラードプラー心エコー装置を装備し、循環器疾患に対して迅速な診断が可能なようにしました。また、カルテの閲覧や前回のデータ検索、薬の処方を早くするために電子カルテを導入しました。

病院勤務していたころに、患者情報を各検査室でその都度に手入力されていました。この転記という作業は、単純作業であり間違いのもとです。このような単純作業は、コンピューターが最も得意とするものです。大病院では入力する医師のキーボード操作能力が一定でないため、またデータに対するsecurityがしっかりすることが難しいため電子カルテはほとんど導入されていません。しかし、医師が1人か、またはせいぜい2人である診療所ではその導入が簡単です。電子カルテのよいところは、同じことを何度も書く必要がなく転記によるミスがないこと、データ検索ができることです。加えて、診療時の入力のみでレセプトを出せるような機能があればよいと思われます。

私が導入したダイナミックは、茨木市の開業医である吉原先生がマイクロソフト社のアクセスを使って開発したもので、ヒタチソフテック社から、年間20万円という安価にて提供されています(http://www.iijnet.or.jp/hist/dyna/index_prof_dyna.htm)。ネット上でのサポートが多いため、導入の条件として、管理者にコンピューターに対するある程度の知識が要求されます。既成のレセコン機と異なり、メイリングリストで発言された意見が次期バージョンには反映され、ある程度自分のクリニック用にカスタマイズできます。紙カルテとして、表紙、採血検査結果、紹介状はファイルにいれて残していますが、ほとんどはデジタル管理しています。再診時では、患者番号を入力すればたちどころに診察机の上でカルテをみることができ、心電図 レ線はコンピューターの画面上で前回のものと比較でき、過去にいつ、どんな検査を施行したかもすぐに検索できます。カルテをきちんと記載(入力)すれば、自動的にレセプトをプリントしてくれます。「保険請求はレセコンおよび職員任せ」で、保険診療に疎い医師が多いですが、ダイナミックでは医師自身が所見や検査申し込みを入力しなければならないため、保険点数、慢性疾患の算定条件等に強くなります。もちろん、開業前にニチイ学館の通信教育をうけましたが。

電子カルテのもう一つの長所として、受付の職員の仕事を著明に減少させることです。その余った時間を患者さんへの説明や他の仕事をするために使えます。新しい事務職員でも、ダイナミックを用いた再来患者のカルテをだすことは、1−2時間もあれば覚えられるでしょう。アクセスの内容を覚えることは必要なく、基本的なコンピューターの使い方、キーボード入力ができれば十分です。現在では、診察室と受付の2台でのLANですが、バックアップとして予備に2台のデスクトップ、1台のノートブックをおいて、最悪の時に備えております。

一般市民に良質な医療を提供するためには医学教育は欠かせません。学生教育の場所であり、多くの初期研修医が勤務する大学病院では特殊な疾患をあつかうという現実の中で、学生、研修医教育に開業医が参加していくべきであり、実地医家の診療レベルを高めるために、プライマリーケアとしての生涯教育プログラムの充実化は重要です。患者さんと良好な医師―患者関係を築いて、1−2年後には、そのようなことを実践できるクリニックにしていきたいと思っています。

私は、「(循環器)専門医であってもまず一般内科医であるべきである」、と日本における偏った専門診療に異議を唱えてきました(http://www.kcn.ne.jp/~igakan/essay.html)。しかし、私自身、高度専門病院に長年在籍していましたので、開業医として今後いろいろご指導お願いすることになると思いますが、よろしくお願いいたします。

 

2001-9-30

663-8245     西宮市津門呉羽町3-9

伊賀幹二 

0798-39-1516