目次

1心臓疾患の診断

2心蘇生法(CPR)

3心臓カテ−テル検査

4不整脈

 

 

1 心臓疾患の診断

心臓疾患の診断は1. Precise History、 2. Complete Physical Examination (PE)、 3. 胸部レ線、 4. Electrocardiogram (ECG)、 5. Echocardiogram の主なる5つの補助手段から成り立つ.その他の補助手段は、核医学検査、MRI、CTがある.各々の限界を考慮し、総合的に心臓を診断する.この5つないし8つの補助手段を用い、およその心臓の診断をつけ(tentative diagnosis)、最終診断の方法である心臓カテーテル検査にて、どの心腔でどの方向から造影すればよいかを検討する.しかし、心臓カテーテル検査が1-5の補助手段に対して必ずしも勝るということではなく、他の検査が心臓カテーテル検査より有用な情報を与えてくれる例も多い.ドプラ心エコ−図、シネMRIおよび超高速CT(イマトロン)の普及により必ずしも弁膜症に心臓カテーテル検査が必要ではないという時代になった.

症例のpresentationは、上記の順序にそい要領よく3分で行い、その症例に対するsummaryをし自分の考え方 (discussion) を約2分 (計5分)で述べる.新人の時代にこのようなpresentationの習慣をつけるような研修をつむことが大切である.

1-1 History(病歴)

例えば、虚血性心疾患の診断は病歴につきる.狭心症例の心電図は日本人で約50%位が正常であり、心電図を持ってきて「狭心症はないですか?」との質問は愚問である.病歴が狭心症らしくないときは負荷心電図を行なうこともあるが、典型的な胸痛があり不安定な状態であれば狭心症の診断は病歴で十分である.

弁膜症例では、手術する上で重要な情報であるNYHA心機能分類は患者と共に歩いたりすることにより決定する.病気を知らなければよいHistoryはとれない."胸痛"とひとことでいっても人により訴え方は異なるので、新人時代より確定診断がなされた症例より話をきいて自分の病歴聴取の能力をつけるのがよい.

1-2 Physical Examination(理学的所見)

以下のごとく順序よくとり、自分がとった所見が間違っていないかを常にProper Cardiologistに確認し、心エコ−図検査または心臓カテーテル検査がなされた症例では、自分がとった所見はなにをみていたのかを自己勉強することが大切である.正常例を把握して初めて異常例の理学的所見が理解できる.はじめは理学的所見をとるのに1-2時間を要しても、慣れれば5分でとれるようになる.初めのtrainingが肝腎であるということはいくら強調しても強調しすぎることはない.

バイタルサイン、general appearance を記載し、末梢動脈はすべて触知可能かをみた後、視診、触診、聴診にて所見をとる.打診は現在ではあまり行なわない.聴診はあくままで心臓の理学的所見の一部にすぎず、聴診から診察をはじめてはならない.

1-2-1 視診

四肢のチアノ−ゼ、およびバチ状指の有無をみる.患者の右側に位置し、45度程患者の頭をあげて診察する.

内頚静脈の拡張はないか、あればどの波が優位かを判断する.内頸静脈が観察しにくいときは、外頸静脈を観察する.

心音のS1に一致すればa波でありS2に一致すればv波である.頚静脈波ではa波とc波を分離することは不可能である.右室圧負荷では大きなa波がみられ、二峰性でa波とv波が同等に大きければ貧血、甲状腺機能亢進症、心房中隔欠損症といった右心系のhyperdynamic state が考えられる.TRでは、v波ではなくcv波であり二峰性にならないのが特徴である.CP、RCM、右室梗塞ではrapid Y descent が見られる.頚動脈の拍動との鑑別は、軽く頚部を圧すると静脈波は消失するが頚動脈の拍動は消失しないことにより鑑別できる.

前胸部では胸廓の変形の有無をみる.bulgingの存在は、骨の発達が未完成な時期から心拡大が存在したという証明である.

1-2-2 触診

内頚動脈の立ち上がりをみてtardes、bisferience、celar等をチェックしたのち前胸部を触診する.

1) RV heave (parasternal heave)

胸骨左縁で手掌の大きさで汎収縮期にもちあがることをいう.RV overload、または急性のMRにおける左房の拍動を意味する.Ebstein病等で右室の機能が低下している時右室が拡大していてもRV heave はみられず、これをquiet heartとよぶ.

2) LV heave (LV thrust)

心尖部で、手掌の大きさで汎収縮期にもちあがることをいう.左室拡大を呈する種々の疾患でおこりえる.AS例で左室の内腔の拡大がなければLV heaveは生じないことが多い.

3) PA pulsation

肺高血圧、右室の容量負荷等でみられる.

4)S1、S2、OSの触知

心音を触知すればそれが亢進していることを意味する.

5) 腹部、四肢について

肝臓が何cm触知するか及びTRによる肝拍動の有無をみる.腹部大動脈の拍動は心窩部で最大であるが肝臓の拍動はそれより右側であることにより鑑別する.潜在性の右心不全を見つける古典的なhepato-jugular refluxは最近ではあまり用いない.また静脈圧がすでに高い症例にはこれをすることは意味がない.下肢にてpretibial edemaの有無をチェックする.

1-2-3 聴診

心音図は心尖拍動図、頚動脈波、M-mode心エコー図と組合わすことにより心音の解析が可能である.また収縮期雑音では、収縮期のどのphaseか、IIAの前で終っているかということが心音図で判断できる.しかし、自分の耳で聴取できない心雑音および心音を心音図で記録するのは無理であり、存在診断は人間の耳のほうが数段勝る.

S1、S2の判断は簡単なようで間違っていることもあるので頚動脈または心尖拍動を同時にふれ、収縮期、拡張期を区別する.心拍数が150/分以上では収縮期、拡張期の区別はきわめて困難である.心臓のeventとtime delay のあるradial arteryでそのタイミングをとってはならない.

聴診するは体位は仰臥位、立位、左側臥位の3つで行なうのが望ましい.なぜならMSのrumbleは左側臥位で聴取しやすいし、軽いAR及びPRの雑音は立位で前屈することによりはじめて聴取されることがあるからである.まず、心尖拍動をふれ、心尖部にベル型聴診器をあて順次4LSB、3LSB、2LSB、2RSBと聴取していく.心尖拍動が左に移動しているときに通常の心尖部と思われる所から聞き始めると重要な心雑音、心音を聞き逃すことがある.

心音では以下の如く順序よく聴取する.S1は正常か、S2は normal split か、singleではないか、S2(IIA)の減弱はないか、S3、S4またはextra-cardiac soundsは聞こえないか.

S1の大きさが心拍ごとに変化すれば房室解離を意味する.S1が2つに聞かれたらS1+ejection click (sound)、S4+S1、S1の生理的分裂の可能性がある.ejection click(sound)は若年者であればvalvular PS、congenital ASで聴取され、高齢者であれば大動脈弁輪の拡大、種々の原因による肺動脈弁輪の拡大で聴取される.大動脈弁由来のclick は心尖部から4LSBにてよく聴取され、肺動脈弁由来のclickは2LSBから3LSBにて聴取される.

S2が2つ聴取されればS2の分裂、S2(IIA)+OS、巨大なmid systolic click+S2(IIA)の可能性がある.IIPがあまりにも大きいとIIAが相対的に小さく聞こえS2の分裂がないように聞こえる.S2の分裂は通常は0.08sec.以上にはならない.OSは通常IIAより0.06sec.以上遅れ3LSBまたは4LSBで最強でありIIPとは最大に聴取される部位が異なることにより鑑別する.S2のparadoxical splitはC-LBBB例で聞かれる.ASでは実際には収縮期雑音が大きくIIAが減弱するのでparadoxical splitと認識するのは難しい.

S3、S4は低音ゆえにベル型で軽くあてて聴取するが、S4は聴診するより触診のほう判断しやすいことが多い.

Levineの心雑音分類ではthrillがあれば4/6度以上、thrillがなければ3/6度以下の音の大きさと定義している.心雑音があれば、どこで最大に聞かれ収縮期または拡張期のどのphaseか、右内頚動脈に伝達するか、また背面からも必ず聴診する.Af、PAC、PVC等によりR-R間隔が変化すれば雑音の大きさがどう変化するかに注目する.収縮期雑音がS2を越えればtrans-systolic murmurと呼ばれ大動脈弁や肺動脈弁より抹消の狭窄が考えられる.老化した大動脈弁より発するflow murmurとMRのmurmurは時には鑑別が困難であるが、R-R間隔の増大で雑音が大きくなれば大動脈弁由来の雑音であり、変化しなければMR由来の雑音が考えやすい.吸期で増大する雑音は右心由来といわれるが実際には吸気時に胸壁と心臓の距離が遠くなるために小さくなる例もある.ARで心不全が強ければLVEDPの上昇のためgallop sounds と拡張早期雑音のみしか聴取できないが、心不全が改善する汎拡張期に聞こえることが多い.まず、自分が聴取した所見を記載し、Proper Cardiologistにチェックしてもらい覚えるのが上達する早道である.

1-3 胸部レ線

これも順序だててよむことが大切である.心拡大、肺うっ血を読影するためには立位で十分な吸気をしていること、また肺胞が正常であることが必要条件である.なぜなら、肥満した中年女性では不十分な吸気のため心拡大があるといわれている例が多いし、肺気腫例では肺うっ血があっても肺水腫となるべき肺胞が破壊されているため典型的な肺水腫の像にはならず胸水のみしかみられないこともある.alveolusが正常であれば肺うっ血は胸部レ線が最もとらえやすい.これに反して、胸部レ線上正常であっても心エコ−図で左室が著明に拡大していることも例外的ではない.成人で胸部レ線上、心拡大があればどの腔の拡大があるのかということを常に考え、心エコ−図による確認をとるべきである.

ポータブルの胸部レ線と通常の胸部レ線では、管球よりfilmまでの距離が異なるため心臓のsizeを比較はできない.同様に前回の胸部レ線と比較する時は、撮影条件、特に横隔膜の位置が等しいかをみることが大切である.それなくしてCTRその他の比較は困難である.心不全時に胸部レ線上心拡大がおこるが、これは呼吸困難のため吸気が十分にできないことも要因の一つであると思われる.

胸部側面filmでは大動脈弁および僧帽弁輪のcalcificationに注目する.

1-4 Electrocardiogram

これも理学的所見のとり方と同様に順序だてて読む.まず、リズム診断から始まりQRS、ST部分、T波の形から心臓の生理状態をみる.P波のrateとregularityをみ、例えpacemaker rhythmでもNSR with all pacingとかNSR with complete blockとかのリズム診断をまず行なう.心電図診断は、心臓の診断ではなく心電図のみでs/oまたはr/o ischemic heart disease はいうべきでない.私はリズム診断以外の使うtermは限定している.現在の心電図のcriteriaは、死亡時に収縮末期に固定されるといわれる剖検心との対比により40年も昔に作成されたもので、断層心エコー図による新しい左室肥大、左房肥大、右室肥大、右房肥大のcriteriaを作成すべきである.自分がみた異常心電図の症例の心エコー所見や心カテーテル検査所見をてらしあわせての自己学習がすすめられる.

1-4-1 心電図のcriteria

1)LVH by voltage criteria (high voltage in left precordial leads):

SV1+RV5>40mmまたはRV5>25mmでST部分、T波の異常を伴わない.

2)LVH:

SV1+RV5>40mmまたはRV5>25mmでST部分、T波の異常を伴う.

3)LVH with or without additional ST & T change:

voltage criteriaのLVHに著明なSTの下降と深い陰性T波を伴う.

4)myocardial ischemic pattern:

voltage criteriaは満たさぬが、V5-V6等左室の誘導にて1mm以上のSTの下降が見られT波が逆転する.軽度の左室心筋肥大が一番のその原因であることが多いが、総合的にみて正常な心臓であることも多い.

5)nonspecific ST T change:

junctional ST下降とflat Tをいう.

6)脚ブロツク:

incomplete RBBBは右室負荷心電図で異常心電図であるが、C-RBBBには通常、心臓に形態的異常はないことが多い.一方C-LBBBもほとんどが刺激伝導系のdegenerative changeによるものが多く心機能としては正常である.虚血性心疾患でC-LBBBの合併例は重篤な例である.incomplete LBBBは心室内伝導障害の一つの表現型で心機能としては極めて悪い例が多く、DCMはこの型が多い.

7)その他は通常のcriteriaに準ずる.

RVに関しては心電図はsensitiveではなくs/o RVH程度にとどめる.

心電図から心筋梗塞の範囲はある程度推定できるが、V1-V3でT波の軽度上昇のみで大きな後壁梗塞もありえ、posterior MIに対する心電図のsensitivityは低い.また典型的な胸痛で心電図が正常であっても心筋梗塞のこともありえる(これは例外的だが、Cxの末梢のlesionは心電図に表われないことが多い).正常心電図でも軽度の求心性肥大は例外ではなく、肥大に対するsensitivityは断層心エコ−図より低い.

くり返すが、心電図が正常ということと心臓が正常であるというのは同一ではない.最近popular になってきた心電図のコンピューター 診断は心電図診断であって、心臓の診断ではないということを理解すべきである.

1-4-2 負荷心電図と24時間心電図

一般に虚血性心疾患の診断は安静時の心電図では行わず、病歴が最も大切である.心電図が正常でも病歴が明確であれば虚血性心疾患である.したがって、虚血性心疾患における負荷心電図の適応は、1)虚血性心疾患が疑われるがいま一つ確定的ではない時、2)不安定狭心症が安定した時にどの程度の負荷で虚血が誘発されるかを判定する時、3)診断のついた虚血性心疾患の患者の外来での運動能力の評価をする時である.不安定狭心症と考えるなら運動負荷テストは禁忌である.安静時、すでに軽度のST部分、T波の変化のある例や、陳旧性心筋梗塞例での運動負荷心電図の評価は極めて難しい.日本人では狭心症の病因にvasospasmの関与が大きいので十分な薬物療法下では負荷心電図で陰性であっても虚血性心疾患の存在を完全には否定できない.また、Masterの二重負荷テストは標準的だが負荷量が少なく虚血性心疾患の否定のscreeningには使えない.

病歴上vasospasticなものを疑えば、薬物投与の状態で午後より運動負荷を施行し、陰性なら、CAG時にエルゴノビン又はアセチルコリン負荷を考慮する.

狭心症以外の症例では運動負荷テストは運動能力の客観的評価になりえる.また不整脈を有する例で運動負荷時にその頻度の増加の有無を調べることが可能である.

方法はMaster 負荷試験とTreadmill 負荷試験、自転車Ergometer試験がある.Master負荷心電図は負荷中に何回も方向転換しなければならず高齢者には適さない.自転車Ergometer試験はstress scintigram時に使用するが下肢の運動が主であり、dynamic exercise ではない.Treadmill 負荷試験は動くベルトの上を歩かせ、多段階的に負荷量を増加していく方法であり、少量の負荷量から始められるという長所がある.

病歴上、普通に年相応に生活していた症例はBruce法で開始し、運動能力の低下が考えられる症例や急性心筋梗塞後の症例ではmodified Bruceで開始する.

24時間心電図は24時間連続してモニターする心電図であり、この間患者に行動を記録させて心電図と照らしあわせ、不整脈と心筋虚血(ST部分、T波の変化)を調べる.従って、1)病歴上は不整脈が疑われるが通常の心電図では発見できない時、又は不整脈の頻度を調べる時、2)心筋自体の変化がある疾患で不整脈の有無を調べる時、3)虚血性心疾患のsilent ischemiaの有無を調べる時に用いる.ただし、ST部分、T波の変化は体位等により非特異的に変化するので判定困難な時がある.

1-5 Echocardiogram(心エコー図)

種類としてM-modeエコー、B modeエコー(断層エコー)、pulsed Doppler、カラー Doppler(断層ドプラ)、CW Doppler(連続波ドプラ)がある.前2つは1978年ぐらいから、後3つは1985年頃から臨床に本格的に使用されるようになった.近年は、経胸壁心エコー図だけではなく食道心エコー図も普及し、ルーチンとなってきた.

1-5-1 断層心エコー図(B mode)およびM-mode心エコー図

M-mode 心エコー図は断層心エコー図をorientationとして、心臓の一次元の情報の横軸に時間軸をいれたものであり、断層心エコー図は二次元として心臓を見ている.患者の体型、状況によりpoor subjectが存在する.簡便にreal timeとして心臓を検査できるがapproachするエコーwindowが狭く全体像としてはMRI、CT に劣る.三次元情報を二次元に投影した左室造影と異なり、断層心エコー図はその各々の断層面でのmotionを評価している.故に左室壁運動については多方向からの断層図がとれたときにはじめてその評価が可能である.また、断層心エコー図は弁の形態を直接にみれるので弁膜症のetiologyに絶大な威力を発揮する.例えば、PTMC可能かとのMSの弁下組織の変化および弁のpliabilityについては断層心エコー図のほうが左室造影より有用な情報を与えてくれる.エコーbeamが適切な角度であれば、各心腔径、壁厚につき正確に測定できる.通常のM-mode心エコー図の記録位置では左室が正常の壁運度であっも、断層心エコー図で多方向からみると壁運動が低下していることもありM-mode心エコー図のみで左室壁運動は評価できない.M-mode心エコー図は主に記録、計測、PCG-UCG(心エコー図、心音の同時記録)に用いられる.左室腔、左房腔の1mmや2mmの増減を論じれないが、5mm程度の腔の増減は論じてもよいと思われる.

左室はvolume overload、pressure overload に対し各々eccentric hypertrophy、concentric hypertrophy というadaptationを行う.そのadaptationを断層心エコー図から判読し診断することが多く、カラーDoppler心エコー図の出現以前の時代では、弁膜症はMS例以外はcompatible with XXXということが多く、左室の拡大及び左室壁の肥厚の程度により弁膜症のseverityを評価してきた.しかし、ドプラ心エコー図により左室の拡大の極めて少ないMR、ARが発見される.これらは弁膜症の軽症とも考えられるが症状のある例もあり、最終的には症状を加味して心エコー図の評価を行う.

虚血性心疾患に対しては心エコー図は心臓の壁運動異常及び壁のthinningとしてとらえられ、心筋梗塞例ではその範囲が評価できる.また左室内血栓も発見される.急性心筋梗塞では、左室壁運動異常は時々刻々と変化していくのでserialな検査が望まれる.心筋虚血以外の諸種の metabolic eventにより壁運動が一過性に低下する例もあり、左室壁運動低下をきたすすべてが虚血性心疾患ではなく、これらの症例にもfollowの心エコー検査が必要である.

肥大型心筋症は心臓カテーテル検査ではなく、心エコー図にて診断する.しかし、APHでは心エコー図にてapexがみえなければ診断については否定も肯定もできないのである.

断層心エコー図及びM-mode心エコー図により、解剖学的情報が得られるが、ドプラ心エコー図で見られるような血流の情報はない.コントラスト心エコー図は小さなbubble含んだ5% D/Wを静脈より注入することにより血流の情報が得られる.ドプラ心エコー図が普及した現在でもL-SVCおよびR-L shunt の有無に関してはカラードプラ心エコー図より優れていると思われる.近年、経静脈的にアルブミン製剤を用い、より良好なTR、ASのFFT波形及び左室左房の壁辺縁の描出が可能となった.

1-5-2 Doppler 心エコー図

断層心エコー図の出現で循環器の領域にDoppler心エコー検査が再び登場してきた.パルスドプラ心エコー図では、断層心エコー図内の任意の1点の血流の情報を得ることができる.しかし心内を細かくmapしなければどこにどのようなflowがあるか不明であったが、カラードプラ心エコー図がそれを可能にした.CWドプラ心エコー図はパルスドプラでは速すぎておりかえしす(aliasing)血流速度の測定が可能である.これは超音波beam内の最大流速を測定しており、パルスドプラで可能であるsampling point の指定はできない.

カラードプラ心エコー図はいままで見れなかった血流をみるということで革命的なものであるがあまりにも多い弁逆流がみられ、臨床家を混乱させている.どこまでが生理的でどこまでが異常かの判断が重要である.mildなTR、MR、PRは若年者でもかなりの率で見られる.ARは若年者では見られず、70才以上では70%くらいに見られる.ARの存在に関しては、カラードプラ心エコー検査は、聴診所見、M-modeのmitral valveのdiastolic flutteringよりsensitiveである.これらの"Doppler AR"、"Doppler弁膜症"は病気というより生理的な老化現象と思われる.

聴診中心の診断学では新生児の先天性心疾患の罹患率は約0.5%だが、これをカラードプラ心エコー図でみるとVSD、ASDの症例はもっと多くみられる.それらの症例ではVSD、ASDは存在するのだろうけれど乳児期に自然閉鎖するのである.これら心雑音の聴取されないカラードプラ心エコー図でのみ発見された症例といままでいわれていたものを同一次元ではdiscussはできない.ASDについては、Doppler心エコー図の出現でASDを通過するflowがとらえることが可能なため、きわめて存在診断に対しsensitiveになってきた.

大動脈弁、肺動脈弁はskeletonが固いため心不全で一過性にAR、PRは出現しないがTR、MRは心不全時に弁輪が拡大するために簡単に出現する.これらのDoppler弁膜症は例えsevereであってもその心不全の原因をそのDoppler弁膜症に求めないことが大切である.

CW Dopplerではsample pointは指定はできないがbeam内の最大流速(V)がとらえられる.ゆえに狭窄病変に対してfixed stenosisの場合にはpressure gradient=4V2という簡易ベルヌーイの式で圧較差が推定できる.dynamic obstruction (PSi、HOCM例)に原理的に適応するのには無理があるが実際は測定していること多い.これらdynamic obstructionではflow patternをFFT表示にするとlate-peaking typeという特徴的なパターンとなる.PSiは血流がecho beamに垂直となることが多く、その程度をCWドプラ心エコー図で評価するのは困難である.

左室流出路、または大動脈弁直上の最大流速を測定することで左室-大動脈間のpressure gradient が推定できる.ただし左室流出路とMRのsignalがCW Doppler beamの同一線上に位置するとその鑑別は困難である.また合併するMRのvelocityを測定することで左室圧を推定し(4V2+LA圧)、カフによる血圧との差により左室-大動脈間のpressure gradient が推定できる.また逆に左房圧の推定も時には可能である.ただしカフを用いた血圧は動脈硬化の強い症例では上行大動脈より20mmHg 位高く記録される.

TR例ではTRのvelocityを測定することにより右室圧を推定できる.正常の心臓形態でもTRが3mまでの右室負荷はありえ、ドプラ心エコー図は極めて右室圧上昇にsensitiveである.しかし、TRがなければ右室圧が正常とはいえない.またpericardiumの癒着が強い症例、左室の拡大肥大が強い症例では形態的に右室負荷とならないことが多い.

PRがあればその拡張末期velocityを測定することでPAdを推定するが実際には困難である(underestimateすることが多いと思う).VSD例ではVSDのjetの流速を測定することでRV圧の推定ができる.PDA例でもPDAの流速を測定することによりPA圧が推定できる.

MR例でMR jetをFFT 表示することでMRの出現のtimingを調べることができ、HOCMに伴うMRではSAMのあとにMRが出現することを証明できる(現在のmachineでは実時間より演算時間としての約10msec位の時間的ずれがあるのみでありFFT 表示はほぼreal timeと考えられる).

MS例ではLViを測定することで、PHT(Pressure half time)を利用してMVAを求めることができる.心拍数の増加や、左室の拡張不全が合併するとMVAをoverestimateすることもあるが、簡単に測定できるという長所がある.同様に人工弁をはさむ流入または流出の血流速を測定することで人工弁機能不全が診断できる.

パルスドプラ心エコー図では主に左室流入パターンを測定することで左室の拡張能を推定できる.A/Eは拡張能のひとつの指標だがこれは種々の因子に規定される.同一患者でのA/Eの変化は評価できる.NSRの心不全例でA/Eが正常範囲ということはLVEDPが著明に上昇し左室のfillingに左房収縮があまり関与できないpseudo-normalizationとよばれる状態であり、逆に肥大心では無症状時にはA/Eが上昇し左室のfillingに心房収縮の関与が大となる.通常当然A/Eが1以上となるような肥大心症例や、左室が拡張して収縮力が低下している症例においてA/Eが1以下ならpseudo-normalizationの可能性がありNTG負荷などでpreloadをさげたとき、A/Eがどのように変化するかをみる価値がある.

経食道心エコー図(TEE)は以下の病態の時、従来の断層心エコー図以上の情報を提供してくれる.食道にカメラを挿入するために、患者の苦痛および軽度の頻脈が認められる.不安定狭心症例ではカメラの挿入で頻脈となるので注意が必要である.協力の難しい小児では慎重を要する.経胸壁心エコー図(TTE)のもつpoor subject はありえず、全例に左房が良好に描出される.biplaneのprobeを用いればより立体的に心臓を観察でき有用である.しかしapproachするエコーのwindowが小さいため全体像が見えないず、その点はdisadvantageである.ゆえに、他の検査でscreeningしどの部分のどんな情報が必要かを考慮した上でTEEを施行すべきである.

1)人工弁が僧帽弁位に挿入されている例では人工弁が左房内でacoustic shadowをひくためTTEはtransまたはpara-valvularのMRに対して無力であるのに対し、TEEではprobeの前が左房となるのでこの情報が簡単にえられる.またMVPSではより詳細な僧帽弁の情報を得ることができる.MSのsubvalvularの変化はTTEの方が有用である.

2)手術中の左室機能のモニター、また僧帽弁形成術の術中評価についても有用な情報を提供してくれる.しかし、僧帽弁形成術直後のTEEのみで自信をもって外科医に「もう一度ポンプをまわして手術をしなおしてほしい.」とはいえないと思う.また、術中に逆流がなくても1カ月後にsevereなMRがみられることも多い.

3)MSの存在する例ではほとんどの例で左房にモヤモヤエコーが見られる.また左房血栓に関してもよくdetectできる.少しsensitivityが高すぎるように思われる.いままでlone Afとされていたものでも高頻度に左房に血栓が見られるが、モヤモヤエコーと同様にその臨床的意義の解釈には時間を要する.

4)TEEではPVのflow patternがとらえられ左房の機能診断ができる.

5)coronaryの病変についてTEEで種々のapproachがなされているがこれに対して、私はpessimisticに考えている.形態診断だけなら時間のかかる不正確なことをするよりCAGの方がよいと思われる.CAGで得られないcoronary flowの情報は心臓が拍動するためにうまくいっても拡張期しかとらえられない.

6)下行大動脈の解離についてはカラードプラ心エコー図を併用することでentryおよびre-entryの同定が可能である.

7)ASD II に対してsensitiveでありPFOのflowもよく観察でき合併するPAPVR、sinus venous type ASD II等の鑑別診断が可能である.ASDの存在診断に対し、現在ではTEEが最もsensitiveと思われるが、たとえ発見されてもそのような小さなASDは臨床的意義はないと思う.

カラーDoppler心エコー図は決してgold standard ではなく、心臓の診断の1つのtoolにすぎない.確定診断には、種々の他の方法論を併せて行なうのであり、Cardiology全般の知識を持たない人々にとってDoppler心エコー図は患者をpanicに陥れることはあっても診断的価値はないと思う.Proper Cardiologistがいて初めてDoppler心エコー図が有用である.

1-6 核医学検査

心拍出量(CO)をRISAを用いて測定するRCGと、タリウムによる心筋シンチが主な検査である.心pool scanはEFをnoninvasiveに測定でき、数字として報告されるという有利さがあるが、検査にかなりの時間を要するのであまりpopularではない.PET(positron emission CT) は心臓の代謝状態を画像化する方法であるが、大きなサイクロトロンが必要でありcostが高く、一般病院でまだ使用しておらず私自身の経験もないのでそれにはふれない.

1-6-1 RCG (radiocardiogram)

RCGは、原理的にはdye dilution 法である.CO測定以外にも循環血液量(BV)を測定できるという長所がある.BVは他の方法では測定できない.RISAを用いてBVのみの測定も可能である.

心不全時ではBVが増大しCOが正常域のこともあり、一方かなりの利尿剤を使用している例ではBVが正常でCOが低い例もある.この二つの比であるCO/BVは心機能をみる一つのよい指標である.心不全の改善時にCO/BVが上昇するような例では、心不全時にはPreloadが上昇しCOが減少するという悪循環にて心不全が成立していたということであり、また心不全改善時にCO/BVが変わらずBV、COがともに減少すれば単にStarlingのカーブにのってPreloadが治療により減少しただけであったということがわかる.甲状腺機能亢進症等のhigh COの状態の例ではCOのみならずBVも増大しておりRCGは有用である.しかし、右心カテーテル検査と同様に、「RCGが正常故に心臓が正常である.」というのは正しくない.NYHA III 度以上のDCM例でも安静時のCOが正常なことも多い.

shunt 疾患についてはRCGは非常にsensitiveであり、shunt の部位は判定できないが先天性心疾患のscreening、およびshuntの半定量に有用である.心臓病患者のshunt疾患のscreeningとして、カテーテル検査前にRCGをルーチンにする価値はあると思う.

1-6-2 タリウム201心筋シンチ

心筋シンチでは断層心エコー図と異なりpoor subjectはないという長所がある.

虚血性心疾患における心筋のviabilityの評価、心筋肥厚の程度、右室肥大の有無について評価できる.

心筋梗塞後で例えaneurysmであっても心筋シンチで完全欠損がなければ、viableな部分がありrevascularizationにて左室壁運動が改善する可能性がある.IHDの症例で、心エコー図でdiffuseなLV motion 低下であっても心筋シンチで明確な欠損がなければそれらの例では手術にて壁運動の改善が期待できる.

Stress時の欠損部位にタリウムが3時間後には取り込まれるとredistribution(+)というが、3時間後ではタリウムが取り込まれなくとも24時間後に取り込まれる例もあり、viableかどうかの判断は慎重にすべきである.心筋シンチの所見は経時的にみて常にconstantではなく、当初は欠損があってもそれが数年後には欠損が少なくなっていく例も存在する.心筋シンチは、現在では心筋のviabilityに関し最もsensitiveでな方法ではあるが絶対的なものではなく、将来、超高速CTやMRIにより心筋のviabilityをもっとsensitiveに評価できるようになる可能性もある.

心筋シンチは収縮期および拡張期の区別なく総和をみているので、壁肥厚に関すれば良好に描出された心エコー図のほうが有用である.しかし、心エコー図の短所である心尖部等に関しては心筋シンチは有用である.

1-7 MRI

MRIは強い磁場を用いてnoninvasiveに心臓の画像診断を行なう方法である.現在は長いscan時間を要し、長時間MRIの”筒”のなかに不動で入っていなければならずこれは患者にとって苦痛であり、特に閉所恐怖症の患者では耐えがたい.過去にカテーテル検査とMRIを両方施行した症例の半数はMRIの方が苦痛であるとのことであった.

撮影方法はシネmodeが可能なgradient echo法と良好な静止画像をとる目的のspin echo法の2種類がある.

現在MRIは心臓診断において必須なものになりつつある.今後scan timeが短縮し、one sliceが50msecでとれるようになるとultrafast CT(イマトロンン)以上の情報を得られる可能性がある.

循環器領域での他の画像診断の方法と異なる長所および短所につき説明する.

MRIは心拍同期しなければならず、心房細動や頻発するPACまたはPVC例では良好な画像がえられないことが多い.一方、リズムが一定であれば断層心エコーと異なりpoor subject はない.axial、coronal、saggitalと自由にその断層面を規定できる.左室は回転楕円体に近似でき、MRI以外でも断層心エコー図、左室造影にて左室volumeの情報がえられる.しかし、左房、右房、右室はその形態が近似しにくくMRIでaxialで連続してシネをとることで初めて三次元構築が可能であり、左房のvolume計測も可能である.心尖部は心エコー図ではapproachしにくく、またその全体像がとらにくいが、心尖部を中心とした心室瘤、APHに対しMRIは有用な情報を与えてくれる.複雑心奇形でその全体像の評価が困難なとき、axial面でのMRIは全体像の情報が得られる.また、断層心エコー図と異なりMRIはlateral resolution がないので心筋肥大のdistributionにつき、より正確な情報が得られる.しかし、弁逆流に対してカラーDoppler心エコー検査以上のinformationがえられるとは思わない.

上行大動脈のsaggital viewにて上行大動脈がどこまで拡大しているかとの情報がえられ、AAE等の診断が容易である.心臓の画像診断のなかで現在ではMRIのみがsagittalの情報を提供してくれる.dissectionに関しては良好な画像がえられればよいが、MRIのみで手術を考慮するという時代ではない.またMRI室では蘇生ができないので急変の可能性のある症例は不適切であると思われる.MRIは心臓の他の画像診断法と合わせることにより、より有効な診断の補助手段となりえるが、他の検査法と同様にMRIのみで心臓診断をすべきではない.

(1993-5-20)

2 心蘇生術 (Cardio-pulmonary resuscitation:CPR)

death on arrival (DOA) またはそれに近い状態で来院した例の最高でも約10%位しか自力で歩いて帰院することはできない.cancerのterminal stageでCPRをしても仕方がないが、primary Vfまたは心筋梗塞に合併したVfは急性期さえ乗り切れば比較的予後がよい.必ずその原因を考えるべきであり、患者に関する情報がない時はCPRをあきらめてはならない.

蘇生はABCDという順序で進める.

呼吸をしているか? carotidまたはfemoral artery が触知されるか?を可及的すみやかに観察する.

Vegetative peopleをつくらないためにもCPR後2-3日にて患者の状態を再評価し、治療の続行の是非を検討する.

2-1 Airway (A) & Breathing(B)

何をさておいてもintubationをする.intubationできない医師はアンビュバッグを使用するが、基本的にはintubationを覚えるべきである.特に人が少ないときにはintubationすることにより人手を減少させられる.mouth to mouthは感染の危険もあり私は積極的にすすめない.

2-2 Circulation (C)

IV line を内頚静脈、大腿静脈、鎖骨下静脈のいずれかの中心静脈から挿入する.脈が触知できなければ鎖骨下静脈穿刺がよい.これも緊急時にできるような訓練をつむべきである.すこしでも脈がふれれば、結果か原因かは不明だがacidosisの補正としてメイロン20ccのIVが勧められる.脈が触知されなければボスミン1/2Aを心腔内または中心静脈から注入し心臓マッサージをする.脈が触知されないようなショック時に末梢からの点滴は意味をなさない.

2-3 Definite Diagnosis (D)

Dはdrug therapyではなくdefinite diagnosis(確定診断)と考えるのが良い.なぜなら、原因により治療法が変るからである.たとえば何の原因であれsevere metabolic acidosis があればそれを補正し原因を除去しなけばならないし、何の原因であれhypoxia(結果としてのこともある)であればそれを補正しなければいけない.除去可能な原因をつねに考える.Vf、VTをくりかえすからといってみだりに電気的除細動はすべきではない.なぜなら、電気的除細動を頻回も施行することによる筋肉の熱傷で腎不全におちいることがある.2-3回の電気的除細動にもかかわらずVTやVfがコントロールできなければ、心臓マッサージをするか右心室よりのoverdrive pacingを考慮する.

例えばCardiopulmonary arrest の原因が大きな脳出血からの脳ヘルニアによるならhopelessという意味であり、気管切開等の蘇生をしすぎると植物症患者を作るのみである.予後は原疾患による.

(1993-5-20)

3 心臓カテーテル検査

心臓カテーテル検査はその目的により心内圧測定および圧波形分析、血液ガス分析による心拍出量およびシャント量の測定、心血管造影による解剖学的診断、電気生理的検査、interventional catheterization (PTCA、balloon valvuloplasty、catheter ablation等)に分類される.

3-1 心臓へのapproach

現在ではcut down法による心臓カテーテル検査は特殊な場合以外は行わずほとんどが穿刺法にて行う.また過去に使用していたも#8 Sones 、#7 Cournand のカテーテルも現在ではほとんど使用しない.

上腕のcut-downを行なっても動脈にはsheathを挿入する.この理由は1つには一時的であれ血行遮断をしなくてもよいので、患者の手がしびれるという症状がないこと、2つにはsheathの刺入部面がスムーズなため動脈の縫合がしやすいこと、3つにはカテーテル内径より大きいsheathを挿入することにより1ケ所のapproachよりカテ先と上腕動脈の同時圧が記録可能でAS、HOCM例の検査に適するという点にある.

右心カテーテル検査(RHC)はelectiveでは右femoral vein又は右内頸静脈の穿刺法で行う.上椀から左心カテーテル検査を行うとき、右心カテーテル検査も必要であれば右内頸静脈より行う.使用するカテーテルは#7 Swan-Ganz(SG)カテーテル、#7 wedge用SGカテーテル等がある.PCWP を記録する必要がなく各室で採血が必要であればカテーテルコントロールが容易な #7 NIH カテーテルを使用する.

CCUでの緊急右心カテーテル検査では透視装置なしにSGカテーテルを挿入することが多いため、右内頚静脈または鎖骨下静脈穿刺にて行う.呼吸器の管理が必要な症例では軽度の気胸が緊張性気胸に移行する恐れがあるため鎖骨下静脈穿刺は避けた方がよく、ル−チンでは右内頚静脈より行なう.RVまたはRAが極めて拡大しているため下肢よりのapproachではPCWPの記録が困難な例では、electiveな場合でも内頚静脈よりのapproachのほうがPCWPの記録が容易である.

左心カテーテル検査(LHC)のapproachには以下の2つの方法がある.

brachial approachの長所はテクニックを要するがSonesカテーテル1本で左右のCAGおよび左室造影が可能で、カテーテル検査後すぐに自力歩行できるという長所がある.cut downを行っていた時代ではNIH#7のカテーテルが標準的に使用されていたが、sheathを用いることが前提となれば左室造影は#6 Sonesカテーテル又は#6 pig tail カテーテルを使用する.#6 延吉型Sonesは、比較的良好な左室造影も施行でき、CAGの際もカテーテル交換が不必要という利点もある.

femoral approachでは#6のsheathを用い、あまり技術を要さずに同じところから繰返し施行できるが、左右のCAGでカテ−テルの交換が必要である.圧迫止血とカテーテル後約6時間の安静が必要で、さらにベッド上で排尿しなければならないという短所がある.

CAGを施行する医者はどちらにも精通する必要があり、どちらかの方法が困難な場合は直ちに他の方法に変更すべきである.一つの方法に固執しないことが合併症を減少させる一つの方法である.25-30才以下の例で特に女性の場合、上腕動脈が細くfemoral approachの方がよい.

3-2 心内圧測定

心内圧測定にはwater filled法、micromanometer recording (Millar社)、光fiberによる測定法 (カミノカテーテル)という3つの異なる方法がある.

water filled法は心拍数が多くなれば catheter whip 現象、また圧の急峻な変化があるとovershoot & undershoot phenomenonが出現するという短所があり、心拍数が120-150/min.以上の時では、PA圧は平均圧しか記録できないことが多い.圧に対する信頼性は内腔が広くカテーテルが短いほど正確であるので内腔が#5である#7 SGカテーテルは圧による診断が必要なときは適さない.一方、COは測定できないが、#7 wedge用SGカテーテルは、内腔が#6であり採血も容易であり良好な圧が記録できる.

Millar社のmicromanometer 付きのカテーテルは圧を電気信号に変えているためにwater filled 法の持つ短所はなく圧波形に対する信頼性は高い.過去に使用していた造影用の#8 Millarのカテーテルはbrachial approachによるcut-downが必要であり、挿入に熟練を要し、カテーテル検査の時間を要したし、またfemoral approachも可能なpig tail型#7 Millarのカテーテルは造影は不十分なことが多かった.しかし、#2 Millarのカテーテルの登場により、ルーチンの検査時にもhigh fidelityの圧記録が可能となった.心筋疾患で正確なLVEDP、dp/dt、-dp/dt の測定が必要な時、またCP類似の病態を疑った例で心室圧にdip & plateauが本当に存在するか等を評価したい場合はこのカテーテルを使用することで診断的価値がある.また#7、#8のMillarカテーテルでは心内心音も記録可能で、M-mode心エコ−図と同時記録することにより心音の解析にも寄与する.しかし基本的には研究用である.

光fiberを利用したカミノカテーテルはいまだ種々の問題点があり、左心系には使用できるが右心系には使用できない.

心内圧測定は安静時の状態のみをみている.しかし元来心拍出量、PCWP 及びPA圧はdynamicなものであり、安静時での測定のみから心臓の状態を評価するのは無理がある(かといって他に方法がない).たとえばMSでmild PHの例でも心不全をおこしている時はもっとPA圧は高い可能性がある.急性期に心不全を起こした大きな心筋梗塞でも3-4週間後の慢性期心不全改善時では、ほとんどの例が安静時のCO、PCWP及びPA圧は正常である.心不全症例では、右心カテーテル検査を状況により繰り返すことにより初めてその症例の心臓の状態が評価できる.またPA圧の上昇がみられる時、急性又は24-48時間の薬物負荷はその心臓の評価に有用である.

PA圧が上昇しているかまたはRAが巨大であればカテーテルがPCWのpositionをとりにくいため、時にPCWPはPA圧との合成波とし、PCWPが上昇していると見誤ることがある.典型的でない上昇したPCWP波形が見られた時、PAの拡張期圧とPCWPが同じ値か、PCWの採血にて酸素飽和度が95%以上か等によりこれが本当のPCWPと考えてよいか判断をする.

PCWPと左室圧とは約100msec.の時間的ずれがあるため、PCWとLVの同時圧測定はPCWPを100msec.はやめるか、LV圧およびPCWPのa波をあわせて記録する.臨床的に重要であるLVEDPについても日、時間による差はあってしかるべきで、仮に同一人で2回のstudyが共にMillarのカテーテルを使用していてもLVEDPの5mmHgの差は有意でないと思う.

3-3 血液ガス分析による心拍出量、シャント量の測定

正常人では動静脈酸素含有較差(AVD)は3.5vol.%程度のせまい範囲にあり、PAの酸素飽和度では72%程度である.心拍出量の測定には左-右シャントがない例ではPAとAOより酸素飽和度より、左-右シャントがあればSVC、RA、IVC その他を採血し、体表面積と年齢より計算した標準酸素消費量の値を用いたFick法にて行なう.通常IVCはO2 contentの高い腎静脈の血流を受けているため、SVCよりO2 contentが約1vol.%程度高い.左-右シャント量の計算は採血によるものがgold standardと考えられるが、これも採血注射器内のヘパリンによるdilution、採血部位の問題もあり半定量のRCGのほうが正確なこともある.たとえばASDではIVCはASDよりのシャントflowを受けかなりO2 contentが高くなっているため、このIVCを使用して左-右シャントを計算するとシャント量をunderestimateする.cardiac cachexia、甲状腺機能亢進症例では酸素消費量が正常ではないので実測が必要である.

3-4 心血管造影

現行の撮影のフレーム数は左室造影では60フレーム/sec、冠状動脈造影および大動脈造影では30フレーム/secで十分である.形態診断ではフレーム数が少なくて十分であり、90フレーム/secは同時にMillarのカテーテルを使用した圧容量曲線を描くための研究用である.DCIの発達で左室造影は30フレーム/secで、冠状動脈造影は15フレーム/secで十分であり、それによりoperator、患者ともに放射線被爆量が低下し、またfilm量も減少し保管場所の節約が可能である.

造影によるSellersの逆流の評価は簡便ではあるが、逆流する腔である左房、左室の大きさにより逆流量が同じでもその腔での造影剤の濃染度が異なること、またカテーテルの位置、大動脈圧により逆流量は変化する可能性があり、絶対的なものではなく限界が存在することを認識する必要がある.

3-4-1 左室造影

brachial approachでは、ほとんどの例で#6のsheathを挿入でき#6 pig tailカテーテルを使用する.#6 Sonesカテーテルは左室造影後にカテーテルの交換なくCAGも可能であり、pig tail カテーテルに代わってルーチンに使用してもよい.造影剤の量は、#6 pig tail(Cook社)で12-16cc/sec (total 36-40cc)、#6 Sonesカテーテルでは6cc/sec (total 36cc)で行なう.femoral approachでは#6 pig tailで10-14cc/sec (total 36-40cc)で造影する.

高齢者で大動脈弁をcrossできないときはbrachial approachによる#6 Sonesまたはfemoral approachによるAmplatz L2とstraightのguide wire(ラジフォーカス)を使用するのがよいといわれるが、私自身このテクニックを収得できていないのでこれ以上言及しない.

HCM等の左室が小さい例では造影時、PVCが多いため良好な左室造影がえられなければ、PAGによるlevophaseのLVをみるほうが自然な左室形態が得られる.一方、DCM等左室が拡大している病態ではPVCのない左室造影が得られることが多いが、心尖部まで十分に造影することが重要である.

3-4-2 大動脈造影

一つのValsalva sinusにカテーテルの先が位置し造影すれば危険であるのでテスト造影にてValsalva sinusを外したのを確認し、20cc/sec(total 35-40cc)で行なう.NIHカテーテル、pig tailカテーテルともに同量の造影剤でよい.AoVが3尖かどうか、上行大動脈の収縮期ASによるnegative jet、上行大動脈の拡大、post stenotic dilatation、ARの程度を評価する.ARの重症度評価はカテーテルの位置がValsalva sinusより少し高いとunderestimateする.

ARのないsevere AS例で心不全をきたしている例では大動脈造影は危険であり注意を要する.AortaのDissection例では、PAよりの造影を何回も繰り返すより、pig tailカテーテルを用いた大腿動脈からの慎重な直接造影のほうが安全である.

3-4-3 肺動脈造影

PPH、Pulmonary embolism疑いの例では正面にてカットフィルムで造影することが多いが、選択的に左右の肺動脈をみたほうが成人では鮮明な像がえられる.左室形態をも評価したい時はbiplane cineangiogramを施行する.main PAに#7 NIHカテーテルをおき、20cc/sec (total 40cc)で、または造影用の#7 SGカテーテルで15cc/sec (total 30-35cc)にて行なう.カテーテルが造影時にRVに落ちないように注意する.PAs>80mmHg、PAd>40mmHgで酸素に反応しないPH例では肺動脈造影は危険が伴う.高濃度の造影剤を頻回にPAのcapillaryを通すと造影剤によるallergy等によりカテーテル検査後左心不全になることがある.DSAの発達にてRA造影によるPAの情報で十分に診断的価値がある.この場合RA内の造影剤はPAでは少し薄められ、副作用という点からするとbetterである.ただし、PHの原因を肺動脈末梢に求めるなら、カットフィルムによる選択的肺動脈造影の方が鮮明である.

3-4-4 右室造影

PSv、PSiの存在時、Pulmonary valveおよびRV outflowの情報を知るために行なう.著明なTRの存在、Ebstein病を疑った時にも過去には行っていたが、これらの症例は、現在では心エコー図にて右室造影とほぼ同等の情報がえられる.カテーテルの先は右室心尖部に固定し#7 NIHにて10-12cc/sec (total 30-35cc)で正側にて施行.femoral approachの方がRVへの固定がよい.

3-4-5 肺静脈造影

肺静脈造影はPFOまたはASDの存在下でのみ施行可能である.PAPVRでは右のPVがanomalous veinとしてRAまたはSVCにdrainしていることが多いのでそこで正面、側面にて造影しPVと左房壁の関係を確認する.#7 NIH カテーテルで10-15cc/sec (total 30-35cc)にて施行する.

3-4-6 冠状動脈造影

時代の流れとともにCAGは内径の細いカテーテルを使用し穿刺にて簡単に実施できるようになり、外来検査または1日入院の検査ですむようになってきた.

上腕からapproachでは#6 Intervec左右兼用カテーテル、または#6 延吉 Sones カテーテルで良好な映像が得られる.上記カテーテルにてlt.CAGが挿入困難な場合、上腕からでもJudkins左用カテーテルは有用である.bypass造影は femoral approach にてJudkins右用カテーテルまたはIMA用カテーテルにて施行する.

lt.-CAGではLAO 10度、RAO 10度、RAO 30度、LAO 60度craniocaudal、RAO 30度 caudocranial、rt.-CAGではLAO 40度、RAO 30度が標準で病変があれば適宜projectionsを追加する.正常であれば少ないprojectionsで終えることもある.

vasospasmが疑われればアセチルコリンやエルゴノビン負荷を行うが、労作で虚血が惹起される例や陳旧性心筋梗塞例ではニトロール2mlのIV後のみの造影を行う.

CAGは形態診断でありseverityはAHAの% diameter stenosisに基づき記載する.computerを用い % diameter reductionを実測して数字を示すと客観性があるように思われ、造影剤による濃度差(染まり方)による評価等細かい記載がなされてきている.しかし、この表示は病変の長さ、形態を問わない.short segmentの90%はlong segmentの50%よりCAG上ではsevereだが、心筋へのflowの面からみるとどちらがsevereかの判断は困難である.このように、冠血流量の障害の程度の推定をCAGという形態診断より行なうには限界が存在する.そう考えるとCAGの評価は数字よりmild、moderate、severeの3段階評価で十分かもしれない.

3-5 Electro-physiological study (EPS)

右心房でのoverdrive suppression、dynamic HBEにてAV nodeおよびSA nodeの機能、RV ventricular pacingで逆伝導の有無も検索でき、刺激を加えてVT、PSVTを誘発させ、副伝導路の存在場所、及び薬物の効果をみることが可能である.特に副伝導路を通るmedically refractory arrhythmiaの一つの治療法として確立されてきたcatheter ablation を行うには上記は必須であるが、時間を要するため、不整脈の専門家がいて、一つのカテーテル室が自由に使用できる病院に限られるべきである.

3-6 心内膜心筋生検

かつては金属の硬いbiotomeを使用していたがlong sheathとdisposableのbiotomeの発達により左室でも簡単に生検が可能となった.小さな標本一枚が心臓全体をどこまで表しているかの問題はあるが心筋炎やamyloidosis等のびまん性心筋病変の診断には有用である.また、心筋肥大、fibrosis、心内膜の肥厚にて左室の収縮力低下のreversibilityの推定が可能である.histologyのみでなくhisto-chemistryも検査するのがよいと思う.

近年、心筋炎の診断には心筋生検の所見は必須であり、このspecimenからPCR法でvirus genomを同定している.

3-7 Indication for cardiac catheterization

hospital indication、doctors indicationを抜きにしては語れない.内科医に能力があり、かつ心臓外科がある病院ではindicationがあっても、内科医に能力がなく心臓外科がない病院ではindicationがない.年齢制限は難しい問題だがmedical refractory angina、s/o severe ASは例え80歳を越えていても、また不治のcancer合併例も狭心症によって日常生活を送れないような生活制限のある例はCAGを施行してよいと思う.長期followという観点にたつと、心臓カテーテル検査のために入院すると医者と患者の関係がより密となり、外来followでのdrop outが少なくなる.

3-7-1 Congenital heart disease

history、physical examination、胸部レ線、ECG、心エコー図の5つで確定診断がつかなければ、全例心カテーテル検査の適応がある.

今日では、ASD、VSDのようなsimple congenital heart diseaseではDoppler 心エコー図のみで心臓カテーテル検査なしで手術になっていく可能性があり、またもうその時代であると思う.しかし、PSiを合併したVSDは心音のみからでは確定診断が困難な時もあり、またPSiではRVoを通過する血流の方向がDoppler echo beamと垂直となるのでその重症度を心エコー図にて評価しにくい.それゆえRVの流出路が断層心エコー検査で描出しにくくPSiの存在を否定できない時、右心カテーテルにて確定診断を行なう.先天性心疾患では、右心カテーテルはfemoral approachが原則であり、それによりPFO、ASD、lt.-SVCの有無をみる.異常血管もカテーテル操作にて発見する.なぜなら、上肢からのapproachではカテーテル自身がASD等を通過しにくいため上記の診断が困難であるからである.decision makingおよびworking diagnosisはカテーテル操作中にカテーテルの走行および採取した各心腔の血液の色にて随時判断し、ルーチン以外どの心腔で造影し、どこで余分に採血すれば確定診断が可能かを考えながら行なう.PCWPを測定する必要がなければ造影、採血ともに簡単に行える#7 NIHカテーテルの使用がすすめられる.異常血管にguide wire使用してカテーテル操作をする時は、110cmの#6 multipurpose Sonesカテーテルを使用する.

3-7-2 Valvular heart disease

カラーDoppler心エコー図の発達により、弁膜症術前の心臓カテーテル検査は今後さらに減少していくと思われる.通常、逆流性疾患は左室造影、大動脈造影等で逆流の程度を評価する.しかし、例えば、MRでは左室造影時に血圧を下降させればMRの程度は減少し、血圧を上昇させればMRの程度は増加するし、ARの程度もカテーテル先の位置、大動脈圧により変動するので、造影検査が必ずしもgold standardとは限らない.

TRがあればその流速をDoppler心エコー図にて測定することで右室収縮期圧はあ推定できるが、dip & plateau か台形パターンかという右室圧曲線の情報は心カテーテル検査によって初めて得られる.

AS例ではCW Doppler は確実に大動脈弁直上の最高流速を測定していない可能性があり、また高齢者ではAortaの硬化のためDopplerで測定するinstantaneous pressure gradientはpeak to peak gradientに比してoverestimateすることが多く、カテーテル検査は必要である.その際、虚血性心疾患の合併の除外が必要でありCAGは危険でも注意しながら施行すべきである.CAGを外科医が知らないで手術する危険の方がCAGを施行する危険よりも高い.しかし、高齢者では大動脈弁を通過するのが困難な例もしばしば存在する.

3-7-3 Ischemic heart disease(IHD)

胸痛が主訴で理学的所見に問題がなく心電図、心エコー図が正常な例では右心カテーテル検査はSGカテーテルを使用するが、省略してもよいと思う.日本ではanginaはvasospasmの関与が多いので、運動負荷陰性ならできる限りカテ室でのエルゴノビン負荷が望まれる.ベッドサイドで行うと心電図の情報しかえられず、症状があるが心電図の変化がない時、これが本当に心筋虚血か否かという判断に苦慮する時がある.左心カテーテル検査だけなら#6のsheathにより上腕からの穿刺法がstandard methodである.IHDでfollowしていた症例が症状の変化があれば、例え3カ月前にCAGを施行していてもlesionのjump-upも考えられrepeat CAGを考慮する.

3-7-4 Hypertrophic cardiomyopathy(HCM)

心エコ−図がpoor subjectでなければ診断はそれで十分であり症状のない症例にresearch目的以外は心カテーテル検査をする意義はない.左室壁の肥厚に関しては左室造影は心尖部以外は断層心エコーほどは有用な情報を与えてくれない.

狭心症様の症状があればCAGを施行するが、CAGに異常がみられてもHCMが存在するということにはかわらない.DOEがあればLVEDPの上昇の程度かをみるため心カテーテル検査する価値はある.また、左室内の閉塞起点の有無は閉塞がsevereな例以外では臨床的にはそれほど重要とは思えないが、カテーテル検査ではLVとAOの同時圧測定によりBrockenbrough現象を観察できる.しかし、閉塞起点は日により変化しdynamicなものであるからむしろCW Dopplerによるserialな検査のほうが望ましい.MR signalとLV outflowのモザイクsignalがCW Doppler上同一線上になると流出路狭窄の程度の評価は不能である.pressure gradientを減少させるために右室pacingによるLVの収縮様式を変化させるのも治療の一つとして考えられているが、pressure gradientが増大するのが主病態ではないので効果に関してはまだ不明である.

3-7-5 Dilated cardiomyopathy(DCM)

ischemic cardiomyopathyとDCMとの鑑別はCAGによらねばならなず、bypassibleな血管があればrevascularizationにより左室壁運動および症状が改善する可能性がある.狭心症の病歴がありCAGが正常であっても、虚血性心疾患による壁運動の低下は必ずしも否定はできない (recanalization、vasospasm 等による)が一応の治療指針はつく.

sepsisその他各種代謝性の異常で一過性に心室の壁運動は障害されることがある.この場合特に心尖部がおかされるが、時にはdiffuseに障害されることもある.また頻拍性Af、PSVT、頻回のVT発作による一過性左室壁運動障害(tachycardia-induced cardiomyopathy)もありDCMの診断には慎重を要する.つまり、DCMはくずかご的診断であり長期followしていると左室壁運動が改善する例も少なからずありserialな断層心エコー図によるfollow-upが必要である.

3-7-6 Myocarditis

Myocarditisでは、急性期に心のう水が多量に貯留しているときpericardial effusionをdrainageするかどうかは重要である.多量のpericardial effusionが静脈圧上昇の原因であればdrainageにより症状の改善が期待できるが、炎症による心筋浮腫による拡張障害がその原因であれば外科的にdrainを挿入すると静脈圧が高いため切開部位よりの排液が止まらず困ることがある.

右心カテーテルを施行し、PCWPとRAが同じ値であればタンポナーデとしてdrainageしてもよいが、PCWPの方が高ければdrainageで症状の改善は期待できず避けるべきである.合併症のある心筋炎ではPCR法による診断が重要であるので左右心カテーテル検査を行い、まずcoronaryの病変を除外し、心筋生検をするのがよい.心筋生検は症状発現より時間が経過していないほど陽性である率が高い.

心筋炎のfollowは断層心エコー図で十分であり、心電図、断層心エコー図が完全に正常化した時点での左室造影およびCAGは必要ない.

3-7-7 Cardiac tamponade and constrictive pericarditis

2つの病態はともに心室の拡張制限をうける病態である.右室の圧曲線と右室の収縮期圧の測定が重要である.末梢動脈より穿刺し(FAがよい)、動脈圧曲線を描きparadoxical pulseの有無を調べる.CPであればRV圧にてdipがみられるが、tamponadeであれば右室圧は台形パターンでdipは生じない.dipはwater-filled systemではundershoot phenomenonとしてみられることがあるのでMillarのカテーテルを使用した方がbetterである.大量のpericardial effusionでtamponade様の圧を呈していてもeffusionを排液した後でも圧パターンに変化がなければ心筋疾患である.診断が不明の場合は心カテ室でeffusionを排液する前後での右心系の圧を測定するのが望まれる.

CPでは、左室と右室の同時圧を測定しともにEDPが5mmHg以内であること(diastolic equalization)がひとつの診断的根拠であり、左右心カテーテル検査が勧められる.severeなTRがあればdiastolic equalizationをきたすことがある.

3-7-8 Unexplained heart failure

高齢者で原因不明の心不全はしばしばみられ、循環血液量を減少させたらよいのか、心拍数を減少させたらよいか、afterloadを下げた方がよいのか等の治療方針に困難をきたすときが時々ある.また、呼吸困難が肺由来か心臓由来か明確でない時には積極的に一時的にSGカテーテルを留置し、薬物負荷をするのがよい.CCU症候群にならないように状態が安定すれば可及的すみやかにSGカテーテルを抜去し、リハビリを開始することが肝要である.

3-7-9 Catheter balloon valvuloplasty (PTMC、 PTAV & PTPV)

PTMCは体外循環を使わずに約1時間のカテーテル操作のみで僧帽弁狭窄症を軽減可能である.現在ではその適応は広がりつつあり、たとえ小さな左房血栓があっても、またsubvalvularの変化が強くても施行する施設もある.MSが血行動態の主であれば巨大な左房血栓例以外は施行してよいと思う.断層心エコー図でPTMCが不可能と思われる例でもPTMCによりMVAが改善する例もある.また、PTMC時に現存の測定法では一番信頼性のある左房-左室同時圧よりGorlinの式でMVAが測定できるという利点があり、症状のあるMS例はfemoral approachにて通常の心カテーテル検査後、同時にPTMCの施行してみるのもよい.

これに対してPTAVは極めて全身状態の悪い例でのAVRへのbridgeとしてのPTAV、多数の内科的問題をかかえている例、上行大動脈の石灰化がきわめて強く手術が high risk の例以外は適応がない.なぜなら、AVR可能なAS症例では他の弁膜症に比して手術による症状の改善はdramaticである.

PTPVは小児のPSvの第一選択になってきたが我々はまだ経験がない.

(1993-6-2)

 

4 不整脈の治療

不整脈の診断は心電図診断が基本であるが、心電図にてdocumentできていない症例では病歴により診断が可能である.ひとことで動悸といっても速い動悸、遅い動悸、不規則な動悸と種々である."Tap it for me."が病歴聴取の一つのこつである.病歴にて脈拍は規則正しいかどうか、1分間の脈拍はおよそいくらかは不整脈を診断するうえで重要な情報である.それにてAf、PAT、PVCまたはPAC、自分の脈を感じているのかの判断が可能である.神経質でない例では、患者に動悸を感じた時に脈をみて判断できるように教育する.

CAST studyによると、不整脈の治療によりむしろpro-arrhythmiaが増加し予後が悪いとの報告もあり、治療の目標を明確にすることが重要である.一般に抗不整脈剤は心臓の収縮力を低下させるので、基礎に存在する心疾患の有無のcheckに断層心エコー図は必須である.例えば心不全によりPVCが出現している例では治療は心不全に向けられるべきである.それでもなお、致死的不整脈が出現する場合に抗不整脈剤を使用する.心臓以外の増悪因子として、低酸素血症、脱水、感染、等の代謝性な原因があればその補正に務める.

薬剤の効果は24時間心電図にて評価し、1-2年で治療を中止するときもあるが、基本的には今後10-20年の間、抗不整脈剤を投与するため、特に若年者の長期投与による副作用には十分に考慮すべきである.薬剤の選択は電気生理学的からみたVaughan Williamsの分類に準ずるがその使用は経験的な要素が多い.薬物治療が困難なPATもcatheter ablationにより治療できるようになった.

4-1 Premature atrial contraction (PAC)

無症状な例は放置する.放置して問題がないことを十分に説明してもなお動悸の自覚があるならmetoprolol(セロケン)40-80mg/dayにて治療を始める.左房負荷の症例ではPACはAfになる前兆であることもあり、その原疾患の治療をする.すなわち軽度の心不全があればジギタリスおよび利尿剤等でその改善に務め、24時間心電図にてAf、Sinus rhythm(SR)をくりかえしている例では、warfarin にてtransient AfがSRになる時におこりえる血栓塞栓症の予防をする.HOCM例を除きdigitalisを使用しても良い.

4-2 Premature ventricular contraction (PVC)

はじめに、24時間心電図によるPVCの頻度と運動負荷心電図によるPVCの抑制または増加の有無を検討する.運動負荷によるPVCの抑制があればまず良性と考え、PVCの増加があれば虚血性心疾患または心筋由来の病態が考えられ治療はそれらに対して行なう.左室機能が正常かどうか、左室心筋が肥大しているかどうかは断層心エコー図にて評価でき、治療方針を決定する上で重要な情報である.

24時間心電図でのPVCの出現頻度はLown分類でgradingする.Lown分類は24時間心電図が一般的になる以前のものであり、24時間心電図の所見をLown分類に準じて治療の是非を決定するのが正しいか不明であるが現在でも便宜上これに準じて分類、治療している.なぜなら、症状のない健康な学生に24時間心電図を施行すると要治療と思われるLown分類3度以上の例がかなり見られが、それらの例の予後が不良であるというデ−タはいまのところない.

Lown分類3度以上で基礎に心疾患のないものは、セロケン 40-80mg/day、propranolol(インデラ−ル) 30mg/dayまたは procaine amide(アミサリン) 1000mg/dayにて治療を始めることが多いが、先に述べたように本当に治療をした方がいいかどうかの答はなく、様子観察だけにとどめる症例も多い.効果は患者自身の脈拍測定および24時間心電図により判断する.mexiletine(メキシチール)は150mg/dayより開始するが、これはまだ歴史が浅く10-20歳代の例に使うには長期の副作用のことを考えるとその使用には慎重になるべきである.disopyramide (リスモダン)300mg/day 又はリスモダンR 150mg/dayがPVCに最もeffectiveと思われるが、高齢者では尿閉等の抗コリン作用による副作用が多い.

急性心筋梗塞時のPVCには予防的薬剤投与はせず、心不全があればその治療をする.PVCが頻回に出現する時、lidocaine 50mgの静注後1-2mg/min.で使用することもあるが、副作用は個体差が多く症例は限定されるべきである.

心不全を合併したPVCの治療はVTの項に準ずる.心不全改善時は心不全時と比して24時間心電図にてPVCの程度はLown分類でも改善していることが多い.

4-3 Atrial fibrillation (Af)

副伝導路をもたないAfの治療は心拍数を100/min.以下にすることが目標である.LVのfillingに心房収縮が著明に寄与するような肥大型心筋症では一過性のAfにより血圧低下をきたし、low output 症状を呈することがある.そのような例にのみ緊急cardioversionを行なう.それ以外の例では治療は緊急ではない.

原疾患としてはmitral valve disease、肺疾患によるhypoxemia、種々の心不全状態(もちろんどちらが原因で結果か不明だが)、hyperthyroidism等がある.hypoxemiaではガスの改善が、またhyperthyroidism例ではeuthyroidにすることが治療の第一義である.心不全例ではdigitalisおよび利尿剤で心不全の改善に務めるがそれでも心拍数がcontrolできなければAV node抑制効果の強いverapamil(ワソラン)(40mg)を3T-6T/dayを加える.

Afの原因の明確でない例はlone Afといわれる.但し、カラードプラ心エコー図の出現で過去にlone Afとされていた例でも労作時息切れとsevereなDoppler MRやTRを示すものがあり、そのterminologyは変化してきた.特に高齢者Af例では24時間心電図では朝にbradycardia を呈する例が多い.

食道エコーにてAf例の左房を観察すると軽度の左房拡大があればほぼ全例にモヤモヤエコーが見られれ左房の血流が緩徐であることを表している.しかし、MRが有意であれば左房の血流がless stagnant となるのでモヤモヤエコー及び血栓は生じにくい.若年のlone Afで心拍数が速くない例はwarfarinのみで治療する.CVDに関してwarfarin投与した方が予後がよいというデータはあるが現実的には、intelligenceの低下した症例や高齢者では困難である.またwarfarinに加えて心拍数が速ければpropranolol、digitalis、verapamil等を使用する.

transient Af例で原疾患がなく、それほど回数が多くなければ放置またはdigitalisのみを服用させるが、24時間心電図でAfとSRを繰り返していれば強力にwarfarinを用いる.また、血行動態的には軽度のMSだがAfとSRをくりかえす例でも、Af時左房にできた血栓がSR時に塞栓症となる率が高く強力にwarfarinを使用する.

Af例で心房に負荷があまりみられない症例では、elective cardioversionを施行しSRを維持した方がよいかもしれない.またDCMに合併したAf例で左房の拡大が軽度ならSRに維持することで左室壁運動が改善する例もある.24時間心電図で一過性SRがあればcardioversion する利点はない.これらの症例でSRに復した後にどうしても維持したい症例ではにリスモダン200-300mgを服用させる.

AV node は速い刺激が上位中枢より伝わるとき、房室ブロックにより心拍数が150-180/min.以上にならないように頻脈から心臓を保護している.しかし副伝導路にはこの保護作用がないため、速いAfがすべて心室に伝わり心拍数が200/min.以上にもなるので拡張期は短くなり血圧が低下する.この場合、digitalisは副伝導路のrefractory periodを短くし心拍数をなお増加させるので禁忌である.このAfはwide QRSでVT様にみえるがRR間隔は不定であることからVTと鑑別ができる.第一選択は100-200Wでの緊急電気的cardioversionでありアミサリン200-400mgの静注も副伝導路のrefractory periodを延長させ効果のあることが多い.

4-4 PAT (Paroxysmal atrial tachycardia)

P波が見えなければparoxysmal supraventricular tachycardia(PSVT)と呼ぶ.突然規則正しい速い動悸が起こり、突然とまる(ことが多い)という病歴の聴取が診断に大切である.Af with rapid conductionとの鑑別は心拍数が全く規則正しいかどうかということで可能である.原因はAV node内または副伝道路を介してのreentrant tachycardiaであることがほとんどであり、治療はそのどこの部位をブロックしてもよい.病歴上PATが明確な例ではverapamil 3T-6Tを予防的に投与する.

”PATの停止の方法”

1)Vagus tone上昇によるAV nodeの抑制

Valsalva法、冷たいタオルを顔にかける、喉に手をいれてnauseaを誘発させる等の方法がある.PATに効果のある薬剤がたくさんある現在Aschner法、carotid massageは副作用の点から考えると行なわない方がよい.

2)薬剤によるre-entrant circuitの切断

ワソラン1A または、アミサリン1AをPATが停止するまでゆっくりIVする.ワソランにより90%以上PATを止めえ、共に2Aまで使用可能である.

3)血圧を上昇させる(メトキサミン、norepinephrineまたはneosynesineにて血圧を40mmHg程度上昇)ことにより迷走神経反射弓を利用しPATを停止さす.

4)RAよりのoverdrive suppression(心房ペーシングを200/min.で30sec)によりPATを停止さす.

近年、カテーテルにより副伝導路を高率にablationが可能となってきた.medically refractoryな症例や、若年者で今後長期に薬物治療するのが困難な例ではcatheter ablation 可能な施設へ紹介するのも一つの方法である.

4-5 Ventricular tachycardia (VT)

まず、VTの形によるmonomorphicかpolymorphicかの判断が重要である.なぜならpolymorphic VTでは抗不整脈剤をはじめとする薬剤による不整脈(pro-arrhythmia)を念頭にいれておく必要があるからである.monomorphic sustained VTでsymptomaticであればEPS studyの対象となる.

基礎疾患に心筋収縮力の低下がある場合とない場合でその治療法が異なり、断層心エコー図による検査は重要である.心不全がありかつVTがみられる場合は心筋収縮力が著明に低下していることが多く治療は心不全にむけられるが、心不全の治療をしてもどうしてもsymptomaticであるかまたは悪性なPVCまたはVTがある場合はアミサリン、メキシチール等使用する.VTをどうしても停止できない時には、例え心不全があってもpropranololをはじめとするβblockerは使用する価値はある.繰り返すVTにより血圧低下がある時は1回は電気的除細動をしてもよいが頻回に行なう心筋が劣悪化する.このような例ではVTを一旦とめたあとにRV pacing によるoverdrive suppression (rateを約90-110/min.くらいにする)にてVTの予防を試してみる価値はある.またacidosis等の異常な代謝状態の発見補正につとめる.リスモダンは抗不整脈作用も強いが、副作用が強い.200mg/dayなら比較的副作用も少なくPVCに効果がある.VTの原因が心不全を伴わない大きな左室瘤である場合も上記の治療に準ずる.

一方、心収縮力が良好であるにもかかわらず、このような不整脈が出現している例ではセロケン、メキシチール、アミサリン等使用し、効果は24時間心電図にて判定する.このような例では抗不整脈剤のもつ心筋収縮力抑制の副作用にはあまり注意を払わない.

4-6 特殊型Torsades de pointes typeのVT

QT時間の延長により生じるらせん状の波形をもつたVTをTorsades de pointes型VTとよぶ.原因として、アミサリン、キニジン、リスモダン等の抗不整脈剤やchlorpromazine等によるQT延長と先天性QT延長症候群の2つがある.薬物による治療はあまり期待できずRVでのoverdrive pacing 90/min.を上記の薬剤の効果が抜けるまで2-3日続ける.CVD、虚血性心疾患又は代謝性疾患によるQT延長の症例ではこのような不整脈はおこらない.

4-7 Pacemaker implantationの適応

一般的には fainting またはその他の症状が徐脈によると考えられるすべての例がその適応である.AV node、SA nodeのどの部分に障害があるかによってどの型のpacemakerを挿入するかを決定する.

DDD pacemakerとVVI pacemaker の適応の相違:

近年では、電極が改良され手術にて心筋電極を挿入することは少なく、侵襲の少ない経静脈よりの心内膜電極が多くなった.しかし、右心房、右心室が著明に大きいと電極を経静脈的には右室に固定できないことがあり、その時はsubxyphoidよりの手術にて心筋電極を使用する.

正常人でLV fillingの15-20%を占めているatrial kickは左室心筋の収縮または拡張が障害される場合は30-40%ともなりえる.このような例ではDDD pacemakerにて心房収縮を温存する方が安静時の心拍出量が保たれる.DDD挿入前には運動負荷又は心房pacingにてP波が増加するのを確認し、24時間心電図でtransient Afの存在の有無、及びRV pacingにて AV node を通らない速い逆行性のpathwayの存在の有無を検討する必要がある.

VVI modeではAV dissociation時に血圧が下降し、その時に症状があればpacemaker症候群という.つまりSRの50/min.のほうがVVIの70/min.より心拍出量としては多い.急性心筋梗塞でAV dissociationのため血圧低下を来した場合は内頚静脈からの7.5FのSwan-GanzのDDD pacingカテーテルを挿入しpacingすることにより血圧の上昇が期待できる.

熱sensor付きのVVI pacemaker ( rate responsive VVI:VVI-R) は、運動時の心拍数の上昇が可能である.DDDに比し挿入電極は1本で簡単でありDDDのように、心拍数が運動時150/min.になると突然2:1のblockが起こったりすることはない.

complete block例では通常はcatecholamineのdriveのためにP rateは100/min.くらいになっている.pacemakerを挿入するとcatecholamineのdriveが止まり、P rateが減少することが多いが、減少しなければDDD pacemakerではventricular rateも100/minとなりそれがかえって心機能に悪影響することがある.そのようなときはVVI-Rの方がよい.

4-8 Cardioversion

electiveとemergentの2つに分類される.

elective cardioversion では施行約1週間前よりanticoagulationを実施し、digitalis剤は中止する.diazepam 10-20mgの静注下にAfなら100W、PATなら50-100WでR波に同期して行う.無意識下での嘔吐によるaspirationを防ぐため、4-5時間の絶食後に行なう.

emergent cardioversionではVT、Vf例が対象である.頻回に電気的除細動をすると心筋傷害またはミオグロビンによる急性腎不全となることが多く(4-5参照)その場合は心臓マサージのほうがよい.一度VTに陥りやすくなると悪循環によりなかなか回復できない.sedation後respirator管理すると効果的なこともある.

心房の収縮が左室のfillingに大きく関与している症例や、ventricular rateが200/min.以上になるWPW例でのAf with rapid conductionの症例は100Wで準緊急にcardioversionを行なう.

近年、経静脈的に挿入が可能となったautomatic implantable defribllator(AICD)は、faintingを起こすmedically refractory VT、Vfとなるhigh risk patientsでは、例え左室機能の低下例でも考慮する価値はあると思う.

(1993-5-24)