診療と教育に関する実績

私は、大学病院で2年間の初期研修終了後に、天理よろづ相談所病院で3年間の一般内科の後期研修を受け、以後、循環器内科医として診療と教育を行ってまいりました。

後期研修中には、アメリカのレジデント制度を真似た早朝7:30から始まるレジデントの朝のカンファランスを制度化し、ワシントンマニュアルおよびNEJMの抄読会を始め、最終学年では天理よろづ相談所病院の初代チーフレジデントに選出されました。

循環器内科を専攻してからは、主にローテートしてくる後期内科研修医の教育に関与していました。しかし、1992年より当院の研修委員会のメンバーとなり、研修医全体に対して教育を行うようになりました。1994年には研修医の責任者というべき内科系マネージグドクターに任命され今日に至っています。

2000年4月より、臨床心臓病教育研究会より臨床教授の称号をいただいています。

診療の実績

現在、外来業務として、循環器の門外来が1日半、総合外来が1日であり、月平均4回のCCU当直も行っています。認定超音波指導医として、病院全体の心エコー(週に約100症例)、経食道心エコーにつき所見の責任を負っており、半日は診断カテーテル検査も行っています。

診療は、まず患者を丁寧に診ることから始まると思います。そのため、経験した興味ある症例については、掘り下げてできるだけ英文論文にしてきました。学会発表で終わるのではなくpeer reviewのある論文に投稿することにより、科学的な思考や批判的な論文の読み方ができてきたように思います。個々の症例を深く観察し、患者さんから勉強させていただく姿勢が臨床医としての基本的態度であると考えています。それゆえ、症例報告は原著論文と同様に重要であると認識しています。

加えて、簡単に行える検査のみを用いて臨床の疑問から生じた臨床研究を行い、英文で発表してきました。原著論文の対象のほとんどが、外来患者で保健診療以内の検査から何らかの結論を出している点は強調したいと思います。

教育について

当院において、過去約9年間、研修医に対して主に循環器疾患の教育方法につき種々の実習を企画してきました。一つは、週2回行っている循環器症例カンファランスです。ここでは、1症例を1時間かけ、病歴と身体所見から症例の提示方法、検査の必要性、簡単な検査である胸部レ線と心電図より診療の方向を見いだし、入院の適応を論じます。カテーテル検査等の最終検査の結果から初期治療をどうするべきであったかをフィードバックし論議します。またその日の症例のトピックスについて、研修医が知っておくべきことにつき、講義をしてきました。我々の病院では、カテーテル検査が年間1000例あるため、循環器内科のカンファランス中に、研修医の病歴・身体所見のとり方、や症例の提示の方法を論じることは不可能ですが、このカンファランスである程度それを補えるようになっていると自負しております。

また、5年前より、私の外来を受診した患者の心電図を、研修医と毎週一緒に読んでいます。心電図の読影に加えて患者のデータを提供できるため、より有効な研修になっていると思います。

これら実習に対して、一定期間後に指導医側と研修医から評価をし、よりよい研修方法に変えてきました。その後、我々の教育方法を他院から評価を受けるため、医学教育学会に発表・論文にしてきました。1昨年より、甲状腺の触診をルーチンの診察に含めるようになることを目標にして、医師免許取得直後より超音波検査を使った甲状腺触診の実習も始めました。また、総合外来、専門外来において、研修医に病歴をとる機会を与え、初期判断を一定の時間内に正しく行えるような外来実習も行っています。

論文を書くことにより、知識が整理できることを実感させるため、若い研修医のco-authorとして、6枚の英文論文を指導してきました。

教育に対する私の基本的コンセプトは、上級医が下級医を教えることで知識の整理をする、いわゆる「屋根瓦式研修」であり、これを企画・実践してきました。

3年前より、心音シミュレータ「イチロウ」を用いた正常の心音や静脈波形の習得、順序だてた身体診察を習慣化出来るような教育を実施しています。昨年度は5月と8月の2回行い、目標設定を定め、上級研修医が下級研修医を指導するようにしました。本年の5月には現在の2年目研修医が全員参加で企画をたて、「イチロウ」を用いて1年目を教えることができました。また、研修医に担当した夏季実習学生を教えることも義務付けしています。

「教え・教えられる」方式は、徐々に定着していっているように思います。