選抜試験制度の評価

文部省は、共通一次テストやその後のセンター試験と、大学入学選抜制度を変更してきました。入学選抜制度の変更は、目標があって行われたとは思いますが、変更された選抜制度の評価は、その制度の上で選抜試験に合格し、その後社会人になった人々を評価することによってのみ可能です。評価による制度への還元がないことが日本の社会の悪い特徴であると思います。

本院でも、毎年12人の新人研修医が採用されますが、勉強はできるが臨床に向かない人が1-2人います。責任感が希薄であったり、人間にあまり興味を示さなかったり、人との会話がうまくできないと、たとえきちんとした教育体制のもとでも社会が求める臨床医にはなれないように思います。

このような問題を持つ学生に対して、大学が種々の介入行為を行ってもその性格が改善される可能性がないと実証されれば、彼らが医師になる前に転部(転学)をすすめ、それを可能にする体制が必要です。無理をして医師になるより、自分の能力を発揮できるほかの職種があると思いますし、そういった進路指導をすることで、将来その学生に診てもらうことになる患者も、その学生自身にとっても幸せなことであると思われます。周りの人の薦めで医学部に入ったものの、自分には向かないと思っても、特に単科大学では転学はできません。ましてや、医師になってからでは他の職業を選ぶことはきわめて困難です。

一部の医科大学では、選抜試験に面接や作文をとりいれ人物評価を加えた選抜制度への見直しが行われています。その選抜試験のもとで選ばれ、医師になった人々の評価が同時に制度の評価となります。

10-20年前に東京大学や京都大学の医学部を10番以内の成績で合格した超秀才や、約25年前に川崎医大の開校時に推薦入学した一部の卒業生の現在はどうでしょうか?指導力を発揮して医師として輝いて仕事をしているのでしょうか?もちろん卒業後何年も経過しますと、現在の評価にその間の環境因子が大いに関係することは事実ですが、高校の成績がずば抜けた人が医師に適切であったかどうかが判明できると思います。