2015年の山旅 (7月〜11月)


大 雪 山

【登山日】2015年 7月27日〜29日  【メンバー】丸屋博義、丸屋三輪子、芳村嘉一郎、芳村和子


アイヌ語でヌタプカムウシュペ(川が巡る上の山)と呼ばれた大雪山塊。50kmにわたって2000m級の山々が連なる、広大な北の山地である。一帯はまたカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)という名にふさわしく、夏は色とりどりの高山植物の咲き乱れる雲上の楽園でもある。今回はCT社のツァーに参加してこの山に登った。7月28日午後、参加者20名と旭岳山麓の天人峡温泉に着く。柱状節理の岩壁がそそり立つ渓谷沿いの温泉街は、かっては旭川市の奥座敷と呼ばれた面影も薄れ、廃業した施設のあとが目立つ。 夜、激しい降雨があり明日の天候が危ぶまれる。
7月28日、
北海道最高峰の旭岳に登る。北海道でも今年の暑さは異常なようで、昨夜はエアコンがなく、寝苦しい夜を過ごした。ロープウエイ山麓駅に着く頃から濃いガスが出始める。姿見駅でロープウェイを降りると、すでに標高1600m。旭平と呼ばれるなだらかな高原である。チングルマやホソバノキソチドリ、エゾノツガザクラ、エゾコザクラなどのお花畑の中を15分ほどで、残雪の残る「姿見の池」に来る。常時観測火山に指定されている山だけに、背後にはたくさんの噴煙が上がっている。池の周辺はチングルマの大群落で白く染められ、イワブクロやミヤマリンドウ、コマクサ、キバナシャクナゲの花も咲いていた。次第に傾斜が増す黒い砂礫地の中を、地獄谷の噴煙を見ながら登る。振り返ると、流れるガスの中に姿見の池の碧い湖面と白い残雪のコントラストが美しい。七合目の上で、高山病か熱射病か、倒れて救助を待つ人が横たわっていた。
 登るにつれて次第に霧が濃くなり、その中に偽金庫岩の黒々とした岩塊が浮かび上がる。気温が高く、ダラダラ流れる汗を拭いながら登る。岩塊の中に咲くヒメイワタデ、メアカンキンバイ、エゾヒメツメクサなどに慰められながら、金庫岩を左に見て最後の急登で2291mの旭岳頂上に着く。ちょうど正午だった。広い山頂台地に一等三角点「瓊多窟」、右手斜面やや下には小さな祠があり、砂礫のなかにチシマクモマグサの白い花が風に揺れていた。残念ながら濃い雲霧の中で、晴れていれば利尻山まで見えるという大展望は望むべくもなかった。天候が怪しいので雨が降らないうちにと、20分ほどの滞在で軽食を終えて元の道を下った。
 7月29日、
黒岳に登る。ただし旭岳からの縦走ではなく、リフト終点からの往復楽チン登山で、昨夜は層雲峡温泉に泊まった。今日はガスが去来するものの、まずまず好天気で、黒岳ロープウェイの窓からは行く手の山頂がくっきりと望めた。黒岳駅は五合目1300m地点にあり、駅舎屋上の展望台に登ると黒岳、桂月岳、凌雲岳、上川岳がずらりと並んで見えた。リフト乗り場への舗装路にはキタキツネやエゾシカの足跡が残り、傍らにはタカネトウチソウやモミジカラマツなどの花が咲いていた。冬はスキー用となるペアリフトは、僅か15分で七合目まで運び上げてくれる。昨日の旭岳に比べて距離は短いが山頂までは465mの標高差がある。ごろごろの岩塊の急勾配の道を、何度も折り返して登って行く。曇り空で日差しがないので助かるが、それでも噴き出してくる汗を絶えず拭いながら高度を上げる。ダイセツトリカブト、ハイオトギリソウ、ウメバチソウと枚挙に暇のないほどの花の楽園である。八合目からはさらに多くの高山植物と出会う。中でもチシマノキンバイソウとミヤマキンポウゲは斜面一面を黄色に染め上げていた。急なジグザグ道の連続だが、まねき岩を過ぎると頂上部が望める。最後の急坂を登り切って10時、1984mの山頂に立った。右手に三角点のあるピークが見えるが、登山路が崩壊していて立ち入り禁止になっていた。霧が晴れて昨日登った旭岳が右手遠くに、その左に北鎮岳、北海岳が並んでいたが、雲が流れてすぐに姿をかくしてしまった。山頂でもコマクサやトカチフウロ、イワツツジ、エゾヒメツメクサなど数多くの高山植物を見ることができ、「花の百名山」の名に恥じぬ美しさだった。この日も滞在20分で慌ただしく頂上を後にする。同じ道をピストン、七合目でエゾシマリスに見送って貰い、始めての北海道の山とお別れした。


天理竜王山 

【登山日】2015年9月29日 【メンバー】 嘉一郎、和子
【コースタイム】長岳寺09:15…不動石仏10:05…奥ノ院分岐10:30…山頂11:05〜11:30…長岳寺12:40
 

今年の夏は異常な高温で低山に登る気にならず、なんと大雪山以来2カ月ぶりの山歩きになった。長岳寺の駐車場に車を置いて、柿畑の横で茶の花を見たりしながら登る。今日は和子のストックも借りて、ダブルストックで歩く。始めは違和感のあった腰の辺りも、ゆっくりと登るにつれて治まり、次第に楽になった。深く抉れた溝状の急登、やや勾配の緩まる尾根道の繰り返しは、同じようなところ通るような錯覚を起こしがちだが、もう慣れたので滴る汗を拭いながら焦らずに登る。昨日まで降り続いた雨で湿気が高く、ブヨや虻が多くてウチワで追いながら歩いた。不動さんに手を合わせて、二番目のベンチで水分補給のため腰を下ろして一休み。奥ノ院への分岐からの階段道の登りも案外楽に終えて林道へ出る。今日は田龍神社の前の林道から南城址へ向かう。ここまで誰にも会わずにきたが、山頂も無人だった。
北側は晴れていて、若草山の左に旧ドリームランドの白いマッターホルンが見えた。残念ながら西は少し靄がかかったようで、金剛・葛城から二上山、大和平野に浮かぶ三山は見えたものの、明石大橋は望めなかった。貸し切りのベンチに腰を下ろして、降ろうとする頃に単独行の男性が登ってきた。「ひとりで歩いていると怖いほどです」と笑顔で、静かな山を表現された。続いて登ってきた夫婦連れと挨拶を交わし、柳本龍神社の前を回って林道へ出た。今日は同じ道をどんどん下る。途中で中年の女性、しばらくしてオッサン二人組と出会うが、結局山で会ったのはこの6人だった。青空に浮かぶ緑の山稜と朱い柿の実のコントラストが美しいので、柿畑を北へ横切って、車道を下る。いつもの三叉路より少し下で山辺の道に出た。久しぶりだったが、それほど疲れもなく楽しい半日の山歩きを終えた。


生 駒 山

【登山日】2015年10月 3日   【メンバー】芳村嘉一郎、芳村和子
【コースタイム】宝山寺10:30…岩谷滝10:55…生駒山頂11:35〜11:40…展望台12:05〜12:10…暗峠(昼食)12:30 〜13;00…鳴川峠13:37…千光寺14:15〜14:35…山口神社15:15…南生駒駅15:30
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宝山寺獅子閣が特別公開されている機会に、今までゆっくり参拝したことのない宝山寺から生駒山に登る。何処へ下るかは決めず、地図も略図の気まぐれな山歩きである。生駒から初めてケーブルに乗って、宝山寺駅で降りる。旅館街の坂道を登って一の鳥居へ。開場して間もなくの獅子閣をゆっくり見学したあと、本殿から多宝塔、奥ノ院と境内を巡拝。行者堂横から境内をでて岩谷滝を見る。梅屋敷駅踏切を渡り返して、線路沿いの石段道を登る。かなりの勾配があり、ダブルストックで登るが足取りが重く、和はもどかしそうだ。大きな広場に出て、そこの四阿で休んで水を飲む。この辺りから降りてくる人に何人か出会う。ゆっくり歩いて山上駅の横にでるが、前に来た2008年からは遊園地がリニューアルされて見違えるばかり。三角点を探して写真を撮って、前のベンチで数分休んで出発。
 電波塔も塗り替えられたり、建て替え中だったり整備が進んでいる。縦走路へ出て近道を下るが、イノシシの掘った穴が続き、荒れた道だった。ドライブウェイを横切り、展望広場で展望を楽しみ、再び縦走路を下る。見覚えのある暗峠に降り立って、峠の茶屋で夏限定メニューの「冷やしうどん」の昼食。10月というのに、それほど気温が高かった。まだ時間が早いので元山上口駅まで足を延ばす。林の中の古い縦走路を登ったので、少し遠回りになった。鳴川峠に降り立ってDWの下を潜って千光寺へ向かう。清流沿いの結構長い道を歩いて千光寺に着く。参詣者が多いと思ったら戸閉式大法会が終わったばかりで、境内では護摩を焚いた後始末がされていた。役行者の石像が並ぶ道を開山堂まで登り、参拝を終えて山門を出る。集落を抜けて再び細い谷間の道に入り、清滝石仏群の前を通る。以前の記憶通り、一面の緑に顔が染まるようだった。開けた田んぼの横の道となり、単調な道を延々と歩いて山口神社の前にでた。流石の和も、もう一山越すとは言わず電車で帰る。万歩計の数字は24,000歩を数え、二つの古寺を尋ねて満足のハイキングだった。

河内飯盛山

【登山日】2015年10月8日   【メンバー】芳村嘉一郎、芳村和子

【コースタイム】室池園地09:40〜10:30…権現滝分岐10:45…楠公寺11:25…飯盛山山頂11:35〜12:00…権現滝分岐12:20…権現滝12:35〜12:50…園地西堤13:05

FBで話題のアケボノシュスランを見に行く。久しぶりの阪奈道路を走り、家から30分ほどで案内所横駐車場に着いた。「森の工作館」の人に訊ねて花の場所を教えて貰うが、僅かに二輪咲いているだけだった。がっかりして、飯盛山へと蟹ヶ坂コースを下る。四条畷神社近くの畷厚生園まで下ってV字状に折り返し、沢沿いの急坂を登り返す。途中で左は権現滝、室池西堤の標識を見て直進。水場から楠公寺へ向かう。寺の横を行くと神社からの道に合流して、やがて懐かしい正行公の銅像が立つ山頂に出た。展望台は登れなくなっていたが、その前から大阪平野を見下ろす。ビルの林立する大阪市街の南端にあべのハルカスも見えた。正行公の銅像横で少し休んで出発。
飯盛山中の某所でアケボノシュスランの群生を見た。名の通り、葉の色と感じは繻子に、色は明け方の空のようにほんのり紅に染まる可憐な花だった。思いの外の数の多さで、満足するまで写真を撮って、しばらく花と過ごす。
 ロープのついた急坂を下って、無線中継塔のコルから楠公寺へ。寺の横を水場へ下る道は綺麗に手入れされて歩きやすい。滑りやすい急坂を分岐に下り、権現の滝への道を行く。少し坂道を行くと権現川沿いの傾斜の緩い道となり、右へ分岐すると大きな鳥居を潜り200mで権現の滝に着く。滝は落差15m、八大竜王の姿を現すという立派なものだった。ここからは急坂の連続で、疲れた足を休ませながら階段道を登る。やっと園地に入り、かるがも橋を渡って朝の駐車場に帰る。室池に帰って案内所の人にナンバンキセルが咲いていると教えて貰い、すこし先まで見に行く。他にも色んな花に出会えて、満足の一日だった。


高 円 山

【登山日】2015年11月3日 【メンバー】芳村嘉一郎、芳村和子 
【コースタイム】滝坂道入口11:05‥演習林入口11:15‥大文字火床第二画下部11:55‥火床最上部12:00~12:15…三角点12:15…最初の分岐12:40…樋之口谷池横登山口13:03‥歴史の道標識13:13 


滝坂道から演習林に入る地点に目印の赤紐をつけ、火床へ向けて直登。快晴で気温が高く、半袖シャツ一枚で登る。御蓋山展望地点から見ると、紅葉はまだ始まったばかりだった。右へ初めての分岐があり、いったん緩やかになった道は再び急坂で第二の分岐へ。暗い林の中をジグザグに登ると三つめの分岐があり、頭上の青空に向けて笹原の急坂をこなすと、大文字火床の第二画下部に着く。
今日も素晴らしい展望だった。日隠を求めて最高点へ登り、芝生に腰を下して水分とエネルギー補給。15分ほど休憩して三角点に登り、すぐ引き返してそのまま下山。
 最初の急坂を降りた分岐で左へ、初めての道に入る。大きな樹の幹にビニールが巻かれているのは、シカなどの食害を防ぐためだろうか。所々、木に巻かれた赤ビニールや小さな「火床へ」の矢印型標識がある。落葉で滑りやすい道を15分ほど下ると、やや平坦な処に出た。支那油桐の木が何本も立っている。まだ青い実や、すでに黒くなった実が無数に落ちて、新しい若い木が育ちつつあるのを見ながら行く。小川の流れに沿うようになり、もう一つ大きな池を右に見て広い道に出会う。金網に樋之口谷池と小さな大文字登山口の標識が付けてあった。舗装路を右に行くと白毫寺だが、道を横切ってさらに両側に金網の続く道を行く。左手は墓地が続き、やがて石燈籠が立ち「歴史の道」の標識のある広い道に出た。あとは町歩きで高円高校前、女子大付属中前、紀寺町、奈良町を経て近鉄奈良駅へ歩いた。


高 円 山

【登山日】2015年11月28日 【メンバー】芳村嘉一郎、芳村和子
【コースタイム】白毫寺11:00…樋之口池登山口11:15‥火床第三画下部11:50〜12:25‥樋之口池登山口13:00


2002年6月、千日町ハイキング同好会例会で初めて高円山に登った時の記録を見ると、白毫寺上の霊園からの踏み跡を辿っている。今日は「まほろば365」1月例会の二度目下見で、13年ぶりにこのルートを歩いて見るつもりだ。名鉄の北山辺ハイキングがあるらしく、白毫寺横で大勢のグループに出会った。上の車道に出て霊園の中を登ったが、すっかり様子が変わり踏み跡が見当たらない。どうも廃道になったようで、もし見つかっても「まほろば」の例会で踏み込むのは無理と判断して、前回の下山地点へ歩く。
 樋之口池横に、万葉集第六巻一〇二八「ますらをの 高円山に迫めたれば 里に下り来る むざさびぞ これ」を記した立札があり、その横から山道に入る。すぐに左は3日に降りてきた谷沿いの道、右は尾根道とY字型に分かれる。尾根道が池を見下ろすようになると荒れた竹林の中を行く。次第に傾斜が強まると倒木もあり、潜ったり越えたりして上る。雑木林の中、更に傾斜が強まると落葉で滑りやすく、下りでは注意が必要だろう。数理院地図の標高320m地点には、茅の輪潜りのような形になった面白い木の枝があり、輪を潜るとしばらくは傾斜の緩い道になった。
背の低い笹が現れると再び急な登りになって、ひょっこりと明るい火床の草原に飛び出した。大の字の第三画下の地点である。風が冷たく、慌てて薄手のダウンジャケットを羽織る。今日も見晴らしが良く、ランドマークを探してしばらく楽しんだ。
「今日は、三角点はいいでしょう」という和子の言葉で最上部まで登って引き返す。風を避けて下降点付近まで降りて、暖かいコーヒーで軽食をとる。考えてみれば朝から初めて腰を下ろしたことになる。帰りは元の道を下った。案の定、落ち葉の急坂は滑りやすく、ストックを持って来なかったのが悔やまれた。それでも谷へのゴロゴロ道の下りよりは楽で、30分ほどで登山口に帰った。白毫寺からは久しぶりに東山緑地の紅葉を楽しみ、元興寺塔址から猿沢池経由で近鉄奈良駅に歩いた。