修二会(しゅにえ) 東大寺二月堂

二月堂の本尊十一面観音に東大寺の僧侶がすべての人の罪を悔い改
めて国家の安泰と人々の豊楽を祈る法要。この行事の起源について
は、天平勝宝4年(752)東大寺の僧実忠和尚が笠置の龍穴で菩
薩たちの法要をみて二月堂を建立し始められたといわれる。
 一般によく知られるのは12日のお水取りであり、修二会の別名
ともなった行事である。深夜2時頃練行衆が直径1mもある大きな
松明に案内され、本尊に供える香水を若狭井から汲み取るお水取り
に続き、大松明を持った練行衆が内陣をかけまわる達陀(だった
ん)という妙法があり、15日には、ダッタンに使用されたダッタ
ン帽を幼児にかぶせると健康に育つという風習が残っている。
 お水取りが終わると奈良に春がおとずれるといわれている。

春日祭(申祭)

 春日大社の例祭で三大勅祭の一つ。当社は神護景雲2(768)
年、藤原氏の氏神として創建され、昔は2月と11月の上の申の日
が祭日であったが、明治以降現在の日にちに改められた。勅使は原
則として藤原姓から選ばれ、自ら神饌と供え、祭文を奏上し、祖神
と共に直会(なおらい=会食)をする氏神祭の本義がみられる。そ
の神饌は古式通りの調理された珍しい熟饌であり、祭儀は王朝の絵
巻物さながらである。

庚申まつり 庚申堂

 西新屋町庚申堂に、町内の全家庭から持ち寄ったぬいぐるみの猿
を供え、無病息災商売繁盛、夫婦円満を祈るという行事。
 当日、参拝客には、こんにゃくの味噌でんがくなどがふるまわれ
る。これは、元興寺の始祖で、日本に味噌を伝えたとされる大徳僧
正にちなむもの。

筆祭

 毛筆の元祖に感謝し、更に書道の発展を祈願するために行われる
行事。毛筆造りの元祖として仰がれている中国の蒙恬画(もうてん
がぞう)を拝殿にかかげ、祭典が行われ、その後、参拝者は書の上
達を祈願する。当日は使用済みの筆を無料で、新しい筆と交換して
くれる。使用済みの筆は筆塚の前に集めて供養され、筆に感謝の意
を捧げ、護摩火の中に投げられる。

花会式(はなえしき) 薬師寺

 本尊薬師如来に国家の安泰と五穀豊穰、万民豊楽を祈る法要。古
くは修二会と呼ばれ、2月に行われていたが、嘉承2年
(1107)堀河天皇の時、皇后の病気全快を祝い献花がなされ、
それから毎年造花を献花する「花会式」が開かれた。これが修二会
に加わって、一般に「花会式」と呼ばれるようになった。金堂本尊
の前を、梅・桃・山吹・椿・  ・百合・菊・桜・藤・牡丹の10
種類の造花で飾り、厳粛な行法が7日間にわたって行われる。5日
の夜には鬼追いの儀(午後8時〜)がある。

雛会式(ひなえしき) 法華寺

 奈良時代光明皇后より伝わる高さ30cmほどの可憐な善財童子
像(ぜんざいどうじぞう)をたくさん本尊の前にならべて祭るので
「雛会式」と呼ばれている。平安時代中期の永観2年(984)に
記された「三宝絵詞」によれば、法華寺で華厳経を講じて会式をす
る華厳会に善財童子を祭ったとある。善財童子は文殊菩薩から南行
して、あらゆる善知識を歴訪せよと教えられて、55人の師をを訪
ねた求道者で、最後に普賢菩薩にあい、十大願を聞いて悟りを開い
たと言われている。

水谷神社鎮火祭

 春日大社から北へ若草山山麓は行く途中の水谷神社の例祭で、鎌
倉時代の正応元年(1288)に始まると伝える。この祭は開花の
季節にあたり、疫病流行を鎮めるために行われる物で、当日は本殿
に桜花を献じ、その東隣の舞台で神楽が奉納され、午後1時からは
直会をかねて袮宜座(ねぎざ)狂言も演じられる。

(仏生会)潅仏会(かんぶつえ) 興福寺

 釈迦の誕生日。南円堂前に種々の花で美しくかざった小堂をり、
釈迦誕生仏を安置し、甘茶をそそぎ、お釈迦様の誕生を祝う。

大茶盛(おおちゃもり) 西大寺

 鎌倉時代から催されている大茶会。この寺の高僧叡尊が延応元年
(1239)正月御修法の後、美しい雪景色の中で鎮守社に参拝、
神前に茶を献じ、僧侶に問わず、参拝者にも茶を勧めた事に始まる
という。
 広間に色あざやかな毛せんを敷いて客席とし、西大寺の僧侶が大
茶碗に茶をたてて参会者に勧める。10月の第二日曜日にも行われ
る。

椿まつり 百毫寺

 当時の五色椿(県の天然記念物)は、一株の木に色とりどりの花
をつけることで有名。椿は寿の花といわれ、縁起のよい花をつける
ことを知ってもらうために、昭和49年からはじめられ、年々盛況
になっている。

十三まいり 弘仁寺

 13歳になる男女が着飾って、知恵と福徳を預かりにくる。虚空
菩薩像は、広大無辺の知恵と福徳を宝蔵して、衆生の求めに応じて
現在・未来の利益を受けられるという仏。当日は大般若経(享保の
宋版)の転読に続き虚空蔵法の祈祷があり、本堂前で護摩たきが行
われる。この時期には、ツツジや桜が満開になり、多くの参拝者で
にぎわう。

弘法大師正御影供(こうぼうだいししょうめいく) 大安寺

 この寺にゆかりの深い弘法大師の高徳をしのぶ法要。弘法大師の
絵像を祭り、本堂での法要のあと、境内で交通安全の大護摩法要並
びに印度の八大仏跡と四国八十八ヵ所のお砂踏みがある。当日は収
蔵庫に安置されている奈良時代の四天王・揚柳観音その他寺宝が公
開される。

献氷祭(けんぴょうさい) 氷室神社

 和銅3年(710)吉城川の上流、春日山のふもと(現在の月日
の磐)に、氷室すなわち氷の貯蔵所を設けて祭った事に由来する伝
統行事。全国の製氷業者・氷小売り業者が参列、神前に「鯉の滝登
り」などの花氷や氷柱を奉献。午後から、神社伝統の舞楽が奉納さ
れる。

聖武天皇祭 東大寺

 東大寺建立を発願された聖武天皇の忌日にちなみ、その御霊を祭
る祭式。午前中は南大門の東の聖武殿で法要があり、午後からは、
天平から室町にかけての時代行列がある。さらに大仏殿、鏡の池で
は舞楽が奏される。

管絃舞楽公開演奏会 春日大社

 春日大社の万葉植物園では5月5日の菖蒲祭の日・11月3日文
化の日の各々午後、雅楽が公演される。
 園内の池の中の島にはりだした舞台で行われ、入園者は池の周辺
の岸辺から参観できる。5月は菖蒲やさつき、11月は紅葉が美し
く春日ならでは見られない行事である。ちなみに園内には万葉集に
詠まれた約270種の植物が集められている。

薪御能 春日大社・興福寺

 薪御能は、興福寺修二会の薪迎えの行事に行われた舞楽から発
生、平安時代から始まって猿楽から能楽へと発展してきた野外能で
ある。猿楽が大成される室町時代には、四座が演じられ、最も盛況
を極めた。江戸時代には2月5日から7日間にわたり、幕府の催能
料300石を得て、観世を除く三座が毎年二座ずつ交代で奉仕し
た。現在は、11日は春日大社の「咒師走り(ししばしり)の儀」
12日は若宮社で「御社上りの儀」がそれぞれ行われた後、両日の
夕方から興福寺南大門跡の般若の芝で「南大門の儀」が行われ、金
春・金剛・室生・観世の能楽4座による能と、狂言が演じられる。
燃えさかる薪に照り映える舞い姿には、1000年の昔を偲ばせる
趣がある。