◆ローコストハウス(ビルダーの適正規模)


建築工事をどこに頼むか。建築主は勿論、我々建築家でも細心の注意を払う
処です。工務店の善し悪しで、出来栄えや建設費が大きく左右します。
規模の大きい工務店に頼むと、出来栄えは安心だげれど、高い見積もりが出て
きそうだし、小さい工務店だと経費分やすくなりそうだけど、出来栄えやアフ
ターケアが気になり出す。みたいなところがあります。

日本のビルダーは大きくなると一万人規模のハウスメーカーから一人親方の町
の工務店さんまで、数限りなくあります。この様な形態の業種は他の産業では
滅多に見られません。従業員5人の自動車メーカーや一万人規模の八百屋さん
が無い様に、業種固有の適性規模があるのです。

学生時代ゼミの教授が「工務店は机と電話があれば出来る。」と良くおっしゃ
てました。建築請負業と言う形態は、本来小人数で行なう方が利益率が良く、
建築主に対しても、安くて良いものを提供出来るものだと思います。

では何故、一万人を超える巨大ハウスメーカーが日本には存在するのでしょう。
これはひとえに資材の流通経路の不透明さにあります。日本の建設業界は仕入
れ値を公表しません。他の業種も公表する所は無いので、不自然にも何も思わ
ないのですが、アメリカでは仕入れ値の一切をクライアントに公表します。

クライアントから高いとクレームがつけばどんどん業者を入れ替えます。ビル
ダーは、あくまでもコンダクターに徹し、工程管理・予算管理・施工管理を行
なう事で、報酬を得るのです。日本の様に、下請け業者から上がってきた見積
もりに、マージンを載せて、建築主に提示する様な、建築問屋的な発想が全く
ありません。何故かと云いますと、一般流通経路が非常にオープンで、建築業
者でなくても、セメント一袋・材木一本から、建設業者と同じ値段で購入する
事が出来るのです。マージンでも載せようものなら、直ぐに高いとクレームが
つきます。マージンを載せたくても載せられないのです。

日本は流通過程のお金の流れを全く公表しません。ですから、ここに大量一括
購入する事のスケールメリットが生まれるのです。そのスケールメリットを生
かして住宅展示場を作り、テレビで大々的に宣伝し、人々のイメージに高級感
を定着させ、さらに高収益を上げる巨大ハウスメーカーが出来る土壌があるの
です。

先日羽曳野で住宅を造った際に、外国製の資材を多用しました。流通経路が明
確で、いくらで材料が工務店に渡るか、一切が建築主に見えるシステムです。
工務店さんは、いつもと勝手が違うので自社経費確保が出来ず多分赤字だった
だろうと思います。しかし、従来の建築問屋的な発想を止めてしまい、本来の
工事請負業に徹すれば、確実に収益を上げ、大手ハウスメーカーに充分対抗で
きて、しかもお金の流れが透明で、安い良質な住宅が提供出来ると思うのです。

規制緩和の流れの中で今回の様な、形態の仕事が益々増えるでしょう。この流
れに沿った工務店さんが生き残り、大手ハウスメーカーと言えども不透明な流
通経路に固執するビルダーは今後どんどん経営が苦しくなりいずれ駆逐される
でしょう。

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