◆ローコストハウス(オープンシステムの功罪)


コスト削減のポピュラーな手法に工種を減らす方法があります。私がよくするの、
タイル屋さんに石を貼ってもらったり、建具屋さんに簡単な家具をつくってもらったりします。そうする事で間接経費分が削減されるからです。
それでも予算が切迫していますと、もっと思い切った手を打たねばなりません。
仕上がりに関係の無いところのお金を削る・・・・。見積もり書を隅から隅まで見渡
しても、そんな個所は簡単に見つかりません。たった一つ大見出しの一番下に書かれてある諸経費一式。これは工事をして下さる工務店さんの間接経費です。総工費の10%程が現在の標準でしょうか。2000万円の建物で200万円の建築の仕上がりに関係の無い(無さそうに見える)お金。切羽詰まるとこれを何とか削ろうと躍起になります。

ちょっと建築に知識のある、又は似通った仕事をしている建築主なら下請けさんの手配ぐらいは自分で出来ると考えます。設計屋さんを呼んで図面を書いてもらい、申請が下りると、基礎屋さんを呼んで基礎を作ってもらい、大工さんを呼んで棟上してもらい、屋根屋さんを呼んで、屋根を葺いてもらい・・・・etc。これを繰り返していけば勝手に家は出来上がる。

少し乱暴な表現ですが、これに設計事務所が介在しアドバイスを与えながら家を完成させていくのがオープンシステムです。特に目新しい手法では無く、古くから直営方式として建設業界では認識されてきました。

メリットは前述した様に、諸経費が削減できます。その分ご自分が苦労されるのですが。
又、下請け業者と直接値交渉ができるので、もしかしたら工務店さんが上乗せしたであろうマージン分安く仕入れる事が出来ます。
また工務店さんに全面的に依頼すると、中には気の合わない下請けさんや、少し手の落ちる業者さんがいたりします、「入れ替えてくれ」と云いますと、「下請けと云えども一つの組織体だから、調和が乱れる」とか「あまり使っていない下請けさんを入れるとメンテナンスの時に気軽に動いてくれない」とか色々難癖をつけて入れ替えてくれません。
直営方式ですと、直接下請けさんと交渉しますから、業者を選ぶ権利は建築主が有します。嫌なら簡単に入れ替え出来ます。
ですから、建築知識の豊富な人で、ものを造るのが基本的に好きな人はお勧めします。私も、設計事務所の立場でですが、数回直営方式の現場を監理しました。

デメリットも勿論あります。一番気を使うのは集団としてのチームワークが取れていない集合体を如何に纏め上げるかです。工務店さんが入ってくれていれば、どこの工務店さんでも、下請け会を組織して常日頃からコミニュケーションを図る様努力しておられますが、そんな土壌が全く無い処から工事を始めなければなりません。
オーバーラップする職分をどう仕分けするか、具体的な例をあげますと、システム
キッチンは設備業者さんも扱いますが、一般に住設機器屋さんの方が仕入れ値は安いです。安いからと云って簡単に住設機器屋さんから仕入れてしまうと、設備業者さんは、見積もりに入っていないからと云って、給排水の接続をしてくれません。その辺の予備知識を事前に習得していて、これは誰の職分であるか明確に仕分けする能力が必要になります。
又、資金面でも工務店さんへの一括請負でしたら、着手・中間・竣工の3回払いが一般的ですが、直営方式でいくと毎月末には出来高で支払いが発生します。もしローンで家を建てるなら、まだ担保設定が出来てませんから、別なつなぎ融資を銀行に依頼しなければなりません。(余分な利子を払わねばなりません)又、請求された金額が妥当であるか否か、査定する能力も必要になります。

オープンシステムを奨励している設計事務所さんでしたら、上記の様なアドバイスは多分してくれると思いますが、元請け業者さんがおりませんので、品確法で制度化された10年保証制度の受け皿がありません。瑕疵が発生した場合、その原因が工事管理によるものであれば、誰にも責任を問えない事になってしまいます。

私はどうも工務店さんを排除しようとしている現行のオープンシステムが馴染めません。

削減すべきは諸経費ではなく、各工種に上乗せされている、工務店さんの中間マージンだと思うのです。工務店さんは中間マージンで利鞘を稼ぐ、建設問屋になるので無く、本来の工事管理業務で堂々と諸経費を請求すれば良いと思うのです。

一見仕上がりに何の関係も無さそうに見える、工務店諸経費こそ重要な工務店さんの収入源であり、各下請け業者の見積もりをオープンにする事こそ本来のオープンシステムであると思うのです。

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