第3回


◆ローコストハウス

昭和56年、結婚する為に1円の貯金も無いクセに大阪府と金融公庫から

融資を受けて家を600万で新築した私でしたが数年間は快適に過ごす

ことができました。しかし子供が出来て家が賑やかになっていくにつれて

手狭と感じるようになりました。

妻が「蓄えなら少しは有るので増築しよう」と言うので増築を決断しました。

家は当初から増築を想定して簡単に総二階に出来る様設計してありました

ので知り合いの大工さんを言葉巧みに誘い込んで工事してもらいました。

12坪(24帖)程の増築で約300万(@25万/坪)の出費でした。

バブルの兆しが見えていた頃なのでこの価格は破格値だったと思います。

時代背景も丁度ウカレだした頃でした。私も30歳を過ぎ独立するなら最後

のチャンスかなと思い、衝動的に会社を辞め設計事務所を開設

してしまいました。

人が人を呼ぶ時代でした。会社を離れると交友関係が一変してしまい

色々なものの考え方を知るようになり、欲に無頓着な私もステータスを

知る様になりました。

自分の家そのものには大変愛着が有りましたが環境が物足りなく

なってきました。中でも家の前の道路は西向きで幅員が4mしかなく

車の出し入れにも支障をきたします。路上駐車なんかされていれば

車はもう車庫から出てくれません。

家に対する不満なら私もプロの端くれですから自分にあった解決方法は

見つけることが出来るのですが。土地に関する不満は如何ともしがたく

大きな不満となっていきました。

南向きの歩道のある道に面した場所に居を構えたい!!

そんな願望は会社にいた頃なら夢にも思わなかったでしょう。でも

私の場合バブルがそれを可能にしてくれました。

自宅から5分程歩いた処に大手不動産会社が開発した団地が有ります。

中古住宅でしたが理想の場所が売りに出されたのです価格は5300万で

地元のK不動産の仲介物件です。しかし増築で貯金の無い私には

手も足も出ません。

数週間して同じ物件で4800万に値下げしたチラシが入りました。

500万の値引きは大きい。K不動産に自邸の査定を依頼しました。

回答は2800万。10年前に土地を購入したとき540万。建築費600万

増築費300万計1440万。手放せば10年住んで1360万の儲け。

悪くはありませんでしたが今住んでいる住宅のローンも合わせて

3000万近い借金はあまりに冒険でした。

しかし諦めきれない私は複数の不動産業者に自邸の査定を依頼しました

すると全国展開しているY不動産がなんと3800万の査定をしてくれたのです

半信半疑で「この値段で本当に売れますか?」と念を押すと

「大丈夫一ヶ月以内に売って見せます」と頼もしい返事が返ってきました

Y不動産に専任したとK不動産に話すと鼻で笑われました。

売れると信じて買う相談を妻としていたとき、K不動産がまたまた4800万

から4500万に値下げしたチラシを出しました。そのチラシを見た瞬間に

私は受話器を握っていました。

取りあえず100万円の手付けを打ち二ヶ月間売り止めにしてもらいました。

二ヶ月以内に自宅が売れなければ手付金は流れてしまいます。

後で聞いた話ですがK不動産は100万の手付金が必ず流れると

信じていたそうです。 しかし丁度一ヶ月後に値下げすることなく3800万で

自宅は売れました。買主は大阪市内で住んでいたマンションが地上げに

合い、丁度一戸建ちの家を探していたところだったそうです。

都心と地方でプロの不動産屋でも査定にコレだけ差が出ることを知りました

おかげで3000万近いローンを組むところが1500万程度で済みました。

Y不動産に後で購入した家を査定してもらったら1億の提示を受けました。

                   以下次号

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