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4月末に芽吹きの季節をむかえた上高地に出かけた.上高地は、青春の思い出の地、毎年、北アルプスに入る時、往きか、帰りに通過する場所だった。一度ゆっくり滞在してみたい、出来れば上高地帝国ホテルに・・・というのが夢だった。今回やっとその夢が実現する事になる。 母の介護が続いて、回復をむかえたとき、「息抜きをしておいで」といわれ、行き先を上高地に決める。妹が留守を引き受けると応援してくれ、2ヶ月ほどまえに申し込み、楽しみに待っていた旅だった。ところが母は突然に天国に逝ってしまう。楽しい旅の報告を聞かずに・・・ |
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いつも私達が旅に出るときは、「あなたたちの楽しみは、私のたのしみ、よい旅をしておいで」と送り出してくれた。見送りのないはじめての旅、でも母の「よい旅をネ」の声がきこえる感じだった。 |
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天気予報は、曇りから雨へとのこと、万全の準備をして出かける。京都からバスで名神、東海北陸道に乗り、ひるがの高原で昼食をとる。出発のときは曇っていた空が次第に晴れてきて、遠く白銀に輝く白山の峰が見える。大日ヶ岳を目の前に眺め、白山の三角の白い頂に胸を躍らせる。 車中から目に入る景色は、こぶしの花、山桜、いろいろな若葉の緑、何れもさわやかで美しい。昔ながらの釜トンネルを抜けて、上高地に入る。 上高地は快晴、赤い屋根の帝国ホテルも昔のままの姿を保っている。良く手入れが行き届いていて快い。荷物を置いて大正池まで歩く。1500米の高地だけに残雪が至るところにある。とけているところは滑りやすく、足元に用心しながらの散歩。芽吹きはやっとゆるみはじめたところ、からまつのけぶったような色がまた美しい。夫は写真を、私はスケッチと各々にたのしむ。田代橋からの穂高連峰は美しい。ふりむくと焼岳のどっしりとした姿、細い噴煙もみえる。 夕食はフランス料理、楽しみにしていた通りの味で満足する。 翌朝は早起きして、再び大正池へ。朝の光をうけて変化してゆく山の色をたのしむ。 朝食後は河童橋でスッケッチや写真撮影。雲一つない青空に、芽吹き始めた樹樹の生気から早春の風を身体いっぱいに吸い込む。
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帰路、高山の清見村に立ち寄りカタクリの花の群落をみる。これも毎年見に行きたいと 願っていた花。花の開花は時期と天候に左右されるため、やっと願いがかなえられる。 広い斜面一面にかたくりの花は可憐な姿をみせてくれる。 あまりにも恵まれすぎたたびに、母のエールが聞こえてくる。 お母さん、たのしい旅をありがとう。
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