◆ 紀子先生の冬休み・旅情編 ◆



■ 第3回 ■  湯煙に身をさらして

襲い掛かられたら・・・きっと、最後までされちゃっていた。

たぎらせた肉棒を裸体に擦り付けられて、性欲の生臭い滴を素肌の上にかけられるだけじゃきっと終わらない。
荒々しい息遣い、周囲に漂う性臭・・・だけど若い彼はそれだけで満足してくれるはずもなく、また私に向かって性器を勃起させてくる。
猛々しく男を主張して女である私との性交を求めてくるっ。


今頃、和美はあの彼の部屋でこの猛々しい男性器に愛されてる・・・。
恋人がいる身なのに男の愛撫に昂ぶり、性交の悦びに我を忘れて喘いでる。
突き入れられて、中をいっぱい満たされて、全てのことを忘れて一夜限りのセックスに身をゆだねて快楽を貪っているんだわ。

そして私も、この子に同じ事をされてしまうのね。
この赤黒い今にも弾けそうなペニスで淫らな女にされてしまう。

「来ないで・・・。 お願い、来ないで・・・」

迫る彼の股間に向かって力なく懇願する。
本気で逃げ出そうと思えば出来るはずなのに、見つめ続けることしか出来ない。
求めていないのに、欲しくはないはずなのに・・・あぁっ、太腿の奥が熱い。
擦れば甘い疼きが何度も湧き起こってくるっ。

したくないの! 本当に!
こんな愛のないセックス・・・いや、イヤよ! イヤなはず!
だからっ・・・見せないで! 私の中の性欲を引きずり出さないでっ!



「風情のあるこの場所で情事に耽るのも、それもまた一興かとは思いますが。  嫌がる女性を手篭めにしてまで欲求を満たすのはいかがなものでしょう?」

突然声がして私は我に返る。
背にしている岩場の影からその声はした。

こんな状況なのにとても落ち着いた声。
不意の乱入者に私も彼も息を飲んで沈黙した。
そこへ湯気の中から声の主が現れる。


「な、なんだよっ。 俺たちのこと覗いててたのか、おっさん」

邪魔された彼は気色ばんで声を荒げた。
きっと相手の姿を見て本能的に優劣をつけたのだろう。
姿を現した相手は初老の男性だったから。
白髪をオールバックにした柔和な顔立ちから、暴力で訴えるタイプではなくて知的な印象が強い。
だけど男性は彼の言動にはまったく動じないで堂々とした態度で挑発に応える。

「覗きをする理由がわたしにはないのですが・・・。 しかし女性はお困りのようだったので、気になり現れた次第です」
「彼女が困ってた? そんなわけっ」

同意を求めて彼がこちらに顔を向けるより早く、私は男性に助けを求めた。

「困ってるんです! ご迷惑でなければホテルのどなたかを呼んで・・・」

しかし男性は口元を緩ませて興奮気味の私を制する。
「わたしでは役不足ですかね? 若い頃にラグビーで鍛えたものなのですが」
確かによく見ると、年は重ねてはいるけれど引き締まった体格をしている。
年齢さえ若ければ横に立つ彼をしのいでるだろう。
それに気付いた彼も最初の威勢を失って明らかにたじろいでる。


すると男性は私たちの間に割って入って来た。
今度は男性のお尻が私の顔の前に迫る!
思わず目をそらしたけれど、チラリと見てしまったお尻の形は体格と同様に筋肉質だった。
嫌じゃなかったから少し盗み見てしまう。
濡れたタオルに透けてる引き締まったお尻の形がきれい・・・。

「あんたには関係ないだろっ。 先生とは同意の上だったんだよ。 でなきゃ混浴風呂に一緒にいないだろ?? 嫌がってる風でも、あんたが来なければさせてくれてたんだよっ」

私がバカなことをしてる間に完全に形勢は逆転してた。
一方的に自分の欲求をまくし立てる彼だったけど、足は前に進むどころか後ずさりしてる。

「そんな女でよければ、あんたが抱いてやれよ! 僕は・・・もういいんだ。 年上なんて元々興味なかったんだからっ」

今までの口説き文句を全て台無しにして捨て台詞を口にする。
じりじりと後退し、くるりと背を向けると盛大にお湯を掻き分けながら湯気の奥に消えていった・・・。




「災難でしたね。 大丈夫ですか?」

お尻を向けていた男性も振り返り、安堵で胸を撫で下ろしている私を気遣ってくれる。

「彼の言うようにここは、そういう所なんですよ。 わたしはそんな目的はなくここの風情が好きで入っているのですが、貴方のような若い女性はお気をつけたほうがよろしいでしょうね」

「は、はい。すみません・・・。 友人に騙される形で合コンめいたことになってしまって」
「ほほう・・・。 話には聞くのですがコンパという出会いはわたしの時代にはなかったので、もう少し早く現れて加わらせていただきたかったですね」

男性の笑顔でそれが冗談だとすぐにわかる。
私も微笑んで改めて男性を見ると、本当に素敵な紳士だった。
やさしさ、柔和さが浮かぶ顔に、太い首から下のがっしりした骨格。
たるんだ箇所のない胸板や腰回り・・・にっ!

「これは失礼っ。 タオルで隠していてもこの距離では、でしたな」
顔を真っ赤にした私に気付いて男性は湯船に身体を沈めてくれた。
「では、わたしは更衣室まで身体を隠せるバスタオルを調達してきますよ。 あなたを一人きりにしてしまいますが、すぐに戻りますからここで待っていただけますか」


男性はさらに私のために働いてくれようとしていた。
窮地を助けてもらったばかりでなく、そんなことまで。
さすがに私も大人としてその好意に甘えるのは心苦しかったの。

「あのっ、お気遣いなく!! 私が自分で取りに・・・」

だから慌てて湯船から立ち上がってしまう。
和美に奪われて、身体を隠すタオルもなく・・・。

「きゃ・・・っ!!」
「これは失礼っ」

自分は悪くはないのに彼は謝罪してくれた。

「ご、ごめんなさいっ。 変なものお見せしてっっ」
勢いよく立ち上がったせいで両手は大事な場所を隠せなかった。
二の腕から解放された胸が弾み、お湯で上気した乳首が揺れて、濡れた股間の茂みまでもが、きっと視界に入ってしまったに違いない。
すぐにしゃがんだけれど、女としての恥部をさらしてしまった・・・。


「あ・・・この場合、どのように答えればいいのでしょうな?」
だけど男性はひどく冷静に反応する。
「良いものを見せていただいて、と言えばいいのでしょうか? それとも、変なものではなかったですよ、とでしょうか?」

恥ずかしさで全身をピンク色に染めている私の前で真面目に悩んでいる。
「ああ。 湯気で見えませんでしたよ、が正解でしょうか? どうでしょう?」
惚けた回答だったけれど、それはつまり全部見えてしまったと言うことで・・・。
「あ、いやいや。タオルの件が先でしたな。 お待ちになっててください。 もし何かあれば声を上げてもらえれば、ウイングの俊足で駆けつけますから」

そして、恥らったまま言葉を返せない私を残して男性も湯気の向こうに消えていく。



混浴の露天風呂にいるのは変わっていないけど、異性の姿が目の前から消えて私は安堵感から深いため息を付いた。

「こういう所で、そんな気でない女はいるはずないか・・・」

岩場の向こうで別の誰かが覗いているかもしれない。
だけども、ここはそれが許されてしまう場所。
カップルは愛撫を見せ付けて刺激を求め、独り身の男女は互いの裸身を眺めて今夜の相手を品定めする・・・。

「私もその一人・・・。 なのかしら?」
岩場から注がれているかもしれない視線は、私をどう見ているのだろう?
大学生の彼が去り、救ってくれた男性がいなくなって、今度は自分がアピールしようとタイミングを見計らってるのかしら?

「そんな気・・・ないはずなのよ?」

ふっと息を吐き出して空を見上げる。
湯気で曇った夜空にいくつかの星が瞬きながら私を見下ろしていた。

両手でしっかりと抱え込んでた胸を解放してあげる。
開放感を感じ、湯船に白い肌が二つぽっかりと浮かぶ。
何度も恥らってその度に強く押し潰されてしまった乳首が静かに揺れてる。
その先がぷくっと膨らんでいるのは近くの川からの冷たい風のせいなの?
手でお湯を優しくかけてあげると、そこからも甘い疼きがこみ上げてきた。

「そんな気・・・なくないのね?」

自分で自分の身体にたずねる。
両足も大きく伸ばして、ここへ来て初めて露天の開放感に浸る。
おっぱいも、乳首も、おへそも、陰毛も・・・お湯の中で仰向けになって、恥らっていた場所を全部夜空の下にさらす。

「きもちいい・・・・・」

滑らかな肌触りのお湯に身体を浮かべて目を閉じた。
もう誰が見てても構わない。
覗き見るだけなら、気付かれずに覗くだけなら、たとえ岩場の裏で自慰に耽っていても許してあげられる。 今はそんな気持ち。
そして、それはあの男性にも言えること・・・。


「すぐに帰って来てくれるのかしら?」

「帰ってきても、このまま・・・」

「お礼がしたいもの。 今の私に出来るお礼・・・」

「見るだけなら・・・見られるだけなら・・・ね?」

両手でおっぱいをそっと持ち上げると甘い疼きが増した。
ジンと身体の奥に微熱がにじみ出す。

「性欲・・・本当はこんなに溜まってるんだから・・・・・・」

まぶたの奥で男性の整った裸が浮かんだ。
その姿が湯船に浮かぶ私に重なっていく。
身体が熱くなる・・・。
彼が帰ってきた気配がしても、このまましばらく目を閉じていよう・・・。




■ 続 ■




【ご意見ご所望をお聞かせ下さい】

お名前:
評価: ×