紀子先生の夏休み





「ねぇ、今、ヒマしてるの?? 良かったら俺達と・・・・」

盆踊り会場から伸びている夜店の列を過ぎようとした辺りで
私はうんざりした表情で声の主に振り返ってた。
大人ぶった言葉と格好はしてても、高校生以下にしか見えない男の子達に
精一杯の優しさを込めて応えてあげる。

「あなた達、まだナンパ成功してないの?? さっきも声掛けてきたでしょう?」
「あれ?・・・そうだっけ・・・ま、いいじゃん、キミも一人なんだし〜」

彼の最後の台詞に、年下相手の寛容さも吹き飛んでしまう。

「・・・・あっ、ごめんなさい!」

どうやったらそうなるのか、万有引力を無視した偶然で
私の手にしてた水の入ったヨーヨーが、見事に彼の顔にヒットして弾ける。

短い悲鳴と後に続く悪態を無視して駆け足でその場を離れると静かな公園に出ていた。




隣接学区の研修会で知り合った女性教諭に誘われて 自宅から数駅の離れたこの地区に来るのは、今日が始めてだった。 別に変な期待していなかったけれど、遠方からも大勢集まる大きなお祭と聞いて クローゼットの奥からお気に入りの浴衣を引っ張り出してきて ちょっとめかし込んでみたんだけれど、誘ってくれた彼女の子供が急に熱を出してしまい 一人で祭に出掛ける事に・・・・。 メインの盆踊りや夜店はとても楽しかったけれど 女性の一人歩きに、案の定、お祭に浮かれた男達が引っ切り無しに声をかけてきたの。 予定通りの子供連れの女性二人組みだったら、きっと敬遠されただろうけれど 酔った中年のおじさんから、さっきのような高校生ぐらいの男の子まで まるで、「一人で祭に来るのは男が目当て」と決め付けてるような態度でナンパしてくる。 まぁ、確かに・・・私の実家でも、お祭は「男女の出会いの場」になってはいるけれど その気のない相手に遠慮なく迫るのは、いくら無礼講な場でも頭にきてしまう。 私自身、こんな華やいだ場所に一人で来る虚しさは嫌と言うほど感じてたし・・・。 カップルで来てる男女の熱愛振りは、眉を顰めるほど堂々としたものだったの。 盆踊り会場から少し離れた人気のない場所で、延々とキスを続けるカップルが 等間隔で並んでる光景は、ある意味、笑えるものだったけれど 傍を通りかかってもキスを止めない二人を、微笑ましく思うほど 私の度量は広くなかったみたい。 そして、夜店の通りから外れたこの公園にも、そんなカップル達が 暗闇で堂々と愛を語っている姿を見て、私は少しイライラしてたみたい。 普通なら、もっと早く気付くはずの足音に、気付いて振り返った時にはもう 何かに突き飛ばされて、砂利道に投げ出されていたの。
「きゃっ!!」 「ちっ、どけよ! バカ女が!!」 いきなりぶつかって来た相手は謝りもしないで、私に悪態をつく。 そして、そのまま駆け出して少し離れると、こちらに振り返った。 「いい子ぶりやがって・・・いい気になるなよ、タコ!!」 その意味不明な悪態に首を傾げる間もなく、私の背後から別の声が響いた。 「お前こそバカだろ! こんな所で堂々とカツアゲしてんじゃねぇよ!!」 振り返ると、数メートル先の暗がりに男性が二人立っている。 どうやら背の高い方が言葉の主のようで ぶつかって来た男に向かって怒鳴っている。 そして、となりの背の低い男性はしきりに彼に謝っているようだった。 「・・・・気にするなよ、お前、六中だろ・・・だったら・・・・」 まだ砂利道に倒れこんだままの私に二人が近づいてくる。 「あんた、大丈夫か?? 悪いな、巻き込んじゃって・・・って、悪いのはあっちか」 背の高いがっちりした体格の男性が、転んだままの私を見下ろしている。 そして、手を差し出して私を引き起こす。 身体に似合った強い力で引っ張られて、私の身体はバネ仕掛けのように跳ね起きた。 だけど、私は彼の親切に笑顔で応えられなかったの。 「ありがとう・・・・ぁうっ!」 倒れた時には気付かなかったけれど、転んだ拍子に右足を捻ったようで 立ちあがって脚に体重をかけると、重い鈍痛で顔をしかめてしまう。 「足、ひねったのか・・・あいつ、今度会ったら慰謝料出させないとな」 「あ、すいません・・・僕のせいで、あの・・・大丈夫ですか??」 見た目に対照的な二人が、イメージ通りに対照的な言葉を私にかける。 さらに、背の低い・・・見た感じ中学生くらいの男の子の方は心配そうに私の顔を覗きこんでいた。 「あまり大丈夫じゃないけれど・・・救急車を呼ぶほどじゃないと思うわ」 こんな場合、年下の男の子には心配をかけさせない言葉がベターなんだろうけれど 正直に今の足首の痛みを、彼に伝える。 「一人でお祭に来なきゃ、カツアゲになんかに会わないで済んだのに・・・・」 そう言ってふさぎ込んでしまった彼の反応を見て 自分の配慮の無さに、教師としての良心がチクリと痛んだ。 彼から見えない位置で背の高い男性の腕にしっかり掴まりながら 足が大丈夫なように振る舞い、精一杯の笑顔を作ってみせた。 「もう、バカね・・・救急車なんて冗談よ! 少し、からかっただけで、そんな顔して。  ほら! 大丈夫でしょ?? こんなんじゃ、慰謝料なんてもらえないわ」 見た目、元気に振舞う私を見て、彼の気持ちも幾分か落ち着いたみたい。 うつむいた顔を上げて、少し引きつった笑顔を私に向けてくれる。 でも、彼の影で腕を掴んでた背の高い男性の顔は曇ったまま、私を見下ろしてたの。
「じゃあ、僕はこれで・・・清水先輩、ありがとうございました」 何度も振り返り頭を下げて、彼は公園の出口方向へ歩いて行った。 「まだ、祭を楽しみたい」と私と背の高い彼は、その場に残って見送る。 そして、彼が視界から消えると、私は掴んでいた腕を離して 痛めた足に負担をかけないように、不恰好にバランスを取った。 「悪いな、気を使わせて・・・足、かなり痛むんだろ??」 さっきまで眉を吊り上げていた彼の表情が緩んで 端整な顔立ちの中に、少年のような澄んだ瞳が私を見つめる。 「え、ええ・・・少し・・・ううん、大分かな??」 180センチはある上背と、がっしりした胸板で 最初、私はてっきり同年代の男性だと思い込んでしまってた。 だけど、こうして間近で見る心配げに見つめるその顔はまだ幼さを残していて 立派な体格を差し引くと、高校生以上には見えない。 「無理するなよ、痛むなら俺が・・・・」 そう言うと彼は、私の前にしゃがみ込む。 「あんたが恥ずかしくないなら、駅までおぶって行くから」 きっと、彼が年上の男性だったらこんなに躊躇ったりはしなかったと思う。 周囲には彼が年下に見えなくても、私自身の中でおぶられる事に強い抵抗があった。 「無理にとは言わないけどさ・・・ここじゃタクシーは呼べないし、救急車だって。  もし、おぶられる姿を誰かに見られたら具合が悪いなら  相手が彼氏なら、俺、一発ぐらいだったら殴られても構わないからさ」 すごく素直な視線で私を見る彼の言葉に、嘘や誇張は感じられない。 戸惑っていた私も、思わず素直に本音で話してしまう。 「か、彼氏はいないわ・・・今日一人で来たの、でも・・・・」 「だったら、なおさらだろ?? この辺、強引なナンパも多いからな」 彼の言う通りだった。 足首を痛めたまま、さっきのようには逃げられない・・・。 犯罪までいかなくても、酷く嫌な思いをする恐れは十分にあった。 「・・・・でも」 それに、カツアゲされていた後輩を救った彼なら、ボディーガード役には最適だった。 ここから駅まで、まだ距離があるけれど平気で私をおぶって連れていってくれそう・・・。 「だけど・・・わたし・・・・」 問題は無いはずなりに、教師としての体裁がネックになって 私が思案している最中も、彼は道に屈んで待ち続けてくれている。 そんな彼の広い背中を見ていると、高校生だから・・・教師だからと言う 自身の内面の体裁も、どうでも良くなってくる・・・。 ただ、彼に身体を預ける前に確かめたい事が一つだけあった。 「・・・ねぇ、一つ約束して欲しいの」 「エッチな事はしないで・・・・だろ??」 「えっ?・・・ええ」 「しないよ、絶対・・・約束する。それに、俺には彼女いるしさ」 彼の即答に面食らって、私は思案する前に彼の背中に身体を預けていた。
「俺、深沢徹・・・あんたは??」 しばらくして、彼が自己紹介する。 彼の体力なら、数分で公園を抜けてタクシーの拾える道に出られただろうけれど 私の足の痛みを気遣っくれてるのか、ゆっくりした歩みで 二人はまだ公園中央の噴水の前を通っていた。 彼はそう約束してくれたけれど、出来るだけエッチな刺激は与えないよう 私は身体を後ろに反らして、彼の背中に胸を密着させない努力を続ける。 そんな肉体的な苦労と、長い沈黙の気苦労で 私は、突然の彼の問いに素直に応じてしまってた。 「田辺よ・・・田辺紀子」 「田辺って、聖北だろ??・・・あれ、違ったかな」 私は彼が何を言ってるのかすぐには分からなかった。 「この辺でお嬢様校って聖北女子ぐらいだものな・・・あ、でも  高校がこっちだとは限らないか、盆休みで親の実家に帰ってるとか・・・」 その時になってようやく、彼が大きな勘違いしている事に気付いたの。 「あ、あの・・・深沢君、わたし・・・ね」 「まぁ、高校なんてどこでもいいか・・・悪いな、変な事聞いて」 やだ、私・・・高校生に見られてる!? いくら薄暗い公園だからと言っても、中学教師を女子高生と間違うなんて・・・でも・・・。 妙なもので、彼が年上だったら、幼く見られて気分を害してたかも知れない。 だけど、高校生の彼に同年輩だと思われるのは 嫌じゃないどころか・・・どうしてだろう、ほんの少しだけど嬉しく感じてしまう。 お気に入りの浴衣のせい・・・?? それとも、声が可愛い・・・とか? さっきまで、年下の男の子から一年分のナンパをされた時には こんな浮かれた気持ちにはならなかったのに この心地良さを、駅までの短い間だけど味わっていたいと 私は、彼の勘違いを無理矢理正そうとは思わなかったの。
「ううん、いいの・・・でも、どうして聖北女子高校だなんて思ったの??」 「田辺って、なんか、お嬢様っぽい喋り方するだろ・・・俺が知ってる女子で  そんな喋り方するのって、聖北しか思い浮かばないからな」 きっと、女子高生に見られて浮かれてたのかも知れない。 彼の言葉の中に強い好奇心が芽生えてしまった私は 彼のプライベートに思慮もなく踏みこんでしまってた。 「深沢君の彼女って・・・聖北の子なのね??」 「・・・・えっ?」 彼の足が、ものの見事にピタリと止まる。 「怒らずに聞いてね・・・今日は、その聖北の彼女とお祭に行こうとしたのね。  でも、何かがあって深沢君一人になって・・・そんな時、聖北の生徒っぽい  私に出会ったから、こんなに親切にしてくれてる・・・・違うかな??」 彼が黙ってしまったので、私は一瞬、怒鳴られるかと身構えたけど それは杞憂に終わった。 「田辺の高校って、心理学でも教えてくれるのか??」 怒鳴るどころかさっきよりも優しい声で応える彼。 「ああ、そうだよ・・・真奈美、祭はあいつの方から誘ってくれたんだけど  少し前に俺が原因で、ちょっと喧嘩してさ・・・・」 立ち止まったまま、少し言い難そうに尋ねてくる。 「田辺も・・・聖北じゃなくても、お嬢様校なんだろ??  だったら分かるかな・・・お嬢様な女の子の気持ちつーか・・・その・・・」 彼の親切心がどこから来てるのか、全部は分からないけれど 私と同じ雰囲気の「女の子の気持ち」を知りたい・・・が 親切の原因になっている事は、確かなようだったの。
「あいつは、今まで付き合った女とはだいぶ・・・住む世界が違う、つーか・・・」 直接面識のない聖北の女子高生が、どれだけお嬢様なのかは分からないけれど 他の場所で何度か目にしてた、寸分の隙のない制服姿を見ただけでも そのお嬢様度の高さは想像がつく。 「なぜか、俺と離れて歩きたがるんだよな・・・せっかくのデートだってのに」 「ふーん・・・深沢君は、その彼女と寄り添いたいんだ??」 「あ、当たり前だろ・・・好き同士なんだし・・・俺は男で、あいつは女なんだから・・・」 不良っぽい彼とお嬢様な彼女・・・男女感の意識の垣根は少し高いみたい。 「デートでいい雰囲気になったら、手ぐらいなら繋げるでしょう??」 「試してみたさ・・・だけど、いつも逃げられるんだ、男として自信なくすよ・・・」 「ふふふ、今までのテクニックが彼女には通用しないんだ」 「わ、悪かったな・・・これでも、男らしい所が魅力だって言われて来たんだぜ」 きっと、彼女もそんな彼に惹かれたんだと思う・・・だけど、お嬢様体質が 無意識にそれを拒絶してるのかもしれない。 男らしさと優しさを持ったいい彼氏だし、彼女だって女の子だから 好きな人の傍にいたい・・・抱き締められたいって、思わない訳ないもの。 「そうね、自分に自信なくす必要はないと思う・・・。  でも、今までの女性経験は忘れた方がいいかも知れないわね。  男だから仕方ないけど・・・せっかちになっちゃダメ、自然体で接したらどうかしら?」 「・・・・自然体で・・・か」 私のアドバイスに、彼は思案げにうつむいて考え込む。 でも、しばらく固まったままでいる彼に心配になる私。 「・・・・深沢くん??」 「自然体ってさ・・・今みたいなのを言うのかな?」 「・・・・え??」
照れくさそうにしてる彼に、私は自分が彼に身体を摺り寄せてる事に気付いてハッとする。 いつの間にか、彼の首に両手を回し身体を密着させてしまってたの。 そのまま頬にキス出来るほど顔を寄せ、胸だって・・・・。 「お嬢様なのに、けっこう胸・・・あるんだな」 「な・・・っ、ちょっと止めてよ! 私、そんなつもりで・・・・つぅっ!!」 自分の大胆さに慌てた私は、反射的にこの状況から逃れようと彼の背中の上で暴れる。 でも、すぐに痛めてた足首が先に悲鳴を上げてしまった。 「お、おい・・・大丈夫か??」 「っ・・・ぅ、ちょっと、大丈夫じゃない・・・」 痛みを堪えてる私の声に彼は動揺しながらも、素早く周囲に首を巡らせる。 近くにベンチを見つけると、そこまで私を連れて行く。 「あ、悪いな・・・怪我人なんだ、休ませてもらうぜ」 ベンチの先客に一言断わってから、おぶった私をベンチに降ろし さっき通った公園の噴水まで駆けて行く・・・。 暗がりのベンチで濃厚な愛を囁き合っていた運の悪いカップルは 私に非難の目を向けてから、公園の奥へと消えていった。 そして、彼らと入れ替わるように、深沢君がハンカチに水を染み込ませて戻って来たの。
「悪い・・・変な事言って動揺させてさ」 「う、ううん・・・深沢君は悪くないわ・・・」 浴衣のせいで膝を大きく曲げられない私は ベンチに座ったまま足を投げ出して、彼に痛めた足首を冷やしてもらう。 濡れたハンカチを巻き付けて扇いでもらうと、冷感が火照った痛みを癒してくれる。 「応急措置だけど、少しは楽になるだろ??」 足元で大柄な身体を窮屈そうに屈めて、真剣な顔をして扇いでくれている彼の姿に 私は懺悔の気持ちと母性を強く感じてしまう。 そんな私の雰囲気を察したのか、いつの間にか彼も私を見上げでいた。 介抱する側とされる側、見上げる瞳と見下ろす目・・・・。 それは、公園のあちこちで繰り返されてた愛を語り合う男女の光景と同じだったけれど でも、不思議と恥ずかしさはなくて、二人は視線を絡めたまま言葉を交わしてたの。 「あのさ・・・また、嫌な気持ちにさせるかも知れないけどさ  自然体で付き合うって、こんな感じなのかな??  俺、田辺の目を見つめながら、脚・・・触ってるけど  なぜかイヤらしい気持ちにならないんだ・・・こんなに綺麗な脚なのに・・・・」 私も、素足を男の子に摩られながら見つめられてるのに イヤな気持ちも、イヤらしさも湧き起こってこない・・・。 彼の私を労ってくれる気持ちが、私の胸の中に甘い切なさを満たしてくれて 逆に心地良く感じるくらい・・・・。 でも、彼の方が私より理性的だったみたい。 恋人同士の甘い戯れにしか見えない状況から、我に返る。 「悪い・・・・俺、真奈美に拒絶されてイラついてんだな。  今日会ったばかりの田辺を、真奈美の代わりに見てるんだな・・・」 摩っていた手を止めて立ち上がると、私から少し離れてベンチに座る。 「ほんとに悪い・・・親身にアドバイスしてくれたのに、こんな事して。  真奈美の気持ち知りたいって思う前に、自分のヤなとこ直さないといけないな・・・」 照れ笑いしながら星を見上げてる彼の物憂げな横顔に 私の胸の中の切なさが疼いてしまう。 まだ痛い足を引きずりながら、ベンチの端まで辿り着くと 彼は驚いた表情で私を見つめた。
「他の子には・・・もっと強引だったの??」 好奇心を込めた瞳で見つめると、彼は照れて横を向いた。 「ま、まぁな・・・男らしさが好き、なんて言われたら少しは自惚れるだろ?」 「例えば・・・どんな風に??」 今度は彼の方から私を見つめる。 「どんなって・・・田辺みたいなお嬢様には、ちょっと過激だよ」 そう言って苦笑いする彼だけど、その目は明らかに動揺してたの。 「お嬢様だって・・・女の子なら、男らしさに惹かれるわ。  それが少し強引でも、驚きはするけれど拒絶はしないと思う。  だって、好きな人なのよ・・・その人らしさも含めて好きになったんだもの。  男らしくて強引な人が好きなら、彼女はそれを望むわ・・・そうされたいって思うはずよ」 ベンチに手をついて、顔を彼に寄せる・・・。 凛々しい眉が、何度も表情を変えて彼の動揺を私に伝える。 「知りたいんでしょう??・・・お嬢様な女の子の事・・・。  大好きな子を傷付けたくないけど、自分の欲求も押さえられない。  その気持ち凄く分かるから・・・いいのよ・・・試してみても。  私もお嬢様だもの・・・それに、深沢くんの事・・・・・」 それまで動揺してた彼の瞳が、真っ直ぐ私を見下ろしてる。 「言っておくけど・・・途中で止めるなんて、器用な事出来ないからな」 「うん・・・不器用でも構わないから・・・ううん、きっとそれがいいと思う」 息がかかる距離まで顔を寄せた途端、私は強い力で彼の胸元に抱き寄せられてたの。
「ぁ・・・っ! 深沢くん・・・ぁんっ・・・んんんっっ」 まるで胸板で押し潰されるように強く抱き締められて小さな悲鳴を上げた私を 彼の唇が覆い被さって黙らせる。 重なった唇を強く吸引されて、私は釣り上げられた魚のように彼に引き寄せられる。 そして身動き出来ない私の身体を、その大きな手が乱暴に撫でまわしていく。 「あ・・・ふぅぅっ・・・ふぅぅン、は・・・ンンっっ」 吸盤のように強く唇を吸われ息苦しさに身悶えても、彼は容赦してくれなかった。 片方の手で抱き締められ、片方の手でお尻を弄られてる。 そして、お尻の上を這い回る手は 浴衣の上からでも、その形がはっきり分かるほど強く肌に食い込んでたの。 「凄くいい尻だな・・・ずっと触っていたい。いいだろ??」 「あ・・・ン、深沢くん・・・そんなに強くなんて・・・・」 一旦、呼吸できなくなるほどのキスから解放されたのは 私のお尻を両手で弄るためだったの。 両脇から抱きかかえられた私は、難なく彼の膝の上に座らされてしまう。 そしてその手は、お尻を・・・まるでお餅を捏ね回すように強引に愛撫し始めたの。 「ふ、深沢くん・・・っ、あン! ぁぁぁ・・・こんな格好、恥ずかしいっ」 今座っているベンチは公園の奥にあったけど、周囲にはカップルの影がたくさんあった。 きっとベンチ近くのカップルには、街路灯の薄明かりでも 浴衣姿の女性がベンチに座る男に抱きかかえられてる姿は見えているはずだった。 目を凝らせば、彼女が浴衣の上からお尻を弄られてる様子まで見えてしまうかも知れない。 でも、そんな私の抗議に彼は耳を貸してはくれなかった。 「逆に俺は皆に見せびらかしたいくらいだ、紀子の揉み応えのある尻・・・・」 「そんな・・・深沢くん・・・見せびらかすなんて・・・ぁぁっ、止めてぇぇ」 「止めて欲しいのか?? ホントに止めてもいいんだな?  紀子を、今の恥ずかしさを忘れるくらい感じさせてやるのに・・・・。  誰かが見てても構わなくなるほど、悶えさせてやるのに・・・止めていいんだな??」 私のお尻を強く弄りながら、耳元でそう囁く彼・・・。 痛みすら感じるほど強く弄ばれてるお尻とは対照的に 息を吹きかけられ、耳たぶを優しく甘噛みされて 私の身体の中で二つの刺激が入り混じり合い始めてたの。 「ぁぁぁ・・・やぁん・・・深沢・・・くんっ、ダメぇぇ・・・」 あれほど強かったお尻への刺激が和らいで、甘い切なさが湧き起こり 耳はより敏感になって、彼の荒い息がかかるだけで全身を刷毛で撫でられる感覚に身悶えてしまう。 「紀子が止めて欲しいのなら、止めてやるよ・・・さぁ、どっちにする??」 「深沢・・・くぅん・・・ぁ、ぁぁぁ・・・」 「徹って呼んでくれよ、なっ、いいんだろ?? こうされて感じてるんだろ?」 「とおる・・・くんっ、そんな事・・・はぁぁ、ぁぁ、ぁぁ・・・ぁぁぁン」 恥ずかしいのに・・・年上なのに・・・私は、高校生の強引な愛撫に理性をなくしてしまいそうだった。 自分から誘った事だけど・・・こんなに感じさせられて、こんなに昂ぶらされるなんて信じられない! 彼の言う通り、ここが公園で他のカップルの視線も痛いほど感じるのに どうにでも良くなってきちゃう・・・! 耳を・・・うなじを、優しくキスされて・・・優しく舐め上げられると 強く乱暴に弄ばれてるお尻の痛みが、甘い刺激に中和されてるの。 そして、お尻の肉が形を変える度、その奥に潜む私の大切な所が歪んで より甘くて淫らな官能が、背筋を駆け上ってしまう・・・。 「紀子・・・素直に言ってくれよ・・・俺のやり方、嫌じゃないんだろ?  お嬢様でも感じてくれるよな??  その声・・・俺の愛撫に感じてくれてるんだよな?」 こんなに甘く耳をしゃぶりながら・・・こんなに強引にお尻を愛撫しながら 彼は凄く真剣に、私に自分の評価を尋ねてくる・・・。 まだ手も繋いでいない彼女と私をダブらせて、自分をぶつけてくる・・・。 そんな荒々しさ惹かれているのに、今の私は彼女のように一歩前に踏み出せない。 彼女はお嬢様だから・・・私は教師だから、湧きあがる肉欲を閉じ込めてしまう。 こんな彼に惹かれてるのに・・・本当はもっと強引にされたいのに・・・私! 「やっぱり、ダメ・・・なのか?? 俺じゃ、紀子を・・・真奈美を抱けないのか?」 執拗な彼のキスが止む・・・お尻の手が止まる・・・。 ううん! 違うの・・・違うのよ!! 徹くんの愛撫・・・感じてるわ・・・凄く感じるの! だから、止めて欲しくない! 続けて欲しいの!! もう少しで・・・あともう少しで、自分の殻が破れる。 溢れる悦びを、あなたにぶつけられるの!! だから・・・だから、自信を持って・・・紀子を感じさせてぇ!
「徹くん・・・ぁぁ、いいっ・・・お尻が、はぁぁ、こんなに感じるの!」 「・・・・えっ??」 突然、私にしがみ付かれて彼の口から驚きの声がこぼれる。 「気持ちいい・・・気持ちいいから・・・だから、お願い・・・!  続けてぇ、止めないでぇぇ!!  紀子に恥ずかしさを忘れさせてっ! 徹くんだけ感じさせて!!」 しがみ付きながら、はしたなく床の裾を広げて彼の腰を跨ぎ、厚い胸板に胸押し付ける。 動物がじゃれ付くように、彼の身体に自分の身体を擦り付けながら、切ない声を上げ続ける。 「徹くん・・・ごめんね、私、素直じゃなくて・・・こんなに好きな気持ちがいっぱいなのに  こんなに愛されて感じてるのに・・・素直じゃなくて、本当にごめんね」 「・・・・・のりこ」 今度は、私の方から彼の唇にむしゃぶりつく・・・。 彼の唾液を全部飲み干すつもりで、強く唇を吸い立て続ける。 「ンっ・・・んンンっ! はぁぁぁあン!!」 私の告白に応えて、彼の愛撫が始まると 私はその甘美な刺激に、我を忘れて切なく喘いだ! 「感じてくれるんだな紀子・・・いいんだよな、このまま最後までいっても」 両方の胸を鷲掴みにされ弄ばれながら、彼が尋ねる。 腰を密着させて感じる、彼の股間のペニスは もう我慢しきれないほど、硬く大きく勃起して自己主張してる。 「徹くんがいいなら・・・ううん! 違う、私が欲しいの!!  徹くんので貫いて欲しいの〜っっ!」
「そんなに欲しいのなら・・・自分で入れてみるか?」 「ぁああっ、そんな意地悪・・・ぁっ、ぁぁあ! はぅぅっ!!」 浴衣の裾を捲り上げられ、たった一枚の下着を剥ぎ取られた格好で 私は彼の膝の上に跨って身悶えてた。 自信を取り戻した彼の太い指が剥き出しの秘部に添えられ 容赦なく淫らに充血した陰唇を弄んで、交尾の潤滑油を弄り出してる・・・。 「ほら、これで貫いて欲しいんだろ?? 遠慮するなよ」 指だけでも、こんなに狂おしいのに 今握らされてる彼のペニスが私の中に入ってきたら・・・っ! そう思うだけで、私は軽く果ててしまいそうになる。 「紀子のここがこんなに欲しがってる・・・ご褒美、くれてやれよ」 「は・・・っ! はぁ、ぁぁぁあン!!」 ペニスの代わりに、指の・・・ほんの先が膣肉を押し広げただけで 私は小さな絶頂感に襲われて、身体を震わしながら彼にしがみ付く! 「紀子の中はキツそうだな・・・いいんだぜ、指だけでイカせてやっても」 そう言って、指先を円を描くように回されると まるで直接頭の中を掻き回されてるようで 本当にそれだけでイッてしまいそうになる。 無意識に腰が上下して、より深く指の挿入を求めてしまいそうになるのを 必死に堪えて、私は、彼のペニスの先に自分の秘部をあてがった。 「指じゃ、徹くんが良くないわ・・・今日は大丈夫だから・・・徹くんも  紀子と一緒に気持ちよくなって・・・・ねっ、一緒にイキたいの・・・ねっ!」 握りきれないくらい太く充血した男性器の先が、秘肉を押し分けて膣の入り口に辿り着く。 溢れ出した愛液をたっぷり絡めてから、少しずつ・・・少しずつ腰を落としていく・・・・。 「あ・・・っく! キツい・・・っっ!!」 ペニスの先が膣口を強引に押し広げて鋭い痛みが走り、私に挿入を躊躇させる。 でも、どれだけ痛くても彼のが欲しかったの・・・。 セックスで一つに繋がるあの快感を、目の前で心配げに見つめる彼と共有したかった。 彼の男らしさ、優しさと同じくらい強く その逞しい男性器にも、私は本気で惹かれてしまってたの。 前後に腰を揺らしながら、少しずつ痛みを馴染ませていく・・・。 「紀子・・・初めてなら・・・・」 自信を取り戻して、強引に私を弄ぶ険しい表情から打って変わって 彼の目が優しく私を見つめている。 「無理しなくていいんだぜ・・・紀子から誘ってきた事だけど  初めに言ったように、本当に止めたいなら、止めてもいいんだからな・・・」 「・・・・・えっ??」 痛みも忘れて、私は驚きの声を上げていたの。 お尻を弄んでいた時、囁いてた言葉は 淫らな官能を煽る言葉じゃなくて彼の本心だったなんて・・・。 「俺、紀子をこんなに感じさせてやれたから・・・十分なんだ、自信持てたんだ。  だから、これ以上紀子が無理しなくても・・・」 相手の事を本当に想いながら自分のスタイルを貫く、彼の男らしさに 私は胸が苦しいほど熱く満たされる。 「徹くん・・・私、全然、お嬢様なんかじゃないの・・・。  セックスも初めてじゃないし・・・それに、高校生じゃ・・・・」 私の言葉を彼の唇が覆い隠す。 「紀子って、凄くいい女だよ・・・それでいいじゃないか?  年上でも年下でも・・・俺、真奈美がいなかったら、強引に奪ってたよ」 「強引に・・・・?? 押し倒してまで?」 「いいや・・・紀子が折れるまで、毎日、告白し続けてたさ」 もしもの世界・・・彼の努力はそう長くは必要ないかもしれない。 「押し倒されても、私・・・拒絶できなかったかも・・・。  だって、こんなに感じてるんだもの・・・発情させられてるんだもの。  いいよね?? 真奈美さんには悪いけど・・・徹くんとセックスしても・・・  徹くんのオチ○チンで、はしたなくイッちゃっても・・・いいでしょう??」 「ああ、真奈美には許してもらうまで土下座して謝るよ・・・。  年上のおばさんに弄ばれて、強引に押し倒されて抵抗できなかったって・・・さ」 後半の言葉には笑いが混じっていたけれど、少しショックな部分もあった。 「年上って、高校生にはおばさんなのね・・・・」 「彼女がいるのに本気で惚れてしまいそうなくらい、魅力的なおばさんですよ・・・紀子さんは」
自然に引き合わさった唇を重ねながら、私はゆっくりと腰を沈めていく・・・。 勃起したペニスの硬く熱い存在感が、膣の中に満ちていって 私は悦びの喘ぎを上げていた。 「徹くぅぅ・・・んっ!! はぁぁぁっ、大きいわ・・・奥まで入りきらないっ!」 「いいよ、紀子さん・・・っ、無理しないで・・・」 「ううん、無理したいの・・・好きになっちゃった子のオチ○チンを、全部食べたいの!」 反動をつけて腰を沈ませていくうち・・・何度目かに、ついに二人は完全に繋がったの。 「あぁぁぁ・・・ンっ、入っちゃった・・・奥まで、徹くんのが奥まで入ってるぅ!」 逞しい男性器に串刺しされて、身動き出来ないくらい身体が痺れてるのに 私の中のメスの本能は、腰を前後にゆすり始めてた。 彼の濃い陰毛が、充血して敏感になった陰唇や包皮に包まれたクリトリスを 容赦なく擦り刺激する! 「はぁぁンン! クリトリスが擦れてる・・・痺れて・・・ぁぁっ、凄くいい!!」 彼の肩に掴まりながら、前後に腰を振ってクリトリスからの快楽を貪る! 「ぁあン! ぁああン!! 気持ちいい・・・徹くんのが気持ちいいの!!」 それだけでもイってしまいそうだったけれど 苦しげな喘ぎを零す私を気遣って、下でじっとしてる彼にもこの官能をあげたくなった私は 腰の動きを、前後から上下へ変えて行ったの。 「紀子さん・・・無理は・・・んんンっ、ぁぁぁぁ・・・」 「気持ちいい?? ねぇ、徹くんも気持ちいいの!?」 「凄いです・・・凄く締まって・・・たまらなく絡まってくる・・・ぅぅ」 あれだけキツかったペニスの存在感も、上下に出し入れし始めると その大きさに膣が馴染んで、スムーズに抽送出来た。 私の腰が上下する度、溢れ出した潤滑油が卑猥な音をあたりに撒き散らす。 きっと、もう・・・夜の公園でカップルを覗く男達が集まって ベンチで抱き合いながら交尾してる二人を、その股間を膨らませながら見ているに違いなかった。 でも、そんな彼らのより数倍逞しい彼のペニスが膣から引き抜かれようとすると その大きくエラの張り出した亀頭に、膣の肉壁を掻き毟られて 私の中に最後に残った理性までもが弾け飛んでしまう! 「徹くん!・・・徹くぅんっ!! たまらない! たまらないの!!  公園でセックスしてるのに、はしたないセックスを見られてるのに、止まらないの!  気持ちよくって・・・気持ちよくって・・・叫びたい!!  好きよ、徹くん・・・紀子、好きになっちゃう・・・忘れられなくなっちゃう!  どうしよう・・・このままイッたら・・・徹くんを忘れられない!!  でも、イキたい! オマ○コに射精されてイカせて欲しいっっ!!  ダメぇぇ! イッちゃうわ・・・紀子、徹くん無しにいられなくなっちゃう!!」 そう叫びながら何度もペニスを突き入れて、最後に腰を深く沈めると 私は、彼に全てを捧げるように抱き締めた! 「紀子さん・・・・っっ! ゴメン!!」 「あぁぁっ!? 徹くんっ、イヤぁぁぁぁ・・・・!!」
公園を抜けた幹線道路でタクシーを拾った私は、お祭の帰りで混雑した駅前に差し掛かった。 ノロノロとタクシーが進む中、駅の一角に目が止まる。 道に面した電話ボックスの前に人だかりが出来てて その中に見知った顔の男性が座りこんでいた。 ううん、正確には正座をして頭を地面に摩り付けてる・・・・。 彼の前には、明るい色の浴衣を着た女の子。 凄く戸惑ってはいるけれど、優しい目で彼を見下ろしてる。 タクシーがその場を走り去る直前、不意に顔を上げた彼女と視線が交錯する。 透けるように白い肌に長い黒髪をアップにして、澄んだ瞳をこちらに向けている。 聡明な彼女なら、私の視線の意味に気付いてたかもしれない・・・。 そして、再び視線を彼に落とした時、凄く優しい微笑みを浮かべていたの。 ほんと、いい子・・・よね。徹くん。 彼女なら、きっと今日の事も許してくれるはず・・・。 喧嘩したのに、あなたを追いかけてきてくれた子だもの。 あなたの誠意と男らしさと、優しさと強引さなら きっと、彼女と結ばれる日も近いはずよ。 だって、あれだけ快楽を感じながら我慢し通したんですもの・・・。 結局、お嬢様との大人の付き合い方は未習得。 自身の情欲も、お互い最後では満たされなかったけれど きっと、それで良かったんだと思う・・・。 だって、あの時あなたに言った言葉は本心だったもの。 身体があなたで満たされてたら、私、あんなに素敵な彼女の前で きっと、タクシーを降りて土下座してるあなたを抱き締めてる。 だから、私はこのまま、あなたの前から消えるわ。 その代わり・・・ねっ、その代わり 今晩は、ベッドの上であなたの残り香を抱き締めながら 妄想の中で果てても、いい? いいでしょう?? ふふふ・・・でもね。 妄想の中じゃ、あなたは世話はかかるけれど私の可愛い教え子・・・。 射精してイカせてくれるまで許してあげないんだから!     「紀子先生の夏休み」・・・・完


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