ジャーマンオープン参戦記
                                        

1. ジャーマンオープン(GOC)

   ジャーマンオープンチャンピオンシップス(GOC)はドイツマンハイムで開催されているヨーロッパでもっ
  とも大きなダンス競技大会のうちの一つといわれている一大ダンスイベントです。

  私たちは今年、毎年参加しているブラックプール全英選手権に仕事の都合で参加できなかったため、
  夏休みを利用してチャレンジしてみようということになりました。

   GOCはフランクフルトから電車で40分ほどのマンハイムの中心にあるコングレスセンターという大きな会
  場で毎年8月末に開かれています。ここは会議場、展示場、大ホールがある総合コンベンションセンターで
  日本でいえば幕張メッセのような会場です。

   GOCの主催がどういう組織か私は知りませんが、行われる種目としては主にダンススポーツ中心ですが、
  そのほかにもいくつかの他のジャンルのダンスの競技が行われています。アマチュア部門はIDSFルールに
  沿ったったカテゴリーにわかれているようですが、プログラムに記されている種目をみるとコンビネーションと
  かジャズダンスやタンゴアルゼンチーノとかもあるようです。実際、私もジャズフォーメーションの競技を試合
  の間に少しみることができました。

   出場組数もそれぞれの種目で全英を越えており、アダルトスタンダードは500組強、またシニアスタンダー
  ドも300組近いエントリーがあります。ただし、全英と違い日本のプロ選手のエントリーがほとんどないため、 
  プロ部門のエントリー数は全英に比べ極端に少ないようです。

   どうやらGOCはアマチュア中心の競技イベントのようです。また不思議なことに英国からの参戦が少なく、 
  主催国ドイツを始め、ドイツ近隣諸国の、オーストリア、フランス、ベルギー、またリトアニア等の東欧諸国、  
  スペイン,ロシア、またイタリアの選手も多く参加しています。例によってイタリアからは国内のたくさんのダ 
  ンスチームがバスを連ねてやってきています。

プログラムに記載されている種目
Adults Latein
Adults Standard
EM Professionals Latein
Jazz-Formation
Juniors I Kombination
Juniors I Latein
Juniors I Standard
Juniors II Kombination
Juniors II Latein
Juniors II Standard
Juveniles Kombination
Juveniles Latein
Juveniles Standard
Lecture Latein
Lecture Standard
Professional Kur Latein
Professional Kur Standard
Professional Latein
Professional Standard
Professional Rising Stars Latein
Professional Rising Stars Standard
Senioren II Standard
Senioren Standard
Senioren Latein
Tango Argentino
Teammatch Amateure
Teammatch Juniors
Youth Kombination
Youth Latein


 
  以上の種目が火曜日から土曜日まで計4日間にわたって、朝9時から夜12時過ぎまで、びっしりとコン
グ レスセンターの各会場で開かれています。また途中レクチャーやトレーニングキャンプと称するも選手の
ための強化合宿のようなものも開かれ、一大ダンスイベントを呈しています。また会場では全英と同じように、
ダンス洋品のお店がずらりと並びその規模は全英とほぼ同じくらいではないかと思いました。

        
    正面観客席          会場のダンス用品ブース    会場前にて     会場内にて

  全英と違う点は、競技会場が複数であることで、予選は小さめのミューゼンバルというホールで行われ、3 
  ラウンド目あたりからメイン会場のモーツアルトバルにかわるのですが、それでも途中の6ラウンドがまたミ  
  ューゼンバルに戻ったりと、はじめて参加する選手はそれを知らない場合、うっかりすると不出場で失格にな 
   る可能性があります。今後参加する選手は要注意です。現にいっしょに参加したアダルトスタンダードの渡 
   辺組も、会場が移ったのを知らずにいて、あやうく失格になるところでした。
    
  私たちはアダルトの方もエントリーできたのですが(全英と違って、35歳以上の選手はシニアのみ出場可 
   という制限がない)日程の都合でシニアスタンダードのみに絞りました。
   木曜日朝、関空をたち、アムステルダム乗り換えで、フランクフルトに19時に到着、それからICEの空 
   港駅から40分ほどでマンハイム中央駅に到着したのは夜21時半くらいでした。
   22時にやっとホテル到着。翌日の朝、9時には会場にエントリーです。サラリーマンダンサーは休みが取
   れないのがつらいところ。

2,8月31日:1日目(シニアスタンダード1次予選、アダルトスタンダード2日目)


   一次予選は8月31日(3日目)の午前中、出場280組、出場国は地元ドイツが1/2くらいでその次に
  多いのがイタリア30組、そのほか近隣のオーストリア、オランダ、ベルギー、ポーランド、スペイン、、ロ
  シア、アメリカ、日本人は私1組。(アマチュアはほかに日本人選手はアダルトスタンダードの渡辺組のみ)

   出場組数280組はブラックプールより多く、一次予選はミューゼンバルと呼ばれる小さいホールで行われ 
  ます。(ちょうど名古屋の中央公会堂のホールとよく似ていました)。一曲は割と長めで、1分40秒くらいあ  
  ったと思います。

  選手のレベルは玉石混合で、シード選手がでていない一次予選はそれほどに強い選手はいません。ただし
、ヨーロッパの選手にいつも感じる男性のホールドの安定感はさすがだと思いました。テクニック的には日本人
  に比較してムーヴメント等そんなに勝っていると思えないのですが、とにかくどの選手も 男性のホールドが  
  崩れません。
  日本人がそれをまねすると、ややもすると堅い感じがするのですが、不思議とどのレベルの選手もそんなに  
  ホールドにstiffな感じがないのです。このあたりの原因は、西洋人のもってうまれたもの、骨格などに起因   
するものと思うのですがよくわかりません。
              
              メイン会場MozartBalにて渡辺組

   全予選を通じてヴィーニーズワルツが3曲目にはいり5種目なのですが、おもしろいことに、VWがほかの  
 種目に比較してみなさんとてもうまくて、そのあとのSFががくんとレベルが落ちていたのが印象的です。オー  
ストリアオープ゚ンでも同じ印象をもちましたのでやはりドイツ圏はヴィーニーズワルツを大事にしているよ   
うです。おそらく歴史的にもこのダンスはこちらが本場だという自負もあるのでしょう。

   私たちは一次予選を午前中に終え、その日はアダルトスタンダードの二日目なので、我が日本のアマチャン
 プ、渡辺組の応援をしました。渡辺組は、海外遠征が豊富で、落ち着いた柔らかいムーヴメントの踊りで、順 
 調に5ラウウンド(ベスト96)、6ラウンド(ベスト48)まで駒を進めました。このあたりになるとどの組をみても、
 スピード、テクニック、なにをとってもものすごく、またユースの選手も参加しているため、近寄ったらはねとば
 されそうな、まるで体のなかにバネをもっているような踊りをみんながしています。

  はじめて海外競技会に参加した日本人選手だと、そのスピードに一緒になって走ってしまうのですが、さす
   が海外経験豊富な渡辺組、まわりに振り回されることなく、むしろ日本人のいい要素、エレガントさえ醸し出
   しているようでした。

    結局、渡辺組はベスト24までは進めませんでしたが、あと3チェックでベスト24という28位の惜しい 
   結果でした。この結果は500組以上の世界中の強豪が集まった中、とても、とてもすばらしいものだと思い 
   ます。

3.9月1日、最終日(シニアスタンダード2〜6ラウンド)----とにかくタフな試合
 
    シニアスタンダード2日目は、GOCの最終日、2次予選から開始されました。朝10時から二次予選開始。、
   シード選手もでてきて、いよいよ本格化です。私たちは前日競技の終わった渡辺組の応援もうけながら、4ラ
   ウンド(ベスト48)まで駒を進めました。4ラウンド目から、いよいよ夜の部、メイン会場モーツアルトバ   
  ルでの競技です。審査員も予選の時のスーツ姿からタキシードに着替え、生バンドもはいり、観客もいっぱい 
  で、雰囲気は一変します。

    次のベスト24、5ラウンド目では、最後のクイックステップの後、24組全員フロアーに呼ばれて司会者
   がナショナルコールです。いきなりジャパアーン、と紹介されたのでびっくりしましたが、後はドイツ、イタ
   リアがそれぞれ11組。残りはロシア1組という構成です。

    さすがに24組になるとどのカップルも強くて、準決勝はどうかなと思ったのですが、入れることになりま 
  した。時間はもう既に夜11時過ぎ。朝から5ラウンドも踊ってへとへとです。
                     
             準決勝にて         シニアスタンダード表彰      4位のSartori組

  しかし力を振り絞って、準決勝を踊りきりました。満員の大観客のまえ5曲踊りきりましたが5曲連続ではなく、
 準決勝でも6組ずつ2ヒートでしたので、助かりました。体力をみるのでなく踊りをみるということなのでしょうか。
 準決勝では私たちの前で順番を待っていたイタリアのSartori組が、コールされて会場に入る直前に、お互
 いにキスをします、。日本人のわれわれからすると目の前でいちいちキスをされたらかないませんが、我々も
 まねをして手を握りあいました。

結果的に、決勝には進めませんでしたが、満員の大観客のまえで、準決勝を踊れたことはとても名誉に
感じました。また日本のアマチュア選手の存在を少しでも示せたと思っています。
決勝には、イタリアがなんと4組、今年チャンピオンを10年間続けていたブルガー夫妻が引退したため、
全英2位であった、イタリアのGiovannini組が新チャンピオンに2位には地元ドイツのCalderaro組が入りま
した。 旗揚げの後、すぐに表彰式、があり優勝した優勝したGiovannini組のイタリア国歌が演奏されます。
このとき観客全員起立して礼をつくします。

  その後、すぐにGOCのフィナーレとなる競技、プロラテンのファイナルに入りましたがこのとき既に夜12
  時をすぎていました。プロラテンでは、見事日本の北条組が4位に入賞しました。

4. 紳士淑女の雰囲気のシニア戦、イタリアン旋風

   アダルト、ユース等の選手たちは控え室でもジャージ姿で、ほんとにスポーツ選手という感じですが、シ 
   ニアの方はみなさん競技会にもきっちりとスーツ、ドレス姿で、やってこられます。
   また夫妻で競技を楽しんでいる様子がどのカップルにもうかがえ、とてもアダルトな雰囲気を残しています。
   競技会場でカップルできちっとしたフォーマルな衣装でいるのはたいていシニアスタンダードの選手でした。
   シニア部門はどことなくヨーロッパの競技会のよい雰囲気を残しているような感じです。
 
  日本ではシニア部門といったら、競技会のなかでもメインではありませんが、ヨーロッパではとても大事にされ
  ているようで、このドイツオープンでも最終日のプロラテンの直前にもってくるなど、そのステータスはかなり  
  高いようです。また、ダンス関係でない本業の仕事を別に持っていながらダンス競技を続けている選手をアマチ 
  ュアと呼ぶなら、日本のアマチュア選手はカテゴリーとしてヨーロッパのシニア選手層に近いようです。

   日本人のアマトップが35歳以上になったら全英、ドイツオープン等のシニアに挑戦するのも一つのステータ
  スだと私は思うのですが、、。レベルからみて日本のチャンプが35歳をすぎてすぐヨーロッパのシニアに挑戦す
  れば今の段階では確実に世界で4〜6位には入れると思います。ただ日本ではトップ選手がシニアにでるとなる 
  とどうして?という雰囲気があるので意識改革が必要のようです。ヨーロッパ、特にドイツではクラス分けも年
  齢別でそれぞれSA〜D級に別れており、年齢別にそれぞれのチャンピオンが存在し、ステータスがあります。

  その気になればこのドイツオープンで会場に史上はじめて君が代を鳴らせる可能性はこちらが近いのでは?
  と思います。(現に全英では望月組が優勝しています。これはすごいステータスです。)

   ただシニアといえどもスポーツ化の潮流があるように感じました。ダンスを純粋にスポーツとしてとらえて
  いるイタリアからの強い選手の参加が多くなっており、決勝中4組もイタリア組が入ったことからスポーツ化の 
  波はここでもあるように感じました。今回イタリアのシニア選手はレベルが他国よりかなり上に感じました。
  30歳台の若手がどんどんはいってきており、(4位、5位のは30歳代)イタリアン旋風はここでも吹き荒れ 
  ていました。


5,最 後 に

   今回、夏休みを利用して、全英に次ぐ規模といわれるGOCに挑戦してみましたが、ブラックプールとはまた  
  ひと味違った雰囲気を味わえることができました。このような世界的な規模の大会にダンス王国といわれる日  
  本から、全英にあれだけたくさん出場する日本の選手がほとんどエントリーされていないことは、とても奇妙  
  に感じました。

   やはり、日本のダンス界は英国一辺倒だなと感じた次第です。これからは、日本のアマチュア選手も全英だけ 
  ではなく、このドイツオープンをはじめとして、イタリアオープン、オーストリアオープン等のブラックプール以外の
  魅力的なヨーロッパの試合にどんどん挑戦していってもいいのではないかと思います。

   また毎回、思うのですが、、やはりほんとに競技に勝とうとおもっったら、2日まえには現地に到着して、万 
  全の体制でチャレンジするべきだと思いました。