ボールルームダンスとは

ボールルームダンスは日本では社交ダンスと一般的に呼ばれています。そして社交ダンスは、また競技として
競技会で踊られているのでその場合は競技ダンスと呼ばれることもあります。また国際的にはボールルームダン
ス(Ballroomdance)が正式名称です。日本の社交ダンスを訳してSocialdanceといったりしていますが、それは
日本だけの言葉で国際的には通用しません。また競技ダンスは種目名としてダンススポーツともよばれています。

Ballroomdanceは大きく分けてモダンとラテン種目に分けられます。モダン種目は男女が組み合って踊るおな
じみのダンスで5種目ありワルツ、タンゴ、スローフォックストロット、クイックステップ、ヴイーニーズ
ワルツです。ラテン種目は男女が離れて踊りやはり5種目で、チャチャ、サンバ、ルンバ、パソドプレ、ジ
ャイブです。

ボールルームダンスはモダン種目のワルツ等がよく知られていますが元々ヨーロッパの宮廷舞踏が起源と言われ
ています。宮廷で貴族達が夜会で男女が対で踊っていたダンスを原型としています。日本に入ってきたのはその
ころのダンスで鹿鳴館のダンスが有名です。しかし日本ではその後一般の社会には広がりませんでした。

今のような形になったのは比較的新しく、主に英国で70年ほど前に体系化され、ステップ等が決められ、
また競技としても始められる様になり、よりスピードアップされ洗練された現在のような形の踊りとなり
ました。

ラテン種目の方は、もっと新しく、南米圏のサンバ等の踊りを取り入れ約40年前から体系化されました。
競技として踊られているのは上記のようにモダン、ラテン併せて10種目ですが、ほかにパーティー等で踊
られている簡単なダンスとして、ジルバやマンボがあります。

日本では戦前の大正デモクラシーのモボモガ時代に盛んに踊られるようになり戦争をはさんで、戦後すぐに
第一次ブームがありました。キャバレーダンスとして少し風俗的扱いを受けていた感もありますが、競技会
として盛んになったのも戦後からです。現在映画、テレビ等で取り上げられ第2次ブームと呼ばれる活況を
呈しています。

競技会は上記の種目を種目別に踊り、競われます。モダンは男性は燕尾服、女性は、結婚式の花嫁が着るよ
うなドレスををもっと動きやすくし、更に裾にオーストリッチをつけエレガントにしたドレスを着ます。
(すべてダンス用にあつらえられるもので数十万円します。)ラテンは基本的に自由ですが、フィギアスケ
ートのペアのような雰囲気のコスチュームを着用します。

ボールルームダンスを競技として競技会が行われている地域はやはりヨーロッパで、英国を中心としてドイ
ツ、北欧諸国、イタリア、が盛んです。最近ではダンススポーツとしてオリンピック種目に取り入れられる
ことがほぼ確実のために、東欧、ロシア、中国等もそれをにらんで盛んになってきています。

英国で体系化されたため、英国がその中でも本場とされ英国のコーチにレッスンを受けるために世界中から
競技ダンサーがロンドンに集まります。

全英選手権


'94全英選手権 プロモダン決勝(中央は田中秀和−陽子組

また世界でもっとも歴史と権威のある競技会が英国のブラックプールというところで全英選手権として毎年
5月に行われ、この競技会が実質上世界のダンスチャンピオンを決定します。(ちょうどゴルフやテニスの
ウインブルドンとまったく同じです)この競技会には世界中から選手やコーチが集まります。(私達はは9
4年にアマチュアモダン部門に出場しました)いわば競技ダンスをやっているものにとってはあこがれの地、
聖地であり、ここで良い成績を取ることが選手の目標あり夢でもあります。

この全英選手権の模様は映画 Shall We Danceで主人公草刈民代の回想シーンとして出てきますが、彼女の
元リーダーとして現日本チャンピオンの田中秀和先生が出演しています。私達は現在田中先生にコーチを受
けていますが、上記の全英選手権が行われるブラックプールの競技会場で600人ほどのエキストラ、英国
のアマチュア選手を雇って競技シーンの撮影が行われたそうです。田中先生の役は主人公の元リーダーで全
英選手権出場中、クイックステップという動きの早い種目でヨーロッパの選手とぶつかって転倒するという
シーンを撮影していますが、このとき相手役の選手がほんとにぶつかってきたため、危うくけがをするとこ
ろだったと、言っていました。本場英国でも日本と同じくBallroomdance はマイナーな存在らしく一般の
人々がdanceをやっている、とたとえば友達に言ったとしてもそれは、最近お能の稽古を始めたのと言って
いるのに等しいと英国の友人は言っていました。ですからShall We Dance の撮影は英国でもかなり珍しが
られたと聞いています。

競技会

ボールルームダンスの競技会は、上記のモダン、ラテンのそれぞれの種目で行われます。競技形式はフィギアス
ケートのような単独形式ではなく、10組から15組程度の選手を一斉に踊らせて、複数の審査員がいいと思
うカップルにチェックを入れその総合点で残していくという方法をとります。1次予選2次予選、3次予選とだ
んだん人数が減っていきます、12組になると準決勝その半分を残して6組で決勝(ファイナル)を戦います。
決勝は順位法で審査されます。審査は審査員の主観で決められますが、まず音楽にあっているか、次に正確なフ
ットワーク等をしているかどうか、姿勢等がいいか、ムーブメントはいいか、等の技術が審査されます。

大きなコンペでは、朝から一次予選が始まり、決勝が始まるのは夜になります。その間およそ50曲を踊ること
になるので、持久力、体力を必要とします。

日本では競技会は、社会人のサークル主体の競技会、プロの教師団体が主催する競技会、アマチュア組織が
主催する競技会、それに学生が主催する競技会があります。

盛んなのはプロが主催する競技会で、アマチュア、プロが同時開催されています。選手はその成績により、A級から
D級、ノービスと呼ばれる初級程度のクラスに区分けされています。最初にノービスから初めて、決勝に残ると上に
あがれるという次第です。日本ではこのA級からD級の選手はアマチュアで約3000組、プロで2000組程度い
ます。最高クラスのA級はそれぞれ数十組しかいません。プロといっても、ゴルフのような賞金だけで食べていける
トーナメントプロではなくダンス教室に勤められている先生が出場しています。

競技会で有名な競技会はNHK杯インターナショナルダンス選手権、全日本、スーパージャパンカップ等で全国から
選出された選手で競われます。

世界の競技ダンス

世界的には、ヨーロッパで盛んに競技会が行われています。ヨーロッパでは比較的早くから始める選手が多く、5〜
8才ていどからジュニア、ユース、等をへて選ばれた選手のみが続けているようです。従ってヨーロッパのアマチュ
アレベルは大変高く、日本のアマチュアチャンピオンでも世界選手権で30位程度がやっとの様で日本のトッププロ
よりもずっとレベルが高いとまでいわれています。

野球にたとえるとわかりやすいのですが、少年野球からはじめて、中学、高校野球と続けて、ドラフトでプロに行こ
うかという、連中がヨーロッパのアマチュアであり、それ以上続けてもプロで食べていけないとなれば、みんなダン
スをやめるそうです。

日本では早くはじめても大学からであり、スタートが違いすぎます。また日本のようなダンス教室という形式があま
りなく、ヨーロッパではなくほとんど団体レッスンが主体であり、たくさんの教師が食べていける市場がないようで
従って日本のようにプロ教師がたくさんいないようです。

従って日本でもジュニア選手の育成が急務とされています。世界のアマチュアダンスの組織である国際ダンススポー
ツ連盟がIOCに今年(97年)組織認定され2008年のオリンピックからダンススポーツと言う名称で正式種目
になることがほぼ確実視されています。それにむけて中国、東欧、ロシア等では早くも国が選手の育成を進めている
ようで、日本の立ち後れが懸念されています。

国際アマチュアダンススポーツでは年齢別にジュニア(5才から15才)、ユース、(16から20才)本戦(21
〜34才)、シニア(35才〜)と区分けされています。シニアは35才からと少し日本の感覚からすると若いよう
ですが、ヨーロッパでは5才程度から始めているので20代でピークを迎えてしまうのでシニアの年齢を35才以上
としたようです。

それぞれのクラスで世界選手権が行われていますが、私が今年出場した世界選手権は、このシニア部門の世界選手権
です。シニアといってもゴルフのシニアとの感覚は少し違って、そのレベルは相当高く、出場選手はほとんど30代
で、また決勝に残る選手はほとんど全英選手権の本戦部門でも最終予選か準決勝程度は残る連中であり、私が今年こ
の世界選手権で決勝に残れたことはたいへんラッキーであったといえます。

日本と世界のダンスの違い

上記にも書いたようにヨーロッパの選手は小さい頃から始めるのでテクニック的にも、日本人よりはかなりレベルが
上であります。しかし最近では日本のプロでは全英選手権プロモダン部門で先の田中組が3位にはいるなど活躍して
います。

これに関連して参考に英国に在住しているいるメールフレンドに日本のダンス事情について説明した文章を下記にご
紹介します

(引用開始)---------

またなんとなくヨーロッパの選手の踊りには、音楽性や、二人のボデーの一体感が感じられます。これは私たちは前
から感じていたのですが、ヨーロッパの抱擁の文化や、女性に対する扱い方からきているのではないか。英国では、
ふつうの男性でも女性の扱いがスマートみたいです。

文化といってしまえばそれまでですが、競技ダンスをやるものにとっては、その文化に体でなじむことが大切と思っ
ています。といのは日本人の踊りと、ヨーロッパ人の踊りの違いが、前から気になっていて、よく考えるのですが、
結局その原因は抱擁の文化が日本にはないから、と勝手に解釈しています。

技術は日本人はうまいのだが、組み方がstiffで男性がひじを張りすぎ、またプロのトップ選手でも女性との一体感
が感じられない場合が多いのです。

ヨーロッパ人は女性を包み込むような雰囲気が感じられ、また必ず女性との一体感が感じられます。たとえ技術レベ
ルが低くても。

英国には日本からたくさんのプロの先生が留学して英国人コーチにレッスンを受けています。故知にダンスの世界で
も、前に書いたブラックプールの全英オープンに日本から何百人のプロが毎年参加します。またおそらく100カッ
プル程度のプロの先生が日本から常時留学して英国のコーチにダンスを習っています。

ですから他のヨーロッパ諸国からすれば英国人コーチのレッスン料がつり上がって迷惑だという話を聞きます。この
ような現象は音楽界でもあると思いますがいわゆるダンス界でもジャパンマネー現象があるのです。

英国を含めたヨーロッパのダンス事情は今まで聞きかじった範囲ではふつう日本のダンス教室のような形態は、存在
せず、町には、日本でいえば行儀作法も含めた日本でいえば音楽教室みたいな子供相手の教室はたくさんあり、また
大人相手でも、団体レッスンを中心とした形態と聞いています。

日本のダンス教室は戦後のキャバレーダンス等からの活況期からの経緯で、警察庁管下の風俗営業となってしまって
います。この風俗営業については近年ダンス教室を解除するよな働きかけが盛んに行われています。

英国を含めヨーロッパでは、日本ほどの教師は多くなく、いわゆるプロ選手も、各国とも数十組しか存在しません。

ゴルフでいえばわかりやすいのですが、いわゆるトーナメントプロは日本でも百人程度しかしかいませんが、レッス
ンプロは何千人もいます

ダンスでは、そのレッスンプロの方も、選手として出場されていますからプロ選手が多いわけです。

その日本の先生方がこぞって全英選手権のプロの部門では出場されますから全英プロモダンでは出場者の半分近く
日本人というほどです。けれどもまことに残念なことにほとんど一次予選か、2次予選で脱落されてしまいます。

ヨーロッパの場合、5歳くらいから始めている場合が多いのですが、みんな若い段階で見込みがなければ、やめてしまい
ます。日本の野球でいえばよくわかるのですがみんな少年野球から高校野球と進んでいって、甲子園から、ドラフト
でプロを目指します。それで見込みがなければ、野球はやめてしまいます。

それといっしょで、ダンスで食っていけないとなれば彼らはその段階でやめてしまうわけです。

ですから、ヨーロッパのアマチュアのトップは、プロに転向しても十分通用します。日本のプロのトップでもかなわ
ないほどのレベルです。(ただし数は少ない)

それに比べ日本のアマチュアは年齢的にもほとんどヨーロッパでのシニアの年齢層です。

英国の場合競技選手としてのプロも、アマも数十組しかいないと聞いています。日本は、レッスンプロとして食べて
いける形態が(市場が)あるわけですですから英国で、ダンスをやっている子供たちに聞くと大きくなって日本で何
千万も稼ぐのが彼らの目標なのです。

英国では世界チャンピオンでも一回のデモが、7万円くらいですが、日本では60万円です。従って彼らは日本に一
年の内半分滞在して、レッスンとデモで何千万円稼いで帰ります。
-----(引用終わり)

ボールルームダンスの効用

もちろんオリンピック種目になろうしているるような、スポーツ的な面はあるのですが、ボールルームダンスは、男
女が音楽に合わせて体を動かす、というとても楽しく、また世界的にも共通のダンスですので、ヨーロッパではもち
ろん、日本では最近では中高年を中心として、公民館等の社会人サークルで、とても盛んになってきております。愛
好家は、全国
でも数百万人といわれ、どこの地域に行っても、団体レッスンやパーティーが花盛りです。特に映画 Shall We Dance

取り上げられたり、テレビ等で盛んに取り上げられているので最近はブームとさえいわれています。日本では室内スポー
ツが盛んな降雪地域で特に盛んのようです。

文部省も、生涯教育の一環としてこのボールルームダンスに着目しており、文部省管轄の財団も発足しております。
((財)日本ボールルームダンス連盟)
将来的には一般の体育教育の一環として学校教育にも取り入れられる予定と聞いています。

また文部省が生涯教育の一環としてボールルームダンスに着目しているのは、老人健康対策という一面からということ
も聞いております。ダンスは高齢者でも楽しむことができ、また男女が接するということから、若やぐという効果もあ
り、高齢者にとって、とても良いレクリエーションなのです。

以上