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温度と時間の関係
日本ではコーヒーは出来ないの?
マスター:久宗貴規(マウンテン生駒)

日本ではコーヒーは出来ないの?

お客様から「日本ではコーヒーは出来ないの?」とよく質問されます。「沖縄と小笠原で生産されている方がいらっしゃいますが、基本的には日本は栽培地として適していません。」とお答えします。栽培の基本としていくつかの条件があります。1)、南北両回帰線(北緯25度、南緯25度)の間(コーヒーベルトと呼びます)に位置する地域がコーヒー栽培に最も適した土壌と気候である。2)、年間の降水量が1600〜2000mmが望ましい。(ちなみに日本の年間降水量は1700mmでこの条件はクリアしています)。3)、そして、雨季と乾季があり平均気温が20℃前後で火山質の肥沃な土壌であること。まず、これらの条件を満たした地域でコーヒーは栽培されます。
そして「スペシャリティーコーヒー」の栽培となると、更なる条件を必要とします。
コーヒー豆は果実です。果実に甘味を多く含ませ、独特の芳香と酸を生み出す為に「寒暖差」、「平均的冷涼な気候」、「きれいな水と空気」。これらの条件を満たす為、標高1500〜2000mの高地で栽培されます。スペシャリティーコーヒーには、アラビカ種(コーヒー3大品種の一つでムンドノーボ種やブルボン種もこの品種に属します)が主に用いられるのですが、強い日差しや高温に弱い為、日中は意図的に日陰を作るなど穏やかな環境で育てます。それはコーヒーの樹が直射日光により葉焼けや落葉を起こしてしまい、気温25℃以上になると光合成を行う代謝機能が低下し、抵抗力が落ちてしまうからなのです。ゆっくりと成熟したコーヒー豆は、粒も大きく甘味を多く含みます。赤く完熟したコーヒーチェリーを丁寧に摘み取り、きれいな水で洗い、選別されます。豊かな自然とオーナーのコーヒー豆とそして環境に対する思いやりでコーヒーの美味しさは変わります。近年のスペシャリティーコーヒーは、こういったオーナーの姿勢が重要で、しかも継続、維持といった管理面も厳しくチェックされます。こうした動きからコーヒーの安定供給が出来、継続性のある取引が行われるのです。最近ではこうしたコーヒー農園のコーヒー豆を「サスティナブルコーヒー」と呼び注目されています。
前回もご紹介した「イピランガ農園」もコーヒー豆と環境そして労働者への配慮を忘れていません。前回の「ムンドノーボ」と今回ご紹介させて頂く「ブルボン・サントス」。この2種のコーヒー豆はどちらも有機・無農薬栽培で育てられています。ブルボン種は、かつてはブラジルを代表する品種として広く栽培されていたのですが、樹自身の強さや生産量の点で他の品種(ムンドノーボ種やカトゥアイ種)に切り替えを余儀なくされ、今ではブラジル全体の約3%程しか生産されない希少種となってしまいました。しかし、甘味が豊富でそれを支える酸味のバランスが絶妙であるこの品種は、生産量が少ないながらオークションなどでは確実に上位に入り高値が付けられています。
「イピランガ農園」の有機・無農薬栽培は、コーヒー豆本来のポテンシャル以上を引出す事に重きを置いています。つまり樹を守るのではなく、樹自身の抵抗力を高め強くする。
土壌作りには、糖蜜を原料としたアミノ酸発酵の廃液、鶏糞、家畜糞尿などを用いた有機肥料と、落葉堆肥と草炭を原料とした有機土壌改良剤を使用。
葉面活性には、光合成を司る酵素の働きを活性化させるため、天然アミノ酸濃縮液(動物性、植物性合わせて22種類のアミノ酸を濃縮した物)を主に用いて、定期的に散布。
ブラジルで唯一、有機JAS認証を取得しているこの農園は、ブラジル政府系証明機関<AAO>(有機栽培農業振興協会)より、更に出荷毎のロットごとに検査、確認を受けます。
船積み後も化学薬品の汚染を受けていない事の証明を取り、植物防疫官の検査を受けます。そして通関時検疫上の燻蒸を受けなかった証明を取り、更に食品検査機関で農薬が検出されていない分析検査証明「農薬無検出証明」を取得します。以上の流れを経て、約1ヶ月掛けて海を渡り日本に到着します。私達が普段何気なく口にしているコーヒーは、ほぼ100%輸入品です。その為か、農園のコーヒーに対する思いやこだわりが消費者に伝わる事は殆ど無いに等しいのが現状です。ここ数年の間です。「スペシャリティーコーヒー」と称して普及活動が盛んに行われる様になったのは。
230年程前に日本に伝わった摩訶不思議な飲み物「コーヒー」。それが、ここ数年前から作柄から効能まではっきりと素性の分かる飲み物に変わってきました。これからです!。皆様の中に少しでも多くの方が「コーヒーの事をもっと知りたい」とか「もっと美味しいコーヒーを飲みたい」と思って知識を深めて頂ければ、もっと素晴らしいコーヒー豆に出会えるでしょう。

ブルボン・サントス
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