KCN-Netpressアーカイブス

人と心とふれあいと
Vol.4


一生が勉強

古曲を受け継ぎ次の世代へ伝えたい。


三絃地歌

菊聖(高山)公一さん 生駒市在住




 お琴の先生を母として育った菊聖さんは、高校生の頃に「ほんの賑やかしに」と弾いてみたことがこの道を進むきっかけだったそうです。

「母のおさらい会に出たりしていたんですが、大学3年の時に、人間国宝になられた菊原初子先生に習うことになったんです。男だというので内弟子と一緒に稽古してもらったり、たまたま人に恵まれてこうやってやれる」

 菊聖さんの地歌は、よく通る張りと艶のある声で聞く人の心にすっと届く。「たまたま」などという偶然でこれだけの力を手にできるはずはなく、素質と努力、環境その上での“偶然”に恵まれてこられたのでしょう。

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「僕は今まで練習がいやだと思ったことがないんです。もちろん叱られたり、覚えられなくて辛いということはありますよ。でも、練習自体をいやだと思ったことは無いですね。一晩中弾いて、三味線持ったまま居眠りしたりなんてこともありました。今は、朝型の稽古に変えましたけどね。大学を卒業する時ににこの道で行けるところまでやってみようかと思いました」

菊原初子さんは、明治32年生まれの98歳、今なお現役で活躍する邦楽界の重鎮。谷崎潤一郎とも交流があり、「春琴抄」を書く時の参考になった方とか。芸事一筋の明治女に鍛えらた菊聖さんの腕と喉が素晴らしいのも納得がいきます。

「三味線は、押さえ方ひとつ、ばちの当て方ひとつでいろんな音が作れるんです。木の楽器でやさしい音だし、弾いていて楽しいですね。洋楽は聞く機会も演奏者も多いし、ピアノも大変ポピュラーです。でも、邦楽は楽器そのものを知らない人もいるわけですから、できるだけいい演奏をして、一人でも多くの方に聴いていただきたいと思っています。それには、自分の芸をどこまで高めていけるかが問われます。古曲の難しさはやればやるほど実感しますが、しっかり受け継ぎ、次の世代に伝えていきたいですね」



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