KCN-Netpressアーカイブス

人と心とふれあいと
Vol.18


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富田敏子さん
犬養万葉記念館運営委員
富田敏子さん

万葉を手がかりとして豊かな文化を育む場に


素朴で大らかな人間の愛を歌う万葉集は、遙かな時代を超えて心に響きます。その万葉の魅力を熱く高らかに語った犬養孝先生の記念館が明日香村に開館しました。
教え子で新聞記者となってからは万葉の連載を20年近く続けると共に、万葉の大和路を歩く会を発足させ、主宰してきた富田さんは、記念館設立の推進にも心を砕いてきました。
「学生時代に犬養先生の講義を受け、学生時代にも万葉の旅の世話役もしていました。新聞社に入ってから先生とのおつき合いが再び始まりました。万葉の連載を始めたのも同じ頃。歩く会は今でも続けています」

 犬養さんが81歳の時、「犬養万葉顕彰会」が発足、記念館設立が話題になったそうです。候補地を探している時、南都銀行明日香支店移転に伴う跡地利用に記念館をという話しが進みました。
「バブルの崩壊、阪神大震災で西宮にあった先生のご自宅が全壊、などさまざまなことがありましたが、多くの方が熱心に協力してくださって実現しました。平成9年に図面 ができて、先生もご覧になったんです。10年の2月半ばに先生は明日香に来られたんです。最後の明日香訪問。随分弱っていらして、周囲は心配したんですが、役場へ行って村長に『よろしく』と。余程気にかかっていらしたんでしょうね。先生は、どんな時も力を惜しまずに万葉を語り、一緒に故地を訪ねてくださいました。多くの人が万葉を身近に感じられるというのは先生の功績だと思います。
記念館の完成を見ることなく10年10月に亡くなられましたが、この場を多くの人の出会いの場にしていきたいと願っているんです。万葉を手がかりに文化の担い手になりたいですね」

 玄関を入ると木の香りが清々しい展示室。万葉歌墨書や原稿、明日香村をはじめとして全国各地の万葉の風土にちなむものが展示されています。犬養先生の部屋には遺愛の品や著書、文机が置かれ、息づかいが伝わるようです。犬養先生と教え子の清原和義先生の寄贈を中心とした図書室や喫茶室もあって、万葉にひたってゆっくりと過ごす何よりの場所。
「全国万葉協会が4月に発足して、ネットワークを広げようとしているところです。万葉フォーラムを島根県の益田市や長崎県の五島列島で開催します。記念館はその拠点。そして基盤は地元の方々です。万葉カルタを先生が作っていらっしゃるので、子供たちには万葉で遊んでほしい。歌にもなっているので合唱団もできたらいいな、絵本にもできるのではないかしら、なんて夢はいろいろに広がります」

 千数百年前、采女の袖を吹きかえした風が中庭を過ぎていきます。犬養先生の万葉を歌う声が風に乗って聞こえてくるようです。


犬養万葉記念館
開館10時〜17時(入館は16時30分)
月曜休(祝祭日は翌日)
入館料300円

「犬養万葉記念館に協力する会」の会員募集中。一口5000円。
問い合わせは明日香村岡1150 TEL 0744(54)9300



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